タレントマネジメントシステムの選び方ガイド 10製品の長所と短所(2/3 ページ)
従業員の基本情報や能力、スキルを一元管理するタレントマネジメントソフトウェアにもさまざまある。本稿では、タレントマネジメントシステムの基礎と、10製品の特長とそれぞれのメリット、デメリットを解説する。
タレントマネジメントシステムの主な機能
タレントマネジメントシステムの機能はモジュールで提供される製品もある。報酬モジュールは昇給やボーナスといった財務に関する機能を担う。企業文化や規模、予算、業種、優先事項によっては、必ずしも全ての機能が必要というわけではない。
タレントマネジメント市場で注目を集めている機能がAIだ。AIの発達に合わせて、タスク処理の簡略化や自動化を可能にするAI機能を製品に組み込むソフトウェアベンダーもある。当初、AIの利用が推し進められていたのは、求人の分野だったが、現在は後継者育成(サクセッションプランニング)をはじめとするタレントマネジメントの他の領域でも、その導入が盛んになりつつある。
ここからは、タレントマネジメントに関連するモジュールについて解説する。
コアHR
コアHRモジュールは、以下のような機能を実行する。
- 全従業員の情報を一つのデータベースに保存する
- 従業員およびマネジャー向けのセルフサービスのオプションを提供する
- インタフェースを介して人事データを他のシステムに移行できるようにする
- 全データに関する包括的なレポートを作成する
従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントモジュールには次の機能が含まれる。
- さまざまなトピックに関する従業員向けの意識調査を定期的に行う
- 従業員満足度を比較対象となる企業の数値と比較する
- 従業員が互いの業績を評価し、褒賞を受けられるようなツールを提供する
求人
求人モジュールには次の機能が含まれる。
- 求職者が求人に応募するためのポータルを提供する
- 一般的な求人掲示板と会社のコアHRモジュールと統合する
- すでにデータベースに登録されている候補者の中から、新規の求人募集の条件に一致する人物を見つける
オンボーディング
オンボーディングモジュールには、次の機能が含まれる。
- 新入社員が入社時の必要事項を記入し各種書類にデジタル署名できるようにする
- 新入社員が入社日の前後にオンボーディング機能を利用できるようにする
- 組織図や新入社員向け動画といった、会社に関する追加情報を人事担当者が新入社員と共有できるようにする
パフォーマンス管理
パフォーマンス管理モジュールには、次の機能が含まれる。
- 他モジュールの機能にパフォーマンス管理データを適用できるようにする
- 従業員からのフィードバックフォームのカスタマイズを可能にする
- 一般社員と管理職が、パフォーマンスやキャリアプランについて話し合うミーティングを必要に応じて随時行うか、定められたスケジュールで行うかを決められるようにする
報酬
報酬モジュールでは、ユーザーは次のタスクを実行できる。
- 昇給やボーナス、ストックオプション、株式の付与に関する決定を下す
- 報酬を決定する際に、パフォーマンス管理における評価を盛り込む
- 昇給の提案に際して、従業員のパフォーマンス評価や市場の相場などのデータポイントを参照する
レポートおよび分析
レポートおよび分析モジュールには、次の機能が含まれる。
- 互いに異なるモジュールのデータをレポートにまとめる
- カスタムダッシュボードの作成と、デフォルトのダッシュボードの利用
- レポートとダッシュボードを構成し、それらを特定のユーザーに定期的に送る
従業員教育および能力開発
従業員教育および能力開発モジュールでは、ユーザーは次のことが行える。
- さまざまな研修コースのカリキュラムを組む
- サードパーティーベンダーのコンテンツを組み込む
- 記事や動画などのコンテンツを追加する
サクセッションプランニング
サクセッションプランニングを担うモジュールには、次の機能が含まれる。
- 現職以外の役職に見合うスキルや能力を持つ従業員を特定する
- 要職の後任者を見つける際、パフォーマンス関連のデータを取り入れる
- 従業員にキャリアプランニング用のツールを提供する
文書管理
文書管理モジュールには、次の機能が含まれる。
- 社内文書を全従業員と共有する
- 特定の文書へのアクセス許可を設定する
購買チームへのアドバイス
ベンダーを評価する際に何より重要なのは、導入候補の製品について競合製品と比べて優れている機能を特定するとともに、その製品が会社のニーズを満たせるか否かを見極めることだ。導入やライセンス取得にかかるコストも考慮しなければならない。
オールインワンのタレントマネジメントパッケージを評価する際には、購買チームは、ユーザーがモジュールの壁を越えてデータを利用できるかどうかも検討しなければならない。従業員のスキルに関するデータはパフォーマンス管理で従業員を評価する、欠員が出た役職の後任候補を社内で探す、能力開発のための研修を従業員に自動的に割り当てるといったような、さまざまな場面で役に立つはずだ。
一方、より特定の機能に特化したベンダーを評価する際には、購買チームは統合機能も考慮する必要がある。複数のシステム間でデータをやりとりできれば、ユーザーにとってのシステムの価値が向上するからだ。パフォーマンス管理データを報酬計画ツールへプッシュし、その後に報酬の変更点を会社のコアHRモジュールへ転送できれば、ユーザーにとって有用だろう。
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