Zoom Phoneとは? プラン別料金やできること、できないことを解説
コロナ禍をきっかけに爆発的に普及した「Zoom」が、2021年からビジネス電話サービス「Zoom Phone」を日本でも提供している。従来サービスとの違いやプラン、できること、できないこと、始め方などを解説する。
非対面コミュニケーションの普及を支えた「Zoom」が、2021年からIP電話サービス「Zoom Phone」の提供を始めた。「Zoomで電話ができる」ことで何が可能になるのか、従来の電話番号の扱いや移行のメリット、プランの選び方や料金などをスペシャリストから聞いた。
Zoom Phoneとは
Zoom Phoneとは、インターネット経由で電話ができる「クラウドPBX」サービスの一種だ。契約してサービスの利用を始めると、Zoomアプリから電話機能を使えるようになり、ユーザーはテンキーからの電話番号を入力やユーザー検索などから電話をかけられる。アカウントがひも付いたアプリからの電話になるため、PCやスマートフォン、アプリをインストールした固定電話端末などデバイスを問わずにビジネス電話がかけられる。
サマリー
。Zoom Phoneとは
- 「社用スマホの支給」では解決できない問題とは
- Zoom Phoneの強み、できること
- Zoom Phoneでできないこと
- Zoom Phoneの料金プラン、選び方と始め方
「社用スマホの支給」では解決できない問題とは
従来、外出の多い営業部門の従業員を中心に「オフィスの外で仕事の電話をする」こと自体は一般的だった。ただし企業の代表番号や部門の電話番号はオフィスにいなければ受けられず、「代理のメンバーが取り次いで、折り返し電話をする」という運用がされていた。昨今はテレワークが普及し、オフィス回帰の動きもある。働く場所を自宅とするかオフィスとするかの判断は業種や企業によって分かれるが、いずれにせよ非対面でのコミュニケーションは「当たり前の選択肢」に含まれている。
そのような中、従業員に業務用のスマホを支給するだけではコミュニケーションがサイロ化して情報が分断され、代表電話の管理もできないことが課題として注目されるようになった。
Zoom Phoneに代表されるクラウド型IP電話サービスは「一部の対応のために出社が必要になる」「誰が何を抱え込んでいるのか分からない」といった状況を脱却し、情報コミュニケーションの効率を上げるために業務用の固定電話機能を見直す中で採用が進むソリューションだ。
Zoom Phoneは日本での提供開始から1年がたつ(2022年6月時点)。ZVC JapanでZoom Phoneスペシャリストを務める吉田馨一氏によれば「具体的な導入数は非公開」だが、中堅中小企業を中心として数百を超える企業に採用されている状況だ。
Zoom Phoneの強み、できること
Zoom Phoneは「Zoom Meetings」のアプリケーションに統合されている。Zoom Meetingsが個人や法人を問わず広く利用される中で「慣れた使い心地で、ビジネス電話に必要な機能をおおむね網羅する」のがZoom Phoneの強みだ。
以下に、具体的な機能やできることを紹介する。
ユーザー検索機能(複数の番号、代表番号での受発信)
発信先のユーザーをアプリ上で選択する。いわゆる「アドレス帳」機能に近いイメージで利用できる。発信元(相手に通知される番号)をアプリ上で選ぶ、複数の内線電話を受信対象とする、といった設定ができる。
受発信の番号は複数設定できるため、テレワークやワーケーションなどでチームメンバーがバラバラの場所にいてもZoomアプリケーションからワンクリックで電話をかけられる。個人の番号、部署の番号、プロジェクトチームの番号など、自分に関係のある番号から選択できる。
複数人数での通話、通話の共有、モニタリング機能
複数人でグループ通話したり、その状態からミーティングを始めたりできる。また、コールセンターにおいて必要となる「自社のメンバーがマイクミュート状態で通話内容を聞く」「自社メンバーにだけ聞こえる状態で発話する」「保留中の通話を同じチームのメンバーが取る」といった機能も備える。
通話内容の録音
通話内容は自動もしくは任意で録音され、Zoomの所有する国内サーバに自動で保管される。データ容量や保存期間の制限はない(2022年6月時点)。
電話対応時間の設定
社用のスマホを貸与してその番号を社外に通知すると、従業員は事実上「24時間365日対応しなければいけない」状態になる。個人の運用に任せると、負荷の偏りや情報の抱え込みが見えなくなりやすい。Zoom Phoneは電話対応時間をアプリで設定できるため「平日の9時から17時の間だけ受電可能」や「休暇の日は受電しない」といった対応ができる。
自動応答(IVR機能)
テキスト入力した応答文を自動で読み上げる。「○○にご用件の方は1番を選択ください」といった音声ガイドによって、担当者不在でも代理の対応者にシームレスに電話をつなげる。
管理機能
電話機能の管理はZoomの管理ポータルの中でできる。別のアプリケーションを開いたり、コマンドを打ったりする必要はない。Zoomはこれらの扱いやすさを「電話の民主化」と説明している。
