人気のIT資格、給与アップにつながるIT資格は? 取得状況を大調査:IT資格の取得状況(2024年)/前編
IT資格の取得を通してスキルアップやキャリアアップを促進したいと考える人は多いだろう。読者調査を基に、IT資格の取得状況や、役に立ったシーン、給与アップや就転職で役立った資格を紹介する。
企業におけるDX推進や行政によるリスキリング施策の活性化もあり、資格取得に取り組む人は増加傾向だ。さまざまな学習コンテンツが充実し、教育訓練給付制度も整備されたことからも、IT資格の取得を通してスキルアップやキャリアアップを促進したいと考える人は多いだろう。
そこでキーマンズネットは、「IT資格の取得に関するアンケート調査」(期間:2024年11月8〜22日、回答件数:275)を実施した。前編となる本稿では、IT資格の取得状況や、役に立ったシーン、給与アップや就転職で役立った資格などを紹介する。
人気のIT資格トップ3と業界業種ごとの傾向
はじめにIT資格の保有状況を調査したところ「保有している」は72.4%となり、2021年62.9%、2022年65.9%、2023年70.4%と4年連続で増加傾向にあった。
業種別では、IT機器やソフトウェア開発、受託開発などの「IT関連業」で92.0%の保有率だったのに対し、商社やメディア、不動産といった「流通・サービス業全般」では59.1%と差がある他、教育、医療、官公庁や研究所を含めた「その他業種」では73.2%と高い保有率が明らかになった(図1)。
保有資格は「基本情報技術者」(48.0%)、「ITパスポート試験」(33.5%)、「応用情報技術者」(29.5%)が上位に続き、トップ10に国家試験が多数並ぶ点も含め、2023年12月実施の前回調査から大きな変化は見られなかった(図2)。一方、昨今注目されるAIやRPAといった資格はこれまで保有率がほぼ皆無であったが、「G検定」(7.0%)や「RPA技術者検定」(1.0%)がわずかではあるものの増加傾向にある点は興味深い。
業種別で傾向が違ったのは、セキュリティ分野での資格保有率だ。商社やメディア、不動産などの「流通・サービス業全般」や教育、医療、官公庁といった「その他業種」で「情報セキュリティマネジメント」の保有率が3〜4割ほどあるのに対し、IT機器やソフトウェア開発、受託開発を含む「IT関連業」では2割ほどにとどまり、代わりに「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」の保有率が高い。
一般的に情報セキュリティマネジメント試験はIT初心者〜中級者向け、情報処理安全確保支援士は上級者向けの傾向があることから、より高度な知識や技術が求められるIT関連業では、後者の資格を志す方が多いのだろう。また見方を変えれば「IT関連業以外」の業種であっても、初級〜中級レベルのセキュリティ知識が必要ともとれる。
約4割が「給与アップ」や「就転職」に役立てたIT資格
それでは、IT資格保有者は資格をどのように業務に生かしているのだろうか。調査の結果50.5%と過半数がIT資格を保有していて役立った経験があるとし、具体的には「給与が上がった」(16.0%)、「就職、転職に有利に働いた」(13.5%)、「入りたいプロジェクト、案件に参加できた」(10.5%)が続いた(図3)。
その他の意見でも「名刺記載による信用」や「ベンダーの対応が良くなった」「パートナー契約に役に立った」など社外取引に有効活用できたとの声や、「業務内容の判断の参考になった」や「企画書作成時に役に立った」「知らない用語などが減った」といった報告もあった。
関連して「自身の業務に最も貢献した資格」を聞いたところ、最多は「ITパスポート試験」(10.9%)で、次点に「基本情報技術者」(8.9%)や「応用情報技術者」(8.9%)、「ネットワークスペシャリスト」(8.9%)が続いた。
ベースとなるIT知識を身に着けるための「ITパスポート試験」はもちろん、ITエンジニアとしての基本知識が求められる「基本情報技術者試験」や戦略策定から要件定義まで広範囲の知識が必要な「応用情報技術者試験」など、昨今のIT人材需要に対し、包括的にIT知識と技能を獲得することが求められているようだ。
特に「給与が上がった」や「就職、転職に有利に働いた」との回答率が約3〜4割と高い傾向にあったのは「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」(37.9%)や「ITサービスマネージャ試験」(33.3%)、「ネットワークスペシャリスト」(32.4%)や「データベーススペシャリスト」(27.3%)、「CISSP」(25.0%)であった。どれも合格率が20%以下の上級者向け試験であり、難易度は高いが保有していれば役に立つのだろう。資格によって各分野に特化した専門スキルや技能が証明されることが、評価やキャリアアップにつながるようだ。
資格取得を目指す動機とは 一般部門とIT部門で温度差も
資格取得の難しいところは、学習を続けても合格が約束されるわけではない点で、当然複数回チャレンジするケースもある。特に「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」(11.0%)や「ネットワークスペシャリスト」(11.0%)といった、該当領域での上級者向け試験であればなおさらだ。
部門別では、情報システム部門などのIT部門で「ネットワークスペシャリスト」(15.5%)や「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」(15.5%)はもちろん、「プロジェクトマネージャ試験」(7.2%)、「ITストラテジスト試験」(7.2%)といった専門スキルが求められ、合格率も10%前半の上級者向け試験に苦戦しているケースが多い。対して、一般部門では「基本情報技術者」(12.5%)や「応用情報技術者」(10.0%)などが挙げられた。
合格のために努力を続けるのはIT資格保有の必要性を感じているからだろう。取得するIT資格を選ぶ上で重視するポイントでは「実務に生かせられるかどうか」(70.0%)が最も多く、業務上必要になり取得に至るケースが多いと推測される(図4)。つまり「取得のしやすさ、難易度」(35.0%)や「汎用性の高い資格かどうか」(33.5%)とは大きな差が開いている。
しかし、部門別で見ると違った傾向がある。決定的に異なるのは「昇給や昇進など取得メリットがあるかどうか」や「就職、転職に役に立つかどうか」でIT資格の取得判断をするか否かだ。
「昇給や昇進」を動機とする割合を見ると、IT部門では38.1%であったのに対し一般部門では28.8%と9.3ポイントの差が、「就転職」を動機とする割合に至っては、IT部門が41.2%であったのに対し一般部門では21.3%と19.9ポイントもの差が生じていた。IT資格を取得することは、一般部門にとっては業務上必要であるからといった動機が多く、より上級者向けの資格を目指すIT部門にとっては、それ以外に昇給や昇進、就転職への有利さも強い動機となっている。
以上、前編ではIT資格の取得状況や活用シーン、取得に至った動機などを紹介した。後編では、今後取得したい人気のIT資格や、資格勉強に費やした時間や勉強方法、会社による支援制度の有無について、調査結果から実態を紹介する。
なお、回答者の内訳は「情報システム部門」(40.5%)、「製造・生産部門」(12.0%)、「総務・人事部門」(8%)、「営業・販売部門」(6.9%)、「経営者・経営部門」(5.1%)、「経営企画部門」(4.4%)、「営業企画・販売促進部門」(3.3%)、「マーケティング部門」(2.2%)、「資材・購買部門」(1.5%)、「財務・会計・経理部門」(1.5%)、「広報・IR部門」(0.4%)、「その他」(14.5%)であった。
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