時代遅れのIT教育 企業が今取り組むべきこととは
ガートナージャパンによれば、これまでのIT教育は必ずしも時代の変化にマッチしたものとは言えないという。企業は何に取り組むべきなのか。
ガートナージャパンは2023年5月8日、従業員のITリテラシー向上のために企業が取り組むべき4つの施策を発表した。
魅力的で柔軟性の高い職場環境によって従業員のデジタル・デクステリティ(テクノロジーを利用して能力を高めようとする意欲)を高める戦略、「デジタル・ワークプレース」を実現するために、従業員のITリテラシー向上が必要だとする。
企業が取り組むべき4つの施策
ガートナージャパンが提唱する、企業が取り組むべき4つの施策は以下だ。
1.従業員がITリテラシーを向上させられる機会を継続的に設ける
ガートナージャパンによれば、企業は従業員のITリテラシー向上のために、研修やワークショップの実施、実践コミュニティー(Community of Practice:CoP)の設置、セルフトレーニングの機会提供など複数のアプローチを組み合わせることが重要だという。
Gartnerの予想では、2026年までに60%の企業がデジタル・ワークプレースを推進するCoPを設置する見込みだ。
2.ITスキルをビジネスと連動させ、目的に合わせて体系化する
企業は漠然とトレーニングを実施するのではなく、どのスキルをどの従業員に身に付けさせるかを定める必要がある。
全社員が身に付けるべき「コアスキル」と職務ごとに持つべき「ロール別スキル」、企業の競争力につながる「差別化スキル」の3つにスキルを分類し、体系化すべきだとガートナージャパンは説く。
3.スキル・ロードマップを定期的に見直し、短期間で学べるアジャイルな方法を取り入れる
時代の変化に応じて、必要なスキルも変化する。ガートナージャパンによれば、「ビジネスのニーズの変化に応じて必要なスキルを定義し、業務のフローに学習を組み込む」「昇進のタイミングで身に付けるべきスキルを定義し、キャリアロードマップとスキルを連動させる」などの施策を行う必要があるという。
4.スキル向上の意義を周知する
スキルを身に付けた人材が条件の良い企業へ転職する可能性もある。企業はスキル向上の機会を提供するだけでなく、「この会社にいると成長できる」「新しいスキルを獲得して活躍できる」という意識付けも重要だとガートナージャパンは述べる。
ガートナージャパンの針生恵理氏(ディレクター兼アナリスト)は以下のように指摘する。
「これまでのIT教育は必ずしも時代の変化にマッチしたものとは言えず、獲得すべきスキルの再定義やスキル獲得のための新たなアプローチが求められている。企業は人材投資を戦略上の最重要項目と位置付け、従業員のITリテラシー向上やビジネス部門のITリーダー創出に取り組む必要がある」(針生氏)
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