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「脱VMWare」「続VMware」で笑った企業、泣いた企業 読者の“ホンネ”【調査】VMwareに関するアンケート(2025年)/後編

多くの企業がIT基盤の見直しを迫られたVMwareのライセンス体系変更から約1年。VMware環境から他社製品で構成された環境に移行する際の課題は何か。また、この間の混乱を振り返って読者が明かす本音とは。

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 BroadcomによるVMwareの買収により、2024年2月から新たなライセンス体系となったVMware製品。IT基盤の見直しを迫られる中で、企業はどのような課題を抱え、どのような選択をしたのか。

 キーマンズネットが実施した調査「VMwareに関するアンケート(2025年)」(実施期間:2025年5月16日〜6月6日、回答件数:173件)の結果を基に、満足度を前編では、VMware製品を使い続ける「続VMware」と、他社製品に移行する「続VMware」のどちらがより多く選ばれたかを明らかにした。

 後編となる本稿では、VMware環境から他社環境への移行時の課題や移行後の満足度、そしてVMwareのライセンス体系変更によるこの間の混乱について、読者の声を交えながら振り返る。

VMwareと比べてどう? 「脱VMware」派の満足度

 VMware製品から「他社製品に移行した(全ての環境)」「一部はVMwareの新ライセンスに移行したが、それ以外は他社製品に移行した」と回答した回答者を対象に、移行前後の満足度を5段階評価で尋ねた。その結果をまとめたものが以下の円グラフだ。

他社製品に移行した回答者によるVMware製品(移行前)移行前の評価(左)と、他社製品(移行後)への評価(右)
他社製品に移行した回答者によるVMware製品(移行前)移行前の評価(左)と、他社製品(移行後)への評価(右)

 回答者数が少ないため参考程度だが、他社製品移行後の評価は、中央値である「3」が12ポイント増えた。やや不満であることを示す「2」は8ポイント減少、やや満足であることをを示す「4」は4ポイント減少した(図1-1,図1-2)。前編で触れたように、VMware製品のライセンス変更前後に関する満足度を尋ねたところ、不満を示す「1」が変更前の約8倍に増えたのと比べると、他社製品への移行についてはまずますの評価をしていると見てよいだろう。

 評価の理由をフリーコメントで尋ねたところ、「移行しても操作性にあまり差異がない」「それほど大きな違いを感じない」といった、操作性や使い勝手に大きな差異がなかったことを評価する声が多く寄せられた。特にVMware製品からの移行例が多い「Microsoft Hyper-V」については「情報も多くとてもスムーズ」との声が寄せられ、「移行後も特に問題なく利用できている」や「特に問題なく使えた」ことで“満足”と評価する回答者が多いようだ。

環境移行で懸念されるトラブル

 ITインフラのトラブルはITシステムだけでなく事業にも大きな影響を与える可能性があるため、移行には慎重な姿勢が求められる。

 VMware環境から別の環境への移行に当たって発生した、もしくは発生が懸念されるトラブルについて聞いたところ、「移行スキル、ノウハウの不足」(44.5%)、「運用スキル、ノウハウの不足」(41.0%)という回答が他の選択肢に約20ポイントの差を付けて多くの票を集めた(複数回答可)。

 「アプリケーション互換性検証などの移行工数やコスト」(22.5%)、「障害発生時のサポート体制への不安」(22.0%)、「データの消失、破損などのトラブル」(21.4%)が続く。一方で、「特にトラブルは起きなかった(トラブルは起きないと考えている)」という回答も23.1%と一定数の回答を得た。

他社環境への移行で懸念されるトラブル
他社環境への移行で懸念されるトラブル

 移行に関する懸念について、VMware環境を使い続けている企業と、実際に別の環境に移行した企業の差はあるのだろうか。

 「VMwareの新ライセンスに移行した(全ての環境)」や「VMwareの無償版(ESXi)に移行した(全ての環境)」など、何らかの形で現在VMware製品を全ての環境で利用している回答者は「移行スキル、ノウハウの不足」や「データの消失、破損などのトラブル」との回答が全体より10ポイント以上高い(複数回答可)。