高品質な通話環境
吉田氏によれば、Zoom Phoneを真っ先に導入したのは従来のクラウドIP電話サービスを利用していたユーザーだったという。「IP電話の機能には満足しているが、通話品質が不満のあったユーザーが、Zoom Meetingsの通話品質を評価して電話機能を『乗り換え』ました」(同氏)。
既存の番号の引き継ぎ
企業の回線と公衆電話網の間に専用のゲートウェイ装置「SBC」(セッションボーダーコントローラー)を設置すれば、03や06から始まる固定電話番号をそのまま使える。代表電話など、番号を変えられない場合に有効だが、SBCの設置には最低利用ユーザー数が定められている。
主要なクラウドサービスとの連携
Zoom Phoneはさまざまなクラウドサービスとの連携にも対応する。例えば「Salesforce」のアプリ画面内にZoom Phoneのダイヤルパッドを表示させて使えるようにしたり、「Microsoft Teams」の中でZoom Phoneを電話として使ったりできる。「Slack」やGoogleのクラウドサービスとも連携可能だ。
例えば「着信をフックにしてCRMなど特定のアプリケーションを起動する」といった使い方もできる。これらの連携に新規開発は不要で、ユーザーは設定を変えるだけで利用を始められる。
Zoom Phoneでできないこと
クラウドIP電話サービスのデメリットとして、従来回線では使えていた機能の一部に制限が出る。
クラウドIP電話サービスで「できない」こと(2022年6月時点)
- フリーダイヤル(0120)やナビダイヤル(0570)への発信
- 03、06、0120からの発信
- SMSの利用
- フィーチャーフォンからの利用
- FAXの利用
特に「受電番号は引き継げるが、発信の番号は引き継げない」点には注意が必要だ。これらは運用でのカバーや事前の周知、ハードウェアのリプレースが必要になるだろう。
Zoom Phoneの料金プラン、選び方と始め方
Zoom Phoneの利用方法は、大きく2種類に分かれる。1つは「050」で始まる番号を新規に払い出して利用する形態で、もう1つは「03」や「06」から始まる既存の電話番号を流用する形態だ。
050で始まる番号を使い、フルクラウドで外線電話を使う方法をZoomは「ネイティブ公衆網接続」と呼ぶ。番号は新規になるが、050番号が使えて1ユーザーの月額料金は1400円〜となる。発信が多いユーザーに向けては月額2020円の「かけ放題」プランがある。
また、ユーザー数と外線の電話番号を分けた料金体系になっているため「受電がメインのチームは、ユーザー数は多いが電話番号は少なくていい」という場合は「Proプラン」が有効だ。受電用番号を複数のユーザーが共有する方法で、アカウント料金は発信プランよりも安く、月あたり680円で電話番号を追加することもできる。
03や06から始まる既存の電話番号を流用するためにSBCを設置した場合は、1ユーザーあたりの月額が1080円かかり、これに既存の電話回線の費用が加算される(いずれも2022年6月時点)。
「将来的には、ネイティブ公衆網接続で050ではない固定回線の番号を提供できるように開発を進めています。時期は未定ですが、既存の電話番号をネイティブ公衆網接続として利用できる番号ポータビリティを実現する計画もあります」(吉田氏)。ネイティブ回線で050以外の番号が使える段階では、0120番号への発信なども可能になる見込みだ。
オフィスの固定電話でもZoom Phoneを使いたい場合、Zoomが認定したSIP対応のオフィス電話であれば基本的に利用可能だ。あらかじめZoomアプリを内蔵したZoom Phoneのアプライアンス製品や「Zoom Rooms」などの会議室用Zoom対応デバイスでも使える。
Zoom Phoneの導入に当たって、企業はまず「050番号のネイティブ方式を採用する」か「既存の固定番号を使う」かを決める必要がある。その上で使用する電話番号の数といった詳細を担当者と打ち合わせをする。ネイティブ方式であれば法律に準拠した本人確認手続きを経た上で1週間程度で導入が完了するという。
既存の番号を使用する場合はSBCの設置が必要になるため、回線数などの容量に合わせて機器の仕様を決め、設置する。導入計画はZoom Phoneの導入パートナー企業からの提案を受けることもできる。この場合は導入完了までに1.5〜3カ月ほどかかる。
導入後の設定は日本のマニュアルなどを参照の上、基本的にユーザー企業が担う。機能ごとに動画コンテンツを提供するが、吉田氏によれば「Zoom Meetingsの使い勝手に慣れたユーザーであれば、使い方に迷うことは少ないでしょう」とのことだ。
リモート時代とはいえ、仕事の中で電話連絡をゼロにできる企業はほとんどないだろう。企業のコミュニケーションの問題を解決するツールの1つとして、Zoom Phoneは有効な選択肢と言える。
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