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従業員と経営陣の断絶 イーロン・マスク流手法の是非

テレワーク重視の従業員とオフィス重視のリーダー層、両者の争いはなかなか収まらない。各種調査の結果から、両者が断絶された現状と意外な解決策が明らかになった。

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HR Dive

 TwitterのCEOに就任したイーロン・マスク氏が、従業員に対して週40時間以上のオフィス勤務を求める通知をしたというニュースはまだ記憶に新しい。このようなオフィス重視の幹部と、テレワーク重視の従業員の争いはTwitterだけの問題ではないようだ。従業員と経営陣の断絶を示す調査の結果を見ていこう。

幹部職の考え方は「古い」のか?

 調査サービスを提供するコンソーシアムFuture Forumが2022年10月20日に発表した調査結果「2022 Future Forum Pulse」によると、非幹部の従業員は上司の3倍以上の割合がフルタイムでのテレワークを希望していることが明らかになった(注1)。しかし、多くの幹部職はオフィスでの仕事を好み、パンデミック後の方針は幹部職の経験を反映したものになりがちで、従業員からの意見をほとんど聞いていないようだ。

 従業員と経営陣の間の断絶は少し前から生じていた。2022年4月に発表されたMercerの調査によると、約4分の3の従業員が「テレワークやハイブリッドワークが組織をより成功に導くと信じている」と答えた一方で、72%の幹部職が「テレワークが企業文化に与える影響を懸念している」と答えた。

 変化が読みづらい時代において、リーダーがこれまでの習慣を手放すことに慎重になるのは当然だ。しかし、視点を変えることで違いが生まれると、Gallupは指摘している(注2)。リーダーは「できないこと」に目を向けるのではなく「できること」に目を向けるべきだと、同社は述べている。これには、組織を安定させる方法、例えば、メンバーとコミュニケーションをとることや、管理職の育成に力を入れることなどが含まれる。

リーダー育成の鍵になる「コーチング」

 2023年のビジネストレンドに関するCoachHubの調査によると、あらゆるレベルのリーダーがコーチングを受けることで、優先順位やプロセスを見直せるという(注3)。また、コーチングは、リーダーが直属の部下とより良い関係を築き、エンゲージメントを促進するのに役立つことが、2021年の調査で明らかになった(注4)。

 リーダー自身がコーチングを学ぶことも重要だ。多くの管理職は最初からリーダーの資質を持ち合わせているわけではない。コーチングのトレーニングを行うことで、積極的な聞き役となり、直属の部下が置かれている状況に対応する方法など、重要なスキルが身につくことが調査で分かっている。

 専門家によれば、管理職にコーチングの指導をすることは重要な投資だが、経営幹部の多くはそれにためらいがあるようだ(注5)。コーチングは旧来のやり方に対する偏見に対処するのに役立つと、その専門家は述べている。今まさに必要とされていることではないだろうか。

 フルタイムのオフィスワークを義務付けるなど、パンデミック以前の規範に基づいた施策を推し進めることは、事態を悪化させる可能性があるとFuture Forumは述べている。一方、働く場所と時間を柔軟に決められる従業員は、より高い生産性とチームとの一体感を感じていることがデータで示されている。Future Forumの設立パートナーであるMillerKnollの役員、ライアン・アンダーソン氏は次のように述べている。「もしあなたが昔のやり方に戻る、昔のオフィスに戻る、自分にとってうまくいったことに戻る、という方向で考えているなら、その方向を見直す時が来た」。

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