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セキュリティ業界から女性を排除するのは「制度」ではなく「人」かも?

ある調査によると、サイバーセキュリティ業界で女性が不利に立たされているようだ。その原因とは?

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HR Dive

 サイバーセキュリティ業界における女性の活躍を支援する団体Women in CyberSecurity(WiCyS)が2023年3月29日に発表したレポートによると、サイバーセキュリティ業界の女性は、勤務満足度や生産性、リテンションの低下と並んで、疎外感を感じる職場環境を経験していることが分かった(注1)。

 同レポートでは調査対象の女性らが、組織のリーダーシップおよび直属の上司、同僚からのリスペクトの欠如に加えて、キャリアや成長の機会の欠如についても議論している。この調査結果を受けて、WiCySのエグゼクティブディレクターのリン・ドーム氏は次のように述べる(注2)。

 「サイバーセキュリティ業界の女性の割合は24%前後で推移しており、本来あるべき姿よりもはるかに低いことを私たちは知っている」(ドーム氏)

排除の原因は「制度」ではなく「人」?

 ドーム氏は、女性が排除されていると感じる原因が企業の方針ではなく「人」であることに驚いたという。

 「サイバーセキュリティ業界が女性を受け入れるまで、まだ長い道のりがあるという事実を浮き彫りにしている」(ドーム氏)

 WiCySは、DEI(多様性、公平性、包括性)推進サービスを提供するAleriaと協力して、2023年2月に行われたワークショップで、300人以上の女性から500近くの経験に関する情報を収集した。そのデータを基に、職場での不快な経験の普及率や深刻度、頻度を組み合わせた「排除スコア」を算出した。

 参加者は仕事やキャリア、ワークライフバランスなどについて話した。女性は男性よりも低い評価を受けたり、自分ではなくIT部門の男性が対応するよう求められたり、目の前で男性の同僚がポルノを見るような経験をしたりといった出来事を報告した。

 83%の参加者が「排除された経験が少なくとも1度はある」と答えた。参加者の57%は「キャリアと成長」、56%は「尊敬」に関して排除を感じたという。「評価」と「リソースへのアクセス権限」についても、41%の参加者が排除を感じた。

 不快な経験の原因として、大多数の参加者が「人」を挙げた。約68%がリーダーを挙げ、次いで61%がマネジャー、52%が同僚を挙げた。対照的に、職場の方針が排除を助長していると指摘した人は12%だった。

 同じ組織に6年以上在籍している従業員の排除スコアが最も高く、新規採用者は組織に2〜5年間在籍した従業員より排除スコアが17%高かった。

 サイバーセキュリティ企業は、それ以外の企業より排除スコアが高い傾向にある。別の調査では、テクノロジー企業は女性の間で排除スコアが高くなる傾向があることが示されている。ジェンダーの多様性を持たないスタートアップは、女性の応募者を獲得できない可能性もあり、企業が成長しても多様性を確保できない恐れがある(注3)。

 別のデータでは、業界を問わず、従業員はよりインクルーシブな文化を支持する傾向があり(注4)、多くの人がそのために転職すると回答した。「組織内の全ての役割でDEIを意識することは採用とリテンションに役立つ可能性がある」と、複数の人事コンサルティング会社が指摘する。

 「サイバーセキュリティ業界は深刻な人材不足に直面しており、女性がなぜこの分野に参入しないのか、理解することが必要だ」と、Aleriaの共同創設者兼プレジデント、パオロ・ガウディアーノ氏は声明で述べた。

 「私たちの調査が、単なる指標としての多様性だけに注目するのではなく、多様性確保のために行動し、包括性をDEI戦略の重要な要素に位置付けるための警鐘になることを願う」とガウディアーノ氏は述べる。

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