JERAが進める「現場主導の業務改革」 RPA利用で4万時間を創出
エネルギー企業のJERAは身近な業務の改革を進め、年間4万時間の創出に成功した。「現場業務」最適化のためにJERAが選んだツールとは。
エネルギー企業のJERAが、デジタル技術を活用した業務改革の一環としてRPAを導入し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している。ユーザー主導の業務自動化を図った結果、年間約4万時間を創出したツールとは。
「現場業務」最適化のためにJERAが選んだツールは?
JERAは、東京電力と中部電力との包括的アライアンスに基づいて2015年に設立されたエネルギー会社だ。燃料の調達から発電、電力・ガスの卸販売までを手がけている。JERAによると、同社の発電電力量は国内全体の約3割を占める。燃料取扱量は世界最大級だという。
設立以来、JERAは段階的に事業統合を進め、既存火力発電事業は2019年4月までに統合を完了した。
JERAはDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環として「デジタル発電所」(DPP)の実現を目指す。発電所の全ての設備と働く人をデジタル技術でつなぎ、データに基づく業務最適化や予知保全(注1)を実施する取り組みだ。
同社は「デジタル発電所」実現に向けた一歩として身近な業務の効率化に取り組むこととし、RPAの導入を検討した。ICT部門だけでなく、現場部門のユーザーにとっての「開発しやすさ」を重視して同社が選んだツールは何か。
JERAは4製品から、最終的にUiPathの製品を選んだ。開発のしやすさの他に、安定性やガバナンス、既に導入しているSAPやMicrosoftの製品との親和性の高さ、公開されている技術情報が豊富なことを評価した。
米国や欧州、オーストラリア、ASEAN諸国の現地法人に横展開する可能性や、国内拠点の従業員の多国籍化を踏まえて、技術情報が他言語で公開されていることもJERAにとっては重要だった。
全社で約4万時間を創出
JERAはUiPathユーザーのための社内コミュニティーを立ち上げ、約800人が参加している。バックオフィスから発電所まで約90本のワークフローが稼働し、年間約4万時間の創出を見込む。登録者には発電現場の技術者の他、基礎からITスキルを身に付ける必要のある従業員もいる。まずはロボットの活用によってリテラシーを底上げし、業務フローの最適化を含む本格的なDXにつなげる考えだ。
(注1)設備や機器を24時間監視し、故障が起こる前に部品などの交換・修理を実施する保全方法。設備や機器の実際の状態を把握するための客観的な数値に基づいて、交換・修理の実施を判断する。同様に故障発生前にメンテナンスを実施する保全方法に「予防保全」があるが、予防保全は経験などを踏まえて策定された計画に従って実施する点が予知保全と異なる。
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