2022年11月にOpenAIがリリースしたAI(人工知能)チャットbot「ChatGPT」。大規模言語モデル(LLM)を基にしたこのテクノロジーを、採用活動に応用する動きがある。LLMは既に、退屈で平凡な業務を支援するために使用されており、リクルーターは自動化できないタスクに集中する時間を得られる。
エンジニア採用支援サービスを提供するCoderPadのCEO(最高経営責任者)を務めるアマンダ・リチャードソン氏は「ChatGPTのように迅速に候補者に対応できるツールは、特に利用価値がある」と強調する。具体的には、どのような利用法が考えられるのだろうか。
リクルーターの退屈な仕事を軽減する
ペンシルベニア大学とOpenAIの研究によると、米国の労働者の約80%が「自分の仕事の少なくとも10%にLLMの影響が及ぶ可能性がある」とし、19%の労働者が「自分の仕事の少なくとも50%に実際に影響が及んでいる」と回答したことが分かった(注1)。米国の労働者の全作業の約15%は、LLMを利用することによって、同じ品質レベルで「著しく速く」処理できることも判明している。
では、採用活動においてはどうだろうか。
リチャードソン氏は、「電子メールを作成するような平凡な作業の効率を飛躍的に向上させられる」と述べる。このツールは文章を書くプロセスを代替するものではないが、それを補強するツールとして使える。リチャードソン氏はプレゼンテーションのアウトラインを作成するために使用したという。出力されたアウトラインは「平凡」だったが、「(プレゼンテーションが)完成しないのでは」という不安感を和らげる一助にはなったそうだ。
人事サービスを提供するStafiのプロジェクトマネジャー兼オペレーションディレクターであるトーマス・アルベリオ氏は、同社がChatGPTを利用して職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成していることを明かした。「特殊なスキルを要求される職務について、魅力的な職務記述書を作成するのに役立っている」と同氏は述べる。
職務記述書の説明が長いと、候補者が気に留めてくれない可能性がある。そのため「できるだけ情報量が多く、かつ魅力的な説明文を作成する必要がある」と同氏は言う。
ChatGPTで候補者をスクリーニングする
ChatGPTは候補者のスクリーニングにも使用できる。
Stafiは法律事務所と連携して、複数の言語に堪能なパラリーガルを探すことがよくある。しかし、言語要件を明記した職務記述書を掲載すると、何百通もの応募があるが、その多くは要件を満たしていない候補者からだという。「ChatGPTはこれらの履歴書や送付状を分析し、要点のみを把握できる。本当に必要な人材の履歴書に集中することができ、時間を大幅に節約することができる」とアルベリオ氏は述べる。
同社はChatGPTを新入社員研修にも活用しており、クライアントのニーズに合わせた評価やクイズの作成をテクノロジーに任せている。しかし、ただテクノロジーに任せているわけではなく、その分野の専門家が問題をレビューし、審査しているという。
「トレーニングチームはクイズへの回答をチェックし、どの新入社員が問題を抱えているのかを確認できる」とアルベリオ氏は言う。トレーニングチームはその新入社員を支援し、配属先での業務に備えることができる。これらの作業にかかる時間は、20〜30%短縮されていると同氏は推測する。
CoderPadのリチャードソン氏は「ChatGPTを使うリクルーターは増えるだろうが、採用プロセスが完全にChatGPTに置き換わることはない」と付け加えた。消費者が本物の人間とカスタマーサービス用のチャットbotを見分けることができるように、求職者にもその違いが明らかなのだ。
「どの企業が実際に採用に投資しているのか、どのリクルーターが本当に候補者に配慮しているのかが明らかになる。ロボットのようなツールと対話すると、かなり明確だ。パーソナライズされた受け答えができるようになるまでは、長い道のりになるだろう」(リチャードソン氏)
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