RPA活用は加速か失速か 大規模調査から読み取る業務自動化ニーズの変化
業務の「効率化」から「自動化」へと意識が移り、ここ数年、RPAなどによる業務自動化ブームが続いた。RPAはただのブームで終わるのか、それとも利用は加速し続けるのだろうか。
2022年8月にガートナーが発表した「クラウドプラットフォームサービスのハイプサイクル2022」によると、ツールやサービス間連携を自動化する「iPaaS」(Integration Platform as a Service)が安定期に入り、ピークを迎える日も近いという。こうして自動化分野で新たなテクノロジーが登場する中で、業務自動化ブームを生んだRPA(Robotic Process Automation)は社会にどれほど根付き、どこまで利用が浸透したのだろうか。
RPA活用の現在地を探るために、キーマンズネットは「業務自動化に関する意識調査2022年」と題してアンケート調査を実施した(期間:2022年9月14日〜10月17日、有効回答数:518件)。本連載は、全7回にわたってアンケート調査から得られた結果を基に活用状況と課題、発生したトラブルなどを紹介する。
第1回となる本稿では、RPAの導入状況を概観し、ツールの導入状況と利用経験の有無、RPA製品の認知度などについて尋ねた結果を紹介する。なお、グラフで使用している数値は、丸め誤差によって合計が100%にならない場合があるため、ご了承いただきたい。
“RPAブーム”は今も続いているのか? 勤務先での取り組み状況
RPAの主な導入目的となるのが、現場の無駄な繰り返し作業や定型業務の削減だ。そうした業務自動化対象となる現場の無駄な作業はどの程度存在するのか。調査対象者に勤務先の業務で繰り返し作業や定型作業が占める割合を感覚値で聞いたところ、最多が「ごく一部存在する」が53.1%で、次いで「業務の約半分を占める」が31.9%となり、「業務の大半を占める」との回答は6.4%にとどまる結果となった。
次に、RPAの利用状況と活用の進展を見る。2021年の同様の調査では、「トライアル実施中」が11.6%、現場への実展開まで進んだ「本格展開中」とした割合は30.2%だったが、この数値はどう変化したのだろうか。RPAツールの導入有無と展開状況を数値化してまとめたものが以下の図だ。
勤務先でのRPAの導入状況について尋ねた結果、3割近くが「導入していないが興味はある」(28.4%)と答え、RPAを導入済みで「本格展開中」とした割合は23.9%にとどまった。2021年に実施した同様の調査では(実施期間:2021年9月16日〜10月8日)、「(RPAを導入済みで)本格展開中」が30.2%、「導入していないが興味はある」が23.0%であり、2022年の調査では両者が逆転する結果となった。
「どこまで知っていますか?」RPA10製品の認知度調査
RPAの導入意向を問う項目で「興味はある」「検討中」と回答した人に対して、想定している導入予定時期を尋ねたところ、「未定」が大多数で74.1%、「1年以内」が15.1%となり、興味を持ってはいるが具体的な導入までは話が進んでいないとした割合が多くを占めた。
最後に、RPA製品に関する理解の程度を探るために、RPAの代表的な10製品に対する理解度と利用経験の有無について聞いた。2021年の結果と比較すると、2021年は「知らない」の割合がおおよそ5割から6割で推移していたのに対して、2022年の調査では「知らない」とした割合は6割〜7割がボリュームゾーンとなり、今回の調査では各製品の認知度が低下した様子がうかがえた。
RPA10製品について「現在利用している」「利用したことがある」「試したことがある」「知っている」「知らない」を選択式で尋ねたところ、最も認知度が高いものが「Automation Anywhere」で33.2%、次いで「UiPath」が28.2%だった。利用経験の有無では、国産RPAの「WinActor」が最も高い数値を示し、「現在利用している」(13.3%)、「利用したことがある」(4.6%)であった。
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