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なぜ情シスはキャパオーバーなのに外注しないのか? 「ITアウトソーシング」活用ガイドIT導入完全ガイド(3/3 ページ)

情報システム部門の業務負荷が増大する中、その解決策の一つとなるのがIT系アウトソーシングサービスだ。AIの活用範囲が広がる中で、これらの事業者に委託していた業務をAIに置き換えることはできるのか。

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IT系BPOサービス導入・運用のポイント

 適切な事業者を選定した後、導入・運用段階で押さえるべきポイントは何か。

 実際の導入前に、現状把握のためのアセスメントサービスを活用することも選択肢の一つだ。

 業務プロセスの棚卸しから課題抽出、最適な外注範囲の提案まで客観的な視点で整理してもらえる。「アセスメントのみの利用も可能で、投資判断の材料として活用できる。こうしたサービスは多くの事業者が提供している」(日立システムズ)

 実際の導入時には要件定義が重要になる。「委託範囲の詳細な合意が成功の鍵となる。運用開始後に想定外の業務が発覚し、その扱いを巡って計画が変更された結果、『期待した効果が得られなかった』と感じる企業もある」(日立システムズ)。細かい業務要件まで事前に洗い出すことは困難だが、想定外業務への対処方法をあらかじめ合意しておきたい。

 また、スモールスタートで始めることもポイントだ。「DAY1から100%を目指さない。ある程度は最初に作り込むが、運用しながら課題やニーズに対応していくアジャイル的な進め方をお勧めする」(ジョーシス)

 業務種別によって、最適なスタートラインは異なると日立システムズは説明する。ヘルプデスク業務ならまずは電話対応業務から委託し、電話対応から解放されることで重要なコア業務に集中できる環境が整う。データセンター運用であれば監視・インシデント検知が最もスモールな委託範囲だ。「そこで効果を実感してから段階的に委託範囲を拡大していける」(日立システムズ)

 導入効果を客観的に把握するためには、適切なKPIの設定と定期的な効果測定、そしてサービス事業者との間での目指すべきゴールの共有が欠かせない。「導入後のイメージをすり合わせてゴールを設定し、運用に入った後には数値化、KPIを決める。委託した範囲が確実に遂行され、本来業務に注力できる時間が創出されたことを実感することがまずはゴールになる」(日立システムズ)

サービス事業者との定期的なコミュニケーションが成功の鍵

 実際の運用が始まってからは、サービス事業者との定期的なコミュニケーションが成功の鍵となる。

 日立システムズは、ヘルプデスク代行サービスの場合、顧客企業との間で毎月1回の報告会を開催しているという。顔の見える関係を構築することで、急な依頼やインシデント発生時も円滑に対応が進むというメリットがある。「工数やコストがかかったとしても、定期的なコミュニケーションの場を要件に盛り込んだ方がいい」(日立システムズ)

 さらに、一度導入して終わりではなく、継続的な改善を図ることが重要だ。ジョーシスも「双方のコミュニケーションが大事だ」と強調する。「(一方的にサービスを委託するのではなく、委託した業務がスムーズに遂行される環境を)一緒に作っていくことが重要だ」(ジョーシス)

 IT系BPOサービス導入の最大の障壁となるのが、経営層の理解不足にあるケースは多い。その背景には、情報システム部門が抱える業務の負担感が経営層に正しく伝わっていないという課題がある。

 ジョーシスは「IT戦略立案といったコア業務に取り組む時間を増やすことを『緊急性は低いが重要性の高いアジェンダ』として、経営層に認識してもらうことが重要だ」と指摘する。情報システム部門をコストセンターではなく、企業の競争力を左右する戦略的部門として定義しなおすことで、IT系BPOサービスの利用価値は大きく変わる。

 自社の課題を整理し、適切な事業者選定と段階的な導入により、IT系BPOサービスを企業の競争力向上に活用していきたい。

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