ChatGPT以外で活用が進んでいる生成AIは? 主要12サービスの利用割合を比較【読者調査】:生成AIの活用意向と課題(2025年)/前編
日常生活だけでなくビジネスでも活用が進みつつある生成AIサービス。キーマンズネットが実施した「生成AIの活用意向と課題」に関するアンケートを基に、関心度や利用しているサービス、利用用途など、主にビジネスシーンにおける生成AIサービスの利用実態を紹介する。
日常生活だけでなくビジネスでも活用が進みつつある生成AIサービス。IDC Japanが2024年11月に発表した「国内生成AI市場 ユースケーストップ5予測(2023年〜2028年)」によると、国内生成AI市場は2024年に1016億円に達し、2023年〜2028年のCAGRは84.4%で成長する見込みだ。2028年には8028億円になると予測されている。
キーマンズネットは「生成AIの活用意向と課題」に関するアンケートを実施した(実施期間:2025年1月14日〜2月3日、回答件数:237件)。本稿では調査結果を基に、関心度や利用しているサービス、利用用途など、主にビジネスシーンにおける生成AIサービスの利用実態を紹介する。
過半数が「利用」の生成AI 実はいるDeepSeek業務利用者
はじめに、生成AIの業務利用への関心度を調査したところ「大変関心がある」(46.0%)と「やや関心がある」(38.4%)を合わせると、全体の84.4%が関心を示す結果となった(図1-1)。特に中堅・大企業帯(従業員数501人以上)では約9割が関心を持っていたが、100人以下の中小企業でも70.7%が「関心がある」とし、企業規模を問わず注目される技術・サービスであることが見て取れた。
当然、利用企業も増加傾向にある。勤務先で「ChatGPT」などの生成AIサービス、もしくは生成AIを取り入れた製品を利用しているかを聞くと「利用している」が38.4%、「試験利用中」が17.3%となり、利用を進めている割合は55.7%と半数を超えた(図1-2)。この結果を2024年6月に実施した前回調査と比較すると「利用している」が11.9ポイント、「試験利用中」が0.9ポイントとそれぞれ増加し、生成AIを利用する企業は着実に増えている。
ちなみに前回比較から、業務での利用が進んだのは従業員数101〜500人の企業で19.8ポイント増、501人〜1000人の企業で18.5ポイント増。前回調査(2024年6月)と前々回調査(2023年6月)を比較すると、5000人以上の大企業帯で利用が急増していたことから、規模の大きな企業から順に利用が進んでいる様子だ。今後は中堅・中小企業の利用動向に注目したい。
12の主要生成AIサービス、企業が一番利用しているのはどれ?
続いて、生成AIサービスを「利用している」「試験利用中」とした方に対し、12種類の主要生成AIサービスの中から勤務先で利用している生成AIサービスを尋ねた結果を以下の図にまとめた(選択式、複数回答可)。
「ChatGPT」(72.3%)が最多で、「Copiot for Micrsooft 365」(49.4%)、「Gemini(旧Google Bard)」(30.7%)、「Bing」(15.1%)と続いた(図2)。
依然としてChatGPTが利用割合が高いものの、前回比較では0.7ポイントと微減。代わりにCopiot for Micrsooft 365が9.7ポイント増、Gemini(旧Google Bard)が9.3ポイント増だった。「Microsoft 365」や「Google Workspace」といったオフィススイートの企業導入も年々進んでいることから、連携に強みを持つ生成AIサービスも同様に利用が進んでいるのだろう。
他にもフリーコメントでは「Perplexity」や「DeepSeek」「tsuzumi」などの回答もあった。DeepSeekについては、アメリカ議会下院の議員が政府所有端末での利用を禁止する法案を提出したり、平デジタル相が「データ保護の観点で懸念が払拭(ふっしょく)されるまでは公務員が使うのは控えるか、使うのであれば留意すべきだ」と発言するなど、その脆弱(ぜいじゃく)性について各国で議論が交わされているさなかでもあるため、利用時は注意が必要だ。
文書「作成」「要約」用途だけじゃない! 一歩踏み込んだ活用へ
最後に、企業で生成AIサービスはどのように利用されているのか、または利用予定なのか。実態をみていこう。
まず、現在生成AIサービスを「利用している」方の用途としては「ドキュメント作成」(64.8%)、「調査、情報収集」(58.4%)、「ドキュメントの要約」(61.6%)、「アイデア出し」(51.2%)と続いた(図3-1)。
前回比較では情報収集やアイデア出しといった“壁打ち相手”としての利用から、ドキュメントの作成や要約、文章の添削や校正など“実行補助役”としての利用が増えており、より業務に近いシーンで使われるようになっている。生成AIの利用方法が浸透し始め、現場の業務に馴染んできている結果ともいえるだろう。
次に「利用検討中」に聞いた想定用途だが、こちらもおおむねね同傾向であった。ただし「社内外の問い合わせ」との回答が「利用している」と比べ9.9ポイント増と顕著に高い割合を示した点は興味深い結果だ。昨今では「AIエージェント」と呼ばれる、AI技術やデバイスを複数組み合わせることでより複雑なタスクを自動化する技術も出てきており、主にチャットbotやスマートスピーカーとしてカスタマーサポートなどのシーンで活用されている。
顧客対応は問い合わせ対応コストはもちろん顧客満足に直結する業務でもあり、コスト削減と満足度向上を果たすためにも、新たなAI技術を積極的に活用しようと考える企業も少なくないようだ。
実際、全体に対し「興味がある生成AI関連技術」を聞いたところ、「AIエージェント」(59.1%)や「RAG(検索拡張生成)」(47.7%)が上位に続き、検索人工知能や生成AIを複数組み合わせた高精度AIサービスに関心が寄せられている(図3-3)。中国に拠点を置く生成AI開発企業のDeepSeekは2025年1月20日に最新の大規模言語モデル(LLM)である「DeepSeek-R1」を、2025年2月2日にはOpenAI社が新たなリサーチ機能「Deep Research」を発表するなど、AI技術は信じられないスピードで進化している。現在はドキュメント作成や要約、パーソナルアシスタントとして利用されることが多いが、技術進歩によって業務適用範囲は今後も広がると予測される。企業事例などにアンテナを立てておき、自社課題解消の一手としてAIサービスも検討してみてほしい。
以上、前編では企業における生成AIサービスの利用実態を取り上げた。後編でも引き続き、生成AIサービス利用時の失敗例や品質評価など、企業の声を中心に紹介する。
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