三井物産、生成AIとPower Platformの連携で年間約2000時間の削減を見込む
三井物産ロジスティクス戦略部が、「Microsoft 365 Copilot」を単なる検索や文章生成にとどめず、実業務のプロセス自動化へと踏み出した。アルティウスリンクの支援の下、難解な貿易書類のデータ化からシステム入力までを自動化し、2026年3月期には年間1985時間の工数を削減する予定だ。
アルティウスリンクは2026年3月23日、三井物産のロジスティクス戦略部における生成AI(人工知能)活用の高度化およびDX(デジタルトランスフォーメーション)人材育成の支援事例を公開した。「Microsoft 365 Copilot」(以下、Copilot)と「Power Platform」を組み合わせた業務自動化によって、2026年3月期には年間1985時間の業務工数削減が見込まれている。
生成AIを単なる「検索」で終わらせない
三井物産では全社的にCopilotの導入が進んでいたが、同社のロジスティクス戦略部には「検索アシスタントとしてテキスト回答を得るだけではなく、回答をそのまま業務フローに連動させたい」という課題を抱えていた。特に、人手に頼っていた「多岐にわたる項目の貿易関係書類の読み取り」と「業務システムへの入力」といった、複数の工程が絡む複雑なルーティンワークの効率化が急務となっていた。
同社のグループ企業で、Microsoft製品に詳しいアルティウスリンクに相談したところ、特に要望の強かった業務については、Copilotだけでは対応が難しいことが分かったという。そこでアルティウスリンクが提案したのが、CopilotやAI Builderの「思考」にPower Platformの「手足」を授けるという手法だ。
具体的には、Copilot単体では困難な「実作業の実行」を補完するため、Microsoftのローコードツール群を組み合わせた以下のような自動化スキームを構築した。
AI Builderによる「貿易書類の構造化」
PDFファイルがフォルダへ格納されると「Power Automate」が起動。「AI Builder」が書類内容をAI(OCR)で読み取り、項目抽出から業務システムへの自動登録までを完結させる。
「Power Apps」による「人の目によるチェック工程」
全てをAI任せにするのではなく、あえてPower Appsによる確認画面を介在させた。ユーザーによる修正や承認ができる仕組みを組み込み、正確性とガバナンスを確保した。
Power BIによる「投資対効果の測定」
ツールの利用回数や削減時間をリアルタイムでグラフ化。導入効果を定量的に示すことで、現場の定着化と次なる改善へのデータ活用を促進する。
内製化を促進する伴走型支援が重要
こうした自動化の仕組みは画期的なものではあるが、それだけでは不十分だ。現場にそれをメンテナンスし、改善し続けるスキルがなければDXは実現しない。そこで三井物産は「自走できる組織作り」に重点を置き、毎週の育成支援、1on1形式での個別フォローの他、勉強会やハンズオン研修、ワークショップ型研修などを実施した。その結果、部内のメンバー4人がCopilotやPower Platformを使いこなすDX人材へと成長。現在では複数案件の並行開発が進むなど、現場主導の内製化体制が整いつつあるという。
三井物産ロジスティクス戦略部は、今後はよりインパクトの大きい案件へと対象をシフトし、「バイブコーディング」(Vibe Coding)や「ファインチューニング」のような高度な開発にもに挑戦したい、としている。
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