Windows 10サポート終了は何を残したのか 過去記事から振り返る企業のつまずき方
連載「キーマンズネット編集部 温故知新」は、キーマンズネット編集部が過去に掲載した記事を振り返り、今だからこそ見えてくる論点や教訓を整理するまとめ企画だ。今回のテーマは「Windows 10のサポート終了」だ。
「Windows 10」のサポートは2025年10月14日に終了した。移行が無事終わって一安心という企業もあれば、移行に手間取り、最後まで対応に苦労した企業もあったはずだ。同じ終了日が見えていたのに、なぜ差がついたのか。キーマンズネットの過去記事から、Windows 10対応で企業がどこで苦労したのかを振り返りながら、そこから何を学ぶべきかを考える。
移行遅れは、一部の企業だけの問題ではなかった
まず押さえておきたいのは、Windows 10への移行が遅れた企業は、決して少数派ではなかったということだ。2024年7月の記事では、Windows 10のサービス終了時点でも回答者のうち過半数がWindows 10を使い続ける見込みだと伝えていた。さらに2025年1月の記事では、Windows 11への移行が全社で完了した企業は約2割だったと報じている。つまり、Windows 10対応は「遅れた一部企業の話」ではなく、多くの企業が重さを感じていたテーマだった。
ここで見えてくるのは、サポート終了の認知不足が主因だったわけではない、ということだ。終了時期は広く知られていた。それでも動き切れない企業が多かったのは、期限を知っていることと、実際に全社で端末を切り替えられることが別問題だったからだ。
企業を止まらせたのは、OSの話より「更改案件の重さ」だった
2024年11月の記事によると、移行のメリットを感じにくいことに加え、「メーカーのセールや政府の補助金がサポート終了直前に出るのではないか」との期待から、終了間際まで移行を見送る企業があると解説されている。ここで重要なのは、「新OSに魅力を感じない企業がある」という表面的な話ではなく、Windows 11対応が多くの企業にとって、単なるアップデートではなく重い更改案件として受け止められていたことだ。
OSを入れ替えるだけならまだしも、端末の入れ替えや利用部門との調整、周辺機器や関連アプリケーションの検証、予算の確保まで絡んでくるとなれば、情シスだけで完結する話ではない。しかも、売り上げに直結するわけではないため、どうしても優先順位を上げにくい。
こうした状況の中、Windows 10対応で明暗が分かれた理由は何か。過去記事を踏まえて編集部が整理すると、苦労しやすい傾向にあった企業には以下の3つの共通点がある。
- 端末をいつまで使う前提なのかが曖昧(あいまい)なまま運用されている
- 業務アプリケーションや周辺機器との依存関係が、更新段階まで調査されていない
- 導入メリットが見えにくく、必要性は分かっていても後回しになっていた
言い換えれば、Windows 10対応で問題になったのは、環境変更が必要になったときに、どこが重荷になるのかを事前に見える形にできていなかったことだ。
「完璧な計画」より「違いを見えるようにすること」
では、サポート終了後の今、Windows 10端末が残っている企業は何を考えるべきか。ここで大切なのは、残存端末をひとくくりにしないことだ。なぜなら、移行していない背景は端末ごとで異なるからだ。
例えば、「更改計画が間に合わず残っている端末(更改の順番待ちの端末)」「業務アプリケーションや機器の都合で現状維持にしている端末」「明確な理由がないまま慣性で残っている端末」などの全てをまとめてしまうのは乱暴だろう。この違いを見ないまま「残っているから危ない」「早く切り替えるべきだ」と言っても、現場では動きにくい。逆に言えば、今の実務で必要なのは、残っている端末の台数だけでなく、なぜ残っているのかを分けて見ることだ。
とはいえ、大規模な更改計画をすぐに立てるのは難しい。まずは、例外的に残っている端末を洗い出すことから始めるとよいだろう。ここで見たいのは、部門や用途、依存しているアプリケーションと機器、そしてその端末を今も必要としている理由だ。そこが見えれば、少なくとも「何が同じで、何が違うか」が分かる。
もう一つは、更改の対象や当面維持する対象、廃止候補をざっくりでも分けてみることだ。ここで重要なのは、精緻な計画を最初から作ることではない。全部を同じ重さで抱え込まず、どれが先に動かせるのか、どれは条件付きで残すしかないのかを分けることに意味がある。過去記事の傾向から見ても、企業が止まりやすかったのは、重さの違う端末が一緒くたになり、全部が動かなくなることだった。
今後の環境変化にもそのまま通じる
Windows 10対応を振り返る意味は、終わった案件の反省会をすることではない。働く場所や使う端末の多様化が進み、今後、現状から大きく使う環境が変わった場合や、仮に大きな更新要求が生じた場合にも、同じような詰まり方をしないための見方を得ることにある。
そのとき問われるのは、どの端末がどの業務に結び付いているのか、どれが平時の更改計画に乗っていて、どれが例外として残っているのかまで可視化できているかが重要になる。
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