混乱が続くVMwareライセンス問題 Broadcomは悪印象をどう払拭する?
VMwareはポートフォリオを再評価し、「最小限の重要製品を単一で一貫したプラットフォームに集中させる」としている。買収に付きまとう不安定なイメージをどのように払拭していくのだろうか。
ソフトウェア企業のVMwareは2024年6月25日(現地時間、以下同)、自社のソフトウェアポートフォリオを合理化し、「VMware Cloud Foundation」(以下、VCF)のフルスタックオファリングと「vSphere」の仮想化環境に集中することを発表した。
VMwareの買収に付きまとう不安定なイメージを、グローバル本体はどのように払拭(ふっしょく)していくのだろうか。
VMwareの戦略転換の全貌
2024年6月20日のプレスブリーフィングにおいて、VMwareのブラシャント・シェノイ氏(VCF部門で製品マーケティングを担当するバイスプレジデント)は「VCFを最高のプライベートクラウドプラットフォームにすることに真に焦点を合わせた戦略の転換だ」と述べた。
発表の中で、VMwareは「こうした動きの一環として、VMwareの既存ソフトウェアの統合やエッジコンピュートの導入、ネットワーク構成の統合を容易にする機能強化、複数のプライベートクラウド・セキュリティアドオンを追加した」と述べた。
ポートフォリオの戦略転換は、VMwareが2023年11月に半導体メーカーのBroadcomに買収されて以来初めてとなる公式アップデートだ。この動きは、製品のバンドルや価格改訂、ライセンスの変更に関する企業の懸念を募らせるものだった。
VMwareは広く普及しているため、Broadcomが適用するわずかな変更であっても、その影響は大きい。2024年6月25日の発表では、VMwareの短期的な計画に関する不確実性が解消され、大きな変化が強調された。
シェノイ氏によると、ポートフォリオの再評価と顧客との協議の期間を経て、VMwareはソリューション群と組織構造の簡素化を優先し、「必要最小限の製品」に焦点を絞るという。
シェノイ氏は、VMwareの以前の製品群について「168の異なる製品に加えてさまざまなバンドルおよびオファーがあり、9000の製品コードが乱立する状態だった」と説明した。
「以前の状態は、顧客に広い選択肢を与えていたが、正しい選択を理解するのは容易ではなかった。私たちの現在の仕事は、これらの製品の境界をなくし、見た目や使い心地、機能、動作において単一のプラットフォームにすることだ」(シェノイ氏)
シェノイ氏によると、ポートフォリオを合理化するため、VMwareは5つの事業部門を単一のユニットに統合し、「単一で一貫したプラットフォーム」の提供に集中できる環境を整えた。
この単一のユニットは、大企業向けプラットフォームVCFを優先するだけでなく、フルスタックのソリューションを必要としない小規模顧客向けにvSphereの仮想化環境をサポートする。
「私たちは、顧客が真に求めているものを提供できるように徹底して単純化した」(シェノイ氏)
シェノイ氏は「VMwareは永久ライセンスを段階的に廃止し、サブスクリプション型の価格設定に移行することを確認し、新しい課金モデルによってVCFのコストが半減し、1コア当たり年間350ドル〜700ドルになる」と付け加えた。
「これは、他の全てのインフラストラクチャ企業や企業向けソフトウェアベンダーがここ数年にわたって導入してきた業界標準であり、独立した企業だった頃のVMwareは、永続ライセンスで製品を提供していた最後の企業だった」(シェノイ氏)
ハイブリッドクラウドの相互運用性を促進するため、VMwareはハイパースケーラーとのパートナーシップを強化している。同社は2024年5月にMicrosoftとの統合を拡大し(注1)、VCFのライセンスをオンプレミスから「Microsoft Azure」に移行できるようにした。また、同社は2024年2月にGoogle Cloudとも同様の契約を締結している(注2)。
Broadcomのホック・タン氏(プレジデント兼CEO)は、2024年5月6日のブログ投稿で(注3)、「VMware Cloud on AWS」の統合が終了するといううわさを払拭しようとした。タン氏は「このプログラムは終了するものの、Amazon Web Services(以下、AWS)からVMware Cloud on AWSを購入したことのある顧客は、BroadcomまたはBroadcomの正規販売代理店と連携してサブスクリプションを更新し、環境を拡張できるようになる」と述べた。
タン氏によると、AWSからアクティブなサブスクリプションを購入した顧客は、契約期間が終了するまでAWSから請求書を受け取ることになるという。AWSへの移行は、VMwareの買収に付きまとう不安定なイメージを強調しており(注4)、VMwareはその払拭に努めている。
シェノイ氏によると、Broadcomによる買収が発表されてから18カ月の間に、VMwareの経営陣は、250社を超えるグローバル企業のCIO(最高情報責任者)やCFO(最高財務責任者)、CEOから意見を募ったとのことだ。
「フルスタックへの移行に関する顧客の懸念をよく理解している。私たちは、顧客と連携して段階的にアプローチし、IT部門だけでなくCFO部門にもその価値を示せるように努めている」(シェノイ氏)
出典:VMware doubles down on private cloud, pushes back against post-Broadcom flak(CIO Dive)
注1:Microsoft and Broadcom to Support License Portability for VMware Cloud Foundation on Azure VMware Solution(BROADCOM)
注2:Broadcom and Google Cloud Announce License Portability Support for VMware Cloud Foundation on Google Cloud VMware Engine(BROADCOM)
注3:VMware Cloud on AWS - here today, here tomorrow(BROADCOM)
注4:IT leaders chafe as VMware costs skyrocket under Broadcom(CIO Dive)
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