重要度高まるサプライチェーンマネジメント 6ステップに分けて詳細を解説
サプライチェーンを通じて製品が移動する各主要段階には、それぞれ独自のビジネスプロセスと規律がある。サプライチェーンマネジメント(SCM)を6つの段階に分けて解説する。
現代の製品は、これまでに構築された中で最も広範囲かつ複雑なシステムによって製造され、流通している。スーパーマーケットの棚を埋め尽くすパッケージ商品や農産物から、スマートフォンを動かす半導体チップ、新築用の木材、鉄鋼、コンクリートまで、サプライチェーンのグローバルネットワークが私たちにあらゆるものをもたらしている。
COVID-19のパンデミックという世界的な危機は、こうしたグローバルサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性と重要性を人々に認識させた。工場の操業停止、港湾の詰まり、船便の停滞から生じた混乱によって、サプライチェーンの知名度が高まり、多くの企業でサプライチェーンマネジメント(SCM)が最優先事項となった。これは、パンデミックの余波が残る現在においても同様だ。
サプライチェーンマネジメントの6ステップ
材料調達から生産、流通に至るまで、サプライチェーンを通じて製品が移動する各主要段階には、それぞれ独自のビジネスプロセスと規律がある。現在、大半のプロセスは専用のサプライチェーン管理ソフトウェアで処理されている。ここでは、SCMの内容を段階的に説明する。
1.需要計画
SCMのプロセスは、顧客がどのような製品を求めているかを把握することから始まる。これらの活動はサプライチェーンプランニングの初期段階で、サプライチェーンの実行と合わせてSCMの2つの包括的なカテゴリーを構成している。
サプライチェーンプランニングの最初のステップは需要計画だ。これは、過去の売上などのデータを収集し、分析と統計モデリングを適用して、販売部門と製造やマーケティングなどのオペレーション部門が合意できる予測を作成するプロセスだ。予測は、製造すべき製品の種類と数量を決定する。正しく予測することは、ブルウィップ効果(小売需要のわずかな変動がサプライチェーンのさらに上流で拡大し、在庫の大幅な不足や余剰につながること)のようなコストのかかる問題を回避するために重要だ。
一部の企業は、正式なプロセスの一環として需要計画を実施しており、これをセールス&オペレーションプランニング(S&OP)と呼ぶ。S&OPは、データを収集して需要計画と生産計画を策定し、両者を調整して経営陣の承認を得る反復プロセスだ。さらに、一部の企業はS&OPをより広範なプロセスである統合ビジネスプランニング(IBP)の一部に組み込み、これは異なる部門の計画を全社的な計画に統合するものだ。
2.生産計画
次の主要ステップである生産計画では、需要計画で求められている製品をどこでどのように生産するかを具体的に決める。アドバンスド・プランニング・アンド・スケジューリング(APS、または最適化のAPO)と呼ばれるきめ細かなバリエーションは、生産に投入されるリソースを最適化し、需要の変化への対応力を高めようとするものだ。これは通常、専用のソフトウェアで自動化される。
3.資材所要量計画
資材所要量計画(MRP)は、1960年代にさかのぼるプロセスであり、ほとんどの製造業者が、製造工程で使用する十分な材料や部品(サブアセンブリなど)を確保するために使用している。これは、手元にある在庫を把握し、ギャップを特定し、残りの品目を購入または製造することを含む。MRPと生産計画の両方で中心となる文書は、部品表(BOM)であり、これは製品を製造するために必要な品目の包括的なリストだ。
MRPは、製造資源計画(MRP II)の一部なこともあり、MRPの概念を人事や財務など他の部門にまで広げている。MRPとMRP IIは、企業の主要なビジネスプロセスを統合するために設計された企業資源計画(ERP)の前身だ。クラウドERPの台頭により、サプライチェーンの参加者がインターネットを介してデータを共有することが容易になったため、ERPはSCMにおいて不可欠なものとなった。
4.在庫管理
在庫管理は、製造工場の原材料(MRPシステムで管理されることが多い)から、小売店の包装された商品に至るまで、適切な供給を、最小限の時間と資源の支出で確保するためのさまざまな手法や計算式で構成されている。
製造業者は、在庫管理に関するさまざまな問題に直面しており、その多くは、生産プロセスの各段階における在庫と需要計画の調整に関連している。例えば、MRPによって余剰在庫が発生することもあり、製造業者はMRPプロセスとすでに手元にある在庫を同期させなければならない。
5.調達
調達は、ソーシングとも呼ばれ、商品のサプライヤーを探し、その関係を管理し、商品を経済的に入手するプロセスだ。入札依頼の送信、注文書や請求書などの書類作成など、必要な全てのコミュニケーションも担う。サプライチェーン全てのポイントでどれだけの量が売買されるかを考えると、これはサプライチェーン管理の主要分野だ。サプライチェーンのほとんどのプレーヤー(サプライヤー、メーカー、販売店、小売業者)には、専任の調達スタッフがいる。
戦略的調達は、企業の統合された購買力を活用し、それをビジネス目標に合わせることで調達プロセスを最適化することを目的とした、より洗練されたタイプの調達だ。
一方、サプライヤーリレーションシップマネジメント(SRM)は、企業が成功に最も重要と考えるサプライヤーに焦点を当て、最適なパフォーマンスを促進しながらサプライヤーとの関係を体系的に強化することで、調達の問題に対処する。
6.物流
物流は、部品や原材料を製造業者や加工業者に配送することから、完成品を店舗や消費者に直接配送することまで、商品の輸送と保管を網羅している。さらに、製品のサービス、返品、リサイクルまでを網羅するリバースロジスティクスと呼ばれるプロセスも含まれる。在庫管理は、物流全体に織り込まれている。
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