二極化するSD-WAN市場、大企業と中小企業で活用戦略はどう違う?
ネットワーク管理を省力化する「SD-WAN」。ワークシフトが後押しして、さらなるニーズの高まりが予測される。アナリストが、市場調査から大企業と中小企業におけるSD-WAN活用を考察する。
IDC Japanが発表した「2021年の国内SD-WAN市場」によると、SD-WAN市場は2021年と比較して46.5%成長し、市場規模は84億2600万円になったという。IDCは「2022年は34.7%の前年比成長率で拡大し、市場規模は113億4700万円に達するだろう。2023年以降も堅調に成長を続け、2021〜2026年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は17.8%、2026年の市場規模は190億9000万円になる」と予測する。
注:「2021年の国内SD-WAN市場」では、SD-WAN関連のハードウェアやソフトウェア、マネージドサービス、インフラストラクチャ、プロフェッショナルサービスに対するユーザー支出を対象とする。
ネクストノーマル、大企業と中小企業で違うSD-WANの“使い方”
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大から2年以上が経過した現在、ネクストノーマル(次の常態)のワークススタイルを見据えた大企業を中心にネットワーク再構築の動きが広がり、SD-WANの活用が活発化しているようだ。
ハイブリッドワークやクラウドシフトが進むとともに、ネットワークはますます複雑化する。ネットワークの運用負荷を下げ、オフィス回帰に伴って増大するネットワークトラフィックを制御するとともに回線コストを抑えるために、大企業を中心にSD-WANに再び関心が集まっている。
一方で、中堅・中小企業においては、ローカルブレークアウトを目的としたポイントソリューションとしてSD-WANを利用するケースが続く。SD-WAN の導入目的は、大企業を中心としたネットワーク全体の再構築による導入と、中堅・中小企業を中心としたローカルブレークアウトを目的とした導入に二極化する。
IDC Japanの山下頼行氏(コミュニケーションズ リサーチマネージャー)は企業セグメントごとのアプローチについて、サプライヤーへ次のようにコメントする。
「二極化する国内SD-WAN市場において、サプライヤーはターゲットのセグメントを明確にすべきです。在宅勤務率やクラウドシフトの進展を見据えてネットワークの本格的な再構築を計画する大企業に対しては、複雑化したネットワークの運用負荷や運用コストの削減に有用なトラフィック管理機能や可視化機能を訴求すべきでしょう。中堅・中小企業においては、設定や運用のサポートサービスに加えてAIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)を用いた自動運用機能の提供を進めるべきでしょう」
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