IDC Japan(以下、IDC)は2024年3月7日、国内AI(人工知能)インフラ市場予測を発表した。
2027年まで2桁成長が続くAIインフラ市場 特に需要が伸びる項目は?
国内AIインフラ市場は、AIサーバーとAIストレージで構成される。AIプラットフォームやAIアプリケーション、AI対応の従来型アプリケーションなどを1つ以上実行するサーバーもしくは外付型ストレージシステムを対象としている。
2023年の国内AIインフラ市場の支出額は、前年比46.1%増の1094億8900万円とIDCは見込む。2022〜2027年における同市場の支出額の年間平均成長率(CAGR)は16.6%で、2027年の同市場の支出額は1615億5000万円と予測している。
2023年は生成AIに急速に関心が集まったことも相まって、サービスプロバイダーを中心にAIインフラに対する投資が活発化した。その結果、国内AIインフラ市場は1000億円を超える規模に急成長したとIDCは分析する。
IDCは、2024年以降も引き続き、AIインフラに対する投資意欲が旺盛と見込む。「AI Everywhere(どこでもAI)」といわれるAI活用の裾野の広がりや、マルチモーダル化の進展による画像や動画の生成などで、AI向けのコンピューティングやストレージリソースの需要はさらに高まる見込みだ。
製品カテゴリー別では、AIサーバーが成長をけん引する見込みだ。デプロイメント別では、クラウド(クラウド向けAIインフラ)が成長セグメントとなる。クラウドでは、パブリッククラウドサービスとして提供されるAIサービスやAIワークロードに最適化されたIaaS(Infrastructure as a Service)に対する旺盛な需要を背景に、AIインフラへの支出も高い水準で継続する見通しだ。プライベートクラウドにおいても基盤モデルのファインチューニングや推論といったワークロードなどでAIインフラに対する需要が高まる見込みだ。
IDCは、GPU(Graphics Processing Unit)などのアクセラレーターのサポートによってAIワークロードを実行するアクセラレーテッドAIサーバーの支出額も予測した。
アクセラレーテッドAIサーバーの2022〜2027年のCAGRは41.7%となり、国内AIサーバー市場におけるアクセラレーテッドAIサーバーの構成比は、2023年の26.9%が2027年には35.4%に上昇すると予測する。
アクセラレーテッドAIサーバーは、ML(機械学習)や生成AIを含むディープラーニングのワークロード向けのインフラとして、需要が急速に高まっている。特にパブリッククラウドサービスのインフラ向けの支出が拡大しており、予測期間を通じて高い需要が継続するとIDCはみている。
なお、AIワークロード向け以外も含む国内アクセラレーテッドサーバー市場におけるアクセラレーテッドAIサーバーの構成比は、2023年の41.6%が2027年に49.8%に上昇すると予測している。
IDCの宝出幸久氏(Infrastructure & Devicesのリサーチマネージャー)は国内AIインフラ市場について、「2023年の国内AIインフラ市場は、生成AIの隆盛を背景としたAIインフラに対する需要の高まりによって高成長を遂げた。クラウド向けを中心にGPUなどを含むアクセラレーテッドAIサーバーに対する支出が大きく成長した。生成AIの急速な普及が今後の国内AIインフラ市場の最大の成長要因になる」と分析する。
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