検索
ニュース

Web会議の課題とツールの利用状況(2023年)/前編

Web会議は移動を伴わず気軽に開催できることから、「かえって会議の数が増えた」「会議がだらけがち」などの課題が生まれやすい。アンケート回答者が答えた「勤務先でのWeb会議にまつわる課題」や「会議を無駄にしないための施策」などを紹介する。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 Web会議が日常になった今、次なる課題としてツールの利便性や会議の質の向上、Web会議環境の改善などに目が向けられる。Web会議は1対1でじっくりと会話をするには適しているが、メンバーで意見を語り合ったりアイデアを出し合ったりと、複数人で話し合う手段としては不向きと考えられる。そのためか「会話が1対1で一方通行になりがち」「相画面越しでは相手のリアクションや表情が読み取れず疲労を感じる」など、Web会議ならではの悩みの声が聞かれる。

 キーマンズネットは「Web会議の課題とツール利用状況」と題してアンケート調査を実施した(実施期間:2023年3月10日〜3月24日、回答件数:262件)。前編となる本稿では、「Web会議の課題」にフォーカスして、平均的な会議の実施時間や、会議の進め方や回数にまつわる課題、Web会議での困りごとなどについて調査結果を紹介する。

移動時間は減るけれど……「Web会議増えすぎ問題」で困る社員

 まずは、開催時間と進め方、回数など、Web会議にまつわる課題についてアンケート回答者に尋ねた結果を見ていく。

 Web会議1回当たりの平均的な時間を尋ねたところ、最も多く回答が寄せられたのが「1時間以上2時間未満」で75.6%、次に「30分未満」(13.7%)であった。この結果を従業員規模別で見ても大きな差は見られなかったが、「30分未満」としたのは従業員数5001人以上(9.1%)、10001人以上の企業(12.5%)よりも100人以下の小規模企業(20.8%)の方がやや高い傾向にあった。

 次に、Web会議にまつわる課題について尋ねた結果をまとめたものが図1だ。オフィスへの移動や会議室の予約が不要になったことで気軽に開催しやすくなり、「突発的な会議が増えた」(21.8%)、「参加する必要性のない会議が多い」(22.9%)など上位に挙がった。「会議後の議事録の作成、共有が面倒」(26.7%)は会議のオンライン化に関わらず解消できない課題として、依然として多くの回答が集まる結果となった。


図1 勤務先でのWeb会議にまつわる課題について(従業員規模別)

 「参加する会議が多く業務時間が削られる」(22.9%)など、生産性の低下を危惧する声も多い。無駄だと感じる会議が増えた理由として、会議の開催ハードルが下がったことが一因としてあるのだろう。その他、「会議のルールが定められていない」(22.9%)や「進行役がいない」(10.9%)など、進め方に関して疑問を持つ声も一定数みられた。

「Web会議はやりにくい」と感じさせる一番の原因は?

 Web会議は対面会議とは作法が異なり、最初の切り出しや相づちのタイミングなどに困るときがある。これらが、いわゆる「Web会議疲れ」を感じさせる要因になる。次に、アンケート回答者に対してWeb会議中の「困ったこと」「失敗したこと」について尋ねた。

 Web会議の困りごとについて選択式(複数回答)で聞いたところ、「発言するタイミングを計るのが難しい」(44.7%)、「聞き手のリアクションがないと不安になる」(37.0%)、「誰が発言しているのかが分かりにくい」(29.0%)とコミュニケーション不安を挙げる声もあれば、「資料を共有する時の操作が面倒」(26.3%)、「参加者が多いと画面が固まらないか不安」(16.8%)、「自宅の通信回線に不安がある」(13.7%)など実施環境に関する不安の声も寄せられた(図2)。


図2 Web会議に関する困りごとについて(従業員規模別)

 Web会議は、対面会議と比べると表情の変化が読み取りづらく、非言語コミュニケーションが取りにくい。日本企業、特に大企業や老舗企業などでは場の空気を重んじる傾向があり、画面越しの会議では活発なコミュニケーションが難しく、ストレスを感じるユーザーも多いのだろう。

 こうしたWeb会議ならではの困りごとに関連して、ついやってしまった失敗体験について尋ねた(複数回答)。上位は、「ミュートしたことに気付かずしゃべり続けてしまった」(51.9%)、「話すタイミングがつかみきれず、かぶせて発言してしまった」(45.0%)、「声や音声がハウリングしてしまった」(45.0%)など、Web会議でよく聞かれる経験が並んだ。また、会議の参加場所が自宅の場合は背景も気になるところであり、「背景を設定し忘れた」(11.1%)も失敗経験として挙がった(図3)。


図3 Web会議でやってしまった失敗経験(従業員規模別)

 社内のフランクな会議であればこうした失敗も笑い流せるが、商談やプレゼン、経営会議といったシリアスな場では周囲の信頼低下につながる恐れがある。「ミュートしないまま独り言を言ってしまった」(15.6%)や「会議中にPCの電源が切れた」(14.1%)などは、注意したい項目と言えるだろう。

 この他にも、「周囲のメンバーが上長の悪口を言っていたのがそのまま流れてしまった」「資料を共有する時に、誤ってデスクトップを映してしまい、コンプライアンスに関わる情報も共有されてしまった」「誤って社内文書を画面共有した人がいた」といったどきっとするような体験や、「背後で裸の子供が走り回っていたのが映った」など、くすっと笑える失敗談が寄せられた。どれも対面や訪問による会議では起こり得ないもので、Web会議ならではの失敗ケースと言える。

回答者に聞いた、Web会議をなムダ会議にしないための工夫

 Web会議で最も向き合うべき課題は、会議の増加が招く生産性の低下だろう。こうしたWeb会議にまつわる課題を解消するために、勤務先で工夫していることはあるかとフリーコメント形式で回答を募ったところ、回答は2つに分けられる。

 1つ目は「ルールの設定と意識変革」に関する声だ。ルールの設定に関するコメントでは、会議の目的と終了条件をあらかじめ設定することで会議の長時間化を回避する工夫などが挙がった。

  • 協議したいアジェンダが一通り済んだら短時間でも会議を終了させる
  • 最初にテーマや目的と討議結果を示してから開始する
  • ゴールを明確にして、ゴールに到達すれば時間前でも終了する
  • 何が決まればこの会議が終わるのかを事前にメンバーに告知する

 意識面では、議論を活発化させるための工夫や参加者の立場を明確にするなどの取り組みが寄せられた。

  • 司会者は意図的に話を(参加者に)振るようにしている
  • 参加者に自分の立場をはっきりとさせ、見解を示し、議論するようにしている
  • ファシリテーションは1人任せにせず全員で対応している

 2つ目は「会議環境の整備」だ。ネットワークの通信帯域逼迫(ひっぱく)による遅延の発生や映像、音声の乱れを防ぐための工夫が挙げられた。

  • 議事録作成のために文字起こしツールを利用している
  • 通信帯域不足を防ぐために、重要な会議では「Windows Update」が走らないようにしている
  • 10人以上の会議ではカメラをオフにするなど通信量を減らす工夫をしている

 以上、前編では「Web会議の課題」にフォーカスして、調査結果を紹介した。後編は「Web会議ツール編」として、勤務先で利用しているWeb会議ツールと満足度、ベンダーの求めることなどを見ていきたい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る