部下が辞めない上司が何気なくやっていること
職場で精神的に疲弊している労働者は1万人あたり約2000万ドルの損失を企業に与えることが明らかになった。部下のメンタルヘルスを向上させるには、ある“単純なこと”がとても有効で、離職防止にもなるという。
調査会社のGallupとHCM企業のWorkhumanが2022年5月に1万2000人以上の従業員を対象にした調査結果を発表した。企業は、従業員のメンタルヘルスの悪化や職場の疲弊によって労働者1万人あたり約2000万ドルの損失を被っていることが明らかになった。従業員はメンタルヘルスの状態によって、労働や職場での自分の役割に対する考え方が変わるという(注1)。
今すぐできる、部下のメンタルヘルス向上のコツ
部下のメンタルヘルスを向上させるにはどうしたらよいのか。実は、上司が今日からできる“ある単純なこと”が有効な対策になる。
解決策は、従業員の頑張りを称えることだ。研究者によれば、部下の働きを認めることは燃え尽き症候群を軽減し、従業員の健康を促進する。このアプローチは長期的な生産性の向上とパフォーマンスの改善につながるとレポートは述べている。
また、従業員が安心して働ける環境だと感じれば、その会社に留まる可能性も高くなる。「MIT Sloan Management Review」の2022年9月の特集によると(注2)、10人に1人は自分の職場が有害だと感じているという。2022年初頭には同じ研究者たちが、「有害な職場は報酬が不十分な職場より10倍も従業員が離職する可能性が高い」ことを発見した。
米国、英国、欧州の数千人の従業員を対象とした今回のWorkhumanとGallupの共同研究では(注3)、「頑張りを認めること」に対して上司と部下の間では認識のギャップがあると明らかになった。管理職やビジネスリーダーの過半数が、「週に数回、従業員の働きぶりをほめている」と回答している。一方、管理職や上司、その他のリーダーから年に数回でも頑張りを認められる従業員は、わずか40%だという。自分の職場には仕事の達成度を評価する仕組みがあると「強く思う」と回答しているのは、調査対象者約5分の1だけにとどまった。
方法はさておき、部下を褒めるにも適切な頻度がある。Gallupのデータによると、上司や同僚から褒められる頻度は、月に数回が望ましいようだ(注4)。
WorkhumanとGallupは、「自分の居場所がないと感じている従業員は、転職サイトを閲覧する確率が5倍、離職する確率が12倍も高くなる」とも断言している。
従業員を受け入れ、帰属意識を高め、認めるという強力な文化を醸成することは、エンゲージメントの低下に対する解毒剤となり、ひいては“静かなる退職”にも対処できるかもしれない。
WorkhumanのCFO(最高財務責任者)であるスコット・デュッソー(Scott Dussault)氏は2022年10月のプレスリリースで、「長い間、従業員のウェルビーイングは、大きな成長や財務的成功を目指す企業にとって『ボーナス』や『あればいいもの』と考えられてきた。時代は変わった」と述べている。
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