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実は残る固定電話とFAX、その理由は? レガシー情報機器の実態調査レガシー情報機器の利用状況(2023年)/前編

キーマンズネットは従来型のIT機器を“レガシー情報機器”と呼称し、企業における利用状況やニーズの移り変わりを経年で追ってきた。前編となる本稿では「固定電話」「FAX」「アナログディスク」の利用動向を紹介する。

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 インターネット環境の充実やクラウドサービスの普及、働き方の多様化など外部環境の変化を背景に、従来型のIT機器の代替製品への置き換わりが進んだ。

 キーマンズネットではそうした機器類を「レガシー情報機器」と呼称し、企業における利用状況やニーズの移り変わりを経年で追ってきた。今回も前年に続き「レガシー情報機器の利用状況」(実施期間:2023年5月5〜19日、回答件数:229件)と題して調査を実施した。前編となる本稿では「固定電話」「FAX」「アナログディスク」の利用動向を紹介する。

過半数が「今後も利用継続」としたレガシー機器

 はじめにレガシー情報機器の利用状況を調査したところ、「現在利用中で今後も利用予定」は「FAX」(75.5%)、「固定電話」(71.6%)、「ビデオ会議システム」(65.1%)が上位に続き、いずれも過半数が今後も利用継続する見通しだ(図1)。


図1 レガシー情報機器の利用状況

注1:ビデオ会議システムは、Web会議ではなく会議室にハードウェア備え付けの会議システムを指す

注2:EDIは情報機器ではないが、2024年1月にはISDN(総合デジタル通信網)のデジタル通信モードが終了するため調査した

 この結果を2022年4月に実施した前回調査と比較したところ、減少率をみると「FAX」が約1年で3.8ポイント減と最も低下していた。また、2020年10月の前々回調査に比べて「固定電話」が10.0ポイント減となっており、この2年半では「固定電話」利用の減少が顕著であった。

 「現在利用中だが今後は廃止予定」の機器では「アナログディスク」(10.0%)、「FAX」(8.3%)、「固定電話」(6.6%)が続いた。電子記録媒体として1970〜1980年代を中心に利用されてきたアナログディスク(フロッピーディスクや光磁気ディスクなど)は、HDDやフラッシュメモリの大容量化もあってほぼ代替されており、既に生産も終了していることもあってか、固定電話やFAXよりも廃止の意向が強いようだ。

 ただし、アナログディスクの利用が今すぐ全てなくなるわけではない。「今後も継続して利用予定」と回答した人は、「過去の資料データの保管」「データの長期間バックアップ用」などのバックアップ用途や、「金融機関との例外対応時のデータ交換のため」「客先への納品形態が光磁気ディスク指定のため」といった取引先への対応用途、「古い機器が残っており特定の記録媒体しか利用できないため」「古い計測器に実装されており使わざるを得ない」などの理由で継続利用を予定している。

「固定電話」の継続派が考える3つの理由

 次に「固定電話」の利用状況について背景を紐解く。2年半で10.0ポイントと減少傾向だが、未だ全体の79.5%が利用しており71.6%が利用継続とした。廃止をしない理由についてフリーコメントで聞いたところ、回答は3つに大別できた。

 1つ目は「バックアップやBCP」の観点だ。「災害時など停電時にも利用できる」や「最悪電源喪失時にも利用できるのでBCP対策」とのコメントにみられるように「災害時などの保険的役割」を担っている。

 2つ目は「代表電話」や「顧客対応窓口」として利用するためで、「代表電話などで電話応対が業務に必要」や「顧客からの問い合わせ対応」「保守契約顧客向け窓口として使用」など、顧客対応にトラブルが生じないために、安定した固定電話を選択するケースだ。

 最後に3つ目は「切り替えコスト」への懸念で「全ての従業員にスマホを支給するのは必要性や頻度的に無理があるため」や「内勤のみ従業員のスマホやFMCなどのコスト削減」があった。

 他にも「各種公的機関の印刷物にも掲載されており、仮に廃止にしようとしても長期に渡って周知期間を設けねばならず、周知され切ったという見極めが困難なため」など、広く認知された電話番号を変更することによる損失コストを指摘する声も挙がった。

 また、利用状況を企業規模別でみると、従業員規模500人以下の企業で固定電話を「利用しており、今後も利用する予定」と回答したのは約90%と高い傾向にある(図2)。一方501人以上の企業は、利用予定の企業が大きく減り、50〜70%となる。企業規模が大きくなるに従い、固定電話を廃止しているのが分かる。


図2 企業規模別、固定電話の利用状況

 一方、固定電話を廃止予定とした人に代替サービスを聞いたところ「クラウドPBXとスマートフォン」(61.1%)や「Teams電話」(33.3%)に票が集中した(図2)。


図3 固定電話の代替として利用予定のサービス

 「電話対応自体を廃止」(11.1%)する企業は全体の1割程度で、固定電話を廃止しても電話機能を残す企業が大多数だ。固定電話の番号も条件によってはクラウドPBXで引き継ぐことができるなど、サービス選定次第で前述の懸念事項を払拭できるケースもあり、こうした認知が進むことで、今後クラウドPBXや関連Webサービスへの代替が一気に進む可能性もある。

FAXの利用用途の現在地

 続いては「FAX」だ。利用率は83.8%と大多数で導入されている。利用用途としては「受発注の連絡/数値、文章」(49.7%)や「顧客や取引先の問い合わせ」(40.1%)「受発注の連絡/図面、図画等」(23.2%)が中心で、主に顧客対応で利用されている(図4)。

 フリーコメントでは「金融機関との送入金確認」「取引先からの受信用」などの意見があり、「官公庁向けの申請等」(14.7%)にも一定票が集まっていることから、電子化に対応できていない取引先への対応が主な用途となっているようだ。

 現デジタル大臣である河野太郎氏が2022年、官庁・省庁でのテレワークの阻害要因の一つとしてFAXを取り上げ、霞が関での脱FAXを提唱したことは記憶に新しい。こうした動きが官公庁、民間と広がっていくことで、取引先対応としてのFAX利用は減少する可能性がある。


図4 FAXの利用用途

 FAXの代替としては「メール」(78.9%)が最多で、次いで「WEB受発注システム」(36.8%)や「データ共有サービス」(31.6%)が挙がった(図5)。今後は情報保護の観点から、社外とのやり取りについてはWEB受発注システムやデータ共有サービス、社内連絡ではメールやチャットを利用するなど、使い分けが進んでいく可能性もある。


図5 FAXの代替手段

 また、企業規模別でみると、従業員規模500人以下の企業に比べて、501人以上の企業になると利用予定の企業が大きく減るのが分かる(図6)。固定電話と同様、企業規模500人を境に継続利用する企業の割合に差が生まれる。


図6 FAXの代替として利用予定のサービス

 以上、前編では今後「廃止予定」との回答が多かった「アナログディスク」「固定電話」「FAX」についての利用用途や代替先について紹介した。後編では「ビデオ会議システム」「タイムカード」「EDI」を対象に利用動向を考察する。

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