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企業成長に“最低限”必要なITコストの導き出し方

企業が競争力を維持するためには、ITとビジネス全体のコストを最適化する必要がある。短期的なコスト効率を重視したアプローチではなく、将来大きな成果を生み出すためのアプローチとは。

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CIO Dive

 急速に変化する顧客の需要に対応し、企業が競争力を維持するためには変革が鍵となる。それは多くの場合、ITとビジネス全体のコストを最適化することを意味している。

 しかし、従来のコスト削減のためのアプローチは、これらのバランスを取るようには設計されていない。変革のための投資を削減対象とし、現在の業務を優先させるためである。

 このような短期的なコスト効率を重視したアプローチでは、結局将来大きな投資が必要になり、持続的な節約にはつながらない。本稿では、ITコストの最適化につながる、効果的なITコスト削減の3ステップを解説する。

コスト削減に必要なトップダウンアプローチ

 現在、CIO(最高情報責任者)には少ないリソースでより多くを成し遂げることが期待されている。DX(デジタルトランスフォーメーション)やカスタマーエクスペリエンスへの取り組みは(注1)、経営幹部にとっての最優先事項だが、経済の不確実性が増すにつれ、効率の向上やコスト削減が重視されるようになっている。

 借入コストの上昇やスキル不足、クラウド価格の上昇、サプライチェーンの混乱なども、新規プロジェクトの再考や、進行中および提案中のプロジェクトのROI(投資収益率)の再評価につながっている。

 これに対抗するため、CIOはビジネス全体で積極的にITコストを最適化する文化を確立し、経営幹部やステークホルダーとの関係を強化する必要がある。さまざまな時間軸でコスト削減の取り組みを活用し、より広い範囲で変革を起こすためのメカニズムとして機能させるのだ。

 組織が持続的かつ長期的な成果を達成するためには、コスト削減の取り組みをビジネスの構造そのものに組み込む必要がある。

 リーダーは、俊敏性とスピード、顧客中心主義に焦点を当てて、大幅かつ持続可能なコスト最適化を推進するために、コスト削減プログラムにトップダウンアプローチの導入を検討すべきだ。

コスト削減時に取るべき3つのステップ

 ここでは、企業がビジネス全体のコスト削減をすべきときに取るべき3つのステップを紹介する。

1. コスト削減のために既に行われている取り組みを理解する

 現在および過去の削減プログラムを特定し、成果を分析する。

2. さらなる節約のための大きな機会を探す

 実行中の取り組みをコスト最適化のフレームワークに関連付け、さらに成果をあげられる空白のスポットや未開拓の可能性を特定する。

3. 節約をどのように実現するかを決定する

 行動計画を作成し、継続的にコストを追跡する枠組みを確立する。任意の支出や変革のための支出を削減対象とする従来のアプローチに代わって、トップダウンアプローチを活用し、継続的な業務支出をどのように削減できるかを特定する。例として以下が挙げられる。

  • FinOpsとソフトウェア・ライセンスの支出: クラウドインスタンスやソフトウェアライセンスへの支出は、時間の経過とともに、組織が必要とする以上に膨れ上がる可能性がある。現在の支出と必要な額を分析して理解することで、迅速なコスト削減が可能になる
  • 工業化と自動化: インフラストラクチャとアプリケーション管理における自動化の利用を拡大することで、サポートコストを削減し、顧客体験を向上させられる。サポートプロセスの成熟化と産業化はサービス提供の効率を高め、変革の取り組みのためのリソース確保につながる
  • アウトソーシング最適化戦略: 配送チームが、重要度の低い作業に対する低コストの配送地と現地のリソースの効率のバランスを取ることで、配送に影響を与えることなく、組織の全体的なコストを削減できる

 上記の3ステップでITコストの最適化に焦点を当てることで、企業はIT支出を最も価値の高い分野に集中させられる。

 構造化されたコスト最適化プログラムを活用して、さまざまな時間軸で価値を特定する組織は、変革に必要な自己資金を得るためのリソースを確保できるだけでなく、価値の迅速な実証を通じて賛同者を増やすこともできる。

 このアプローチの価値は、ドルやセントに限定されるものではない。コスト最適化プログラムは、IT組織と技術的な環境を簡素化して現代化することで、組織が課題や機会に対応する能力を向上させる。

 ここ数年で明らかになったように、課題は予期せぬ形で現れることがあり、さまざまな対応が必要となる。簡素化された環境と機敏な組織は、次の課題や機会がどのような形で現れるかにかかわらず、より有利な立場に立つことができる。

よくある落とし穴

 ITコストの最適化は容易ではない。組織の複雑さや制約もあり、企業はコストパフォーマンスの最適化と改善を難しいと感じるかもしれない。以下は、ITコストの最適化を目指す企業が直面する可能性のある一般的なハードルだ。

コスト最適化ではなくコスト削減

 従来のコスト削減の取り組みは、ボトムアップアプローチに従ったものであり、主にコストの症状と戦い、迅速で持続不可能な影響を生み出すものだった。それらの手法を活用するのではなく、IT支出の構造を持続的に変革し、デジタルコスト削減を目指すべきだ。

ITとビジネスの連携が不明確

 ビジネスの全体的な目標や優先順位とIT支出の関係が明確になっていない場合がある

サイロ化されたアプローチ

 チームが個々に活動する場合、作業の重複やリソースの非効率的な使用が発生する。

正確なデータの欠如

 データにアクセスできなかったり、データが古かったり、利用できなかったりすると、コスト最適化の取り組みに影響を与える可能性がある。

 企業の規模が拡大し、経費が増加するにつれて、ITコストの最適化は効果的なITビジネス戦略の不可欠な要素となるだろう。適切なツールと手段を導入することで、企業は勢いを増し、継続的な改善と革新の文化を築き、市場での競争力を高めることができる。

※コンサルティングファームのCapgemini AmericasでADMソリューションおよびオファリング開発を担当するディレクターのデビッド・マッキンタイア氏と、Capgemini InventのCIOであり、アドバイザリーを担当するシニアディレクターでもあるピーター・ポティー氏による寄稿記事だ。

出典:3 steps to proactive IT cost optimization(CIO Dive)
注1:How CIOs can declutter customer experiences(CIO Dive)

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