新卒よりも“年配の候補者”をエントリーポジションに採用したい企業のホンネ
多くの企業がエントリーポジションで若い候補者よりも年配の候補者を採用したいという。従業員の経験や成熟度に対する認識にどのような変化が起きているのだろうか。
採用担当者によると、エントリーレベルの職に応募するシニアが増えているという。人材派遣を行うExpress Employment Professionalsが2023年9月27日に発表した報告書によると(注1)、回答者の約79%が「3年前と比較してエントリーレベルの職に応募するシニアが増えた」と報告している。
また、採用担当者の60%も「エントリーレベルのポジションに、若い候補者よりも年配の候補者を採用したい」と述べている。なぜ、企業は若い候補者よりも年配の候補者を採用したがるのだろうか。
年配の候補者がエントリーポジションで求められる能力
Express Employment Professionalsのフランチャイズオーナーであるマイク・ノルフォ氏は次のように述べた。
「仕事への高い倫理観と責任感を持った従業員が必要なのだ。スキルセットは訓練しやすいが、現在は職業倫理と仕事への責任感が優先されている」
米国の採用決定者1010人を対象とした調査では、82%が正社員を探しており、55%が時給制の従業員を探しており、51%が月給制の従業員を探している。また、企業の53%(2022年後半の63%から減少)がエントリーレベルの従業員を探しており、企業の52%(2022年後半の58%から減少)が中堅レベルの従業員を探している。
これを受けて、求職者も応募の範囲を広げている。求職者の約83%は「自ら希望するものであれば、募集で必要とされるレベルをはるかに超える能力や経験、学歴などを持っていても応募して構わないと考えている」と回答した。これは、人手不足で新入社員の教育に時間やリソースを割けない企業にとっては良い傾向だ。
Express Employment Professionalsのもう1人のフランチャイズオーナーであるビル・ソフィオ氏は次のように述べている。
「新入社員を教育するトレーナーすら不足している企業もある。それらの企業は、初日から業務をこなすスキルと経験を持つ従業員を必要としている。そうした場合、エントリーレベルの仕事に応募するシニアが価値を発揮するだろう」とノルフォ氏は述べた。
また、ノルフォ氏は次のようにも述べている。
「企業は信頼できる人材を求めており、そのためには高い報酬を支払うだろう。多くの場合、企業はポジションの空白に基づいて応募者を選定せず、応募者に基づいてポジションを作っている」
一方で、採用担当者の中には年齢や経験をメリットと見なさない人物もいる。応募書類の作成サービスを提供するResume Builderの調査によると、採用決定者の約40%は「技術スキルや退職の可能性への懸念から、年齢に対して偏見を持っている」と認めている(注2)。
リーダーシップ開発を受けていないマネジャーにマネジメントトレーニングを提供することが、解決策の一つとなるかもしれない。(注3)。トレーニングやコーチングを受けることで、多くのマネジャーが抱える悩みが解消される可能性がある。
出典:Seniors are increasingly applying for entry-level positions, hiring managers report(HR Dive)
注1:Surge in U.S. Seniors Applying for Entry-Level Positions(CISION)
注2:Nearly half of hiring managers admit to age bias in Resume Builder survey(HR Dive)
注3:Managers say they lack training, and 44% feel overwhelmed at work(HR Dive)
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