 他社製品に全ての環境を移行した回答者自体が少ないため、あくまで参考程度だが、移行への懸念項目の中で「移行スキル、ノウハウの不足」は回答者全体よりも10ポイント以上低かった一方で、「アプリケーション互換性検証などの移行工数やコスト」が15ポイント以上高かった。VMware環境から別環境への移行では、移行先の仕様確認から方式検討、移行作業や運用設計といった工数増加に加え、障害対応も想定したコスト負荷が大きな懸念となっていることが分かった。

VMwareライセンス体系の変更に関する「3つの本音」

 最後にVMware製品のライセンス体系や製品ラインアップの変更で生じた困りごとを尋ねたところ、次のようなコメントが寄せられた。

1. 価格高騰の影響

 1つ目は、ライセンス体系変更で生じた価格高騰の影響だ。「異常に価格が上がった」「ライセンス購入が複雑化している点とライセンス費用の高額化が止まらない点」など「利用料金の上昇」により、「予算が確保できない」との声も聞かれた。

 現在、VMware製品を利用している企業の中にも、「VMwareを費用面で継続できない」「これ以上、コスト増とならないように弊社内でも調整、対応が必要と考えている」「ライセンス体系変更前に導入したので予算編成は従来通りだが、次回更新に悩む」といった、価格高騰を理由に変更を検討しているとの声がある。

 ちなみに、2025年4月から無償版の提供が再開された「VMware ESXi」については、「使い続ける」とする回答者が一定数いるが、「無償版に乗り換えたので、ミッションクリティカルな処理でのサポートに不安」いった、サポート面での不安も大きいようだ。

2. 移行コストへの悩み

 2つ目は移行コストに対する悩みだ。「サービスを継続利用する計画だったが、利用料が高騰したため計画変更を強いられた」「今後のライセンス料の見通しが立たなくなったため、他製品に乗り換えるかどうかの検討が必要となった」「クラウドの開発環境がVMwareベースだったので、移行に手間取っている」など、環境の見直しを余儀なくされた企業では計画変更や検討が発生したことへの戸惑いや、予期していなかった移行によって作業の手間や費用が発生したとの声が多く聞かれた。

 VMwareが仮想環境のデファクトスタンダードだった時代が長かったため、「VMwareから離れて他社製品への移行を考えているが、コンバートをどのようにすればいいのかが不明」「新しい環境を長期にわたり検討しなければいけなくなった」といった、想定外に発生したインフラ基盤見直しへの不安を感じさせるコメントも多かった。

3. ベンダーへの苛立ち、不信感

 3つ目はユーザーにとって唐突と感じられるタイミングでライセンス体系や製品ラインアップの変更を実施したベンダーへの苛立ちや不満を感じさせるものだ。

 「一方的に値上げした」「パートナーシップ契約を含めた度重なるルール変更とコスト上昇」などに対して不信感を示すコメントが多く寄せられた。「見積もりが遅い」「とにかく情報開示が遅く、対応が遅れた印象」といった、変更に伴う対応への不満を漏らす声もあった。

「Nutanixも値上げしており、選択肢が乏しい。独占、寡占状態での振る舞いをまざまざと見せつけられた」と仮想環境の選択肢が少ないことで、ユーザーが不利益を被っていると指摘する声もあった。「もう使うことはないので困ることもない」といった“捨て台詞”を残す回答者もいた。

 ここまで2024年2月から新たなライセンス体系となったVMware製品の利用状況を紹介した。インフラ基盤という「土台」を支えてきた製品に大きな変更が発生したことで、多くの企業がインフラ基盤の見直しを迫られ、IT投資予算や計画が影響を受けたことが分かった。

 中には、「従来のライセンス体系が変わったことでVMWareに関する事業がなくなり、勤め先を変えざるを得なくなった」といった、人生への影響を感じさせるコメントを寄せた回答者もいた。

 ここまで前後編にわたってVMwareのライセンス体系変更後に企業が選んだ方針と現在の環境に対する満足度を見てきた。安定性や継続性が重視されるIT基盤の見直しは、どの規模の企業にとっても大きな痛みを伴う。IT予算へのインパクトだけでなく、システムアーキテクチャへの影響も大きいため、まだ今後のIT基盤を決められていない企業の割合が高いことも分かった。

 IT基盤をいかに選ぶべきかという課題に対し、ヒントになる情報を今後も発信したい。

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