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Windows 10を使い続ける“予算以外”の理由は? 【実態調査】7つのトピックス 2025

Windows 10のサポート終了まで1年を切るにもかかわらず、Windows 11への移行が全社で完了した企業は2割弱――。キーマンズネットが実施した読者調査から、企業のWindows 11移行計画やPCリプレース予定、AI PCの導入意向が明らかになった。

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 キーマンズネット編集部は2025年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「生成AI/データ分析」「コミュニケーション/コラボレーション」「IT人材」「VMware移行問題」「PC事情(AI PC/Windows 11)」「レガシーモダナイズ」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2024年10月25日〜12月6日、有効回答数427件)。

 第4回のテーマは「PC」だ。2025年10月に予定されている「Windows 10」のEOS(サポート終了)まで9カ月を切ったが、キーマンズネットが調査を実施した2024年12月時点で「全社がWindows 11に移行した」とする企業は2割を切っている。

 サポートが終了したOSを使い続けることは、セキュリティリスクを増大させる他、問題発生時にMicrosoftのサポートが受けられないこと、パフォーマンスの低下などさまざまなリスクにさらされる可能性が高いが、「移行予定がない」という回答にも一定の票が集まった。これらの企業がEOS後もWindows 10を利用し続ける理由とは何か。

サポート終了まで9カ月 Windows 11に移行しない理由は?

 まず2025年のPCリプレース計画を尋ねたところ、「一部のPCのリプレースを計画中」という回答が55.3%で最も多く、「全てのPCのリプレースを計画中」(6.8%)と合わせると、2025年にPCのリプレースを計画する企業は6割超であることが分かった。

図1 2025年のPCリプレース計画
図1 2025年のPCリプレース計画

 既に一部、あるいは全てのPCをリプレースしたため2025年はリプレースを見送るという回答は合計で10.1%、「リプレースする予定はない」を選んだ回答者は21.8%だった。

 PCのリプレース予定がある回答者にその理由を尋ねたところ、「Windows 11のインストール要件対応のため」という回答が59.2%で最も多く、「定期的なリプレースのスケジュールが予定されているため」(41.5%)という回答を上回った(複数回答可)。多くの企業がWindows 10のEOS対応のために定期的なリプレースの予定を繰り上げていることが分かる。

 一方で、Windows 10のEOSが2025年10月に迫る中、Windows 11移行が「全社で完了した」と回答した企業は16.9%にとどまっている。

 注目したいのは、「Windows 10のサポートが終了するまでは移行しない」(10.8%)といったギリギリまで粘る層や、「サポート終了後もWindows 11に移行する予定はない」(1.2%)という数は少ないが、EOS後もWindows 10の利用を継続する層だ。

 サポート終了間際のPCの需給ひっ迫などの混乱やトラブルを回避するために、MicrosoftやPCメーカーは時間に余裕を持ったOS移行を推奨している。その中で、まだ移行しないという選択をした理由は何か。

 「サポート終了後もWindows 11に移行する予定はない」、あるいは「Windows 10のサポート終了後も、Windows 11に移行する予定はない」という項目を選んだ回答者にその理由を尋ねたところ、最も多く選ばれたのは「対応PCへのリプレース予算がないため」(31.4%)という回答だった。(Windows 11の)「要件対応のためにPCをリプレースする必要があるため」(13.7%)と合わせると、45.1%がPCがWindows 11の要件を満たしていないために移行していないという事情を抱えていた(複数回答可)。

 他には、「アプリケーションの互換性調査が煩雑(はんざつ)なため」(29.4%)、「利用している業務システムが対応していない、または対応状況を調査中のため」(17.6%)、「利用中のPCでもパフォーマンスを維持できるか不安なため」(13.7%)といった、アプリケーションやシステムがWindows 11でも継続利用できるかどうかの調査が終わっていないという声や、Windows 11への移行によるPCのパフォーマンス低下を危惧する声もあった。「対応できる人材が不足、またはいないため」(23.5%)、「他業務で忙しく対応に時間が割けない」(19.6%)といった人材をはじめとするリソース不足にも一定の票が集まった。

 気になるのは、「急を要することではないため」(29.4%)、「移行メリットを感じないため」(23.5%)という項目がある程度の割合で選ばれていることだ。

 「Windows XP」や「Windows 7」がEOSを迎える際も、EOS後のOSを利用し続けるデメリットが長期間にわたってMicrosoftから呼び掛けられたが、EOS直前まで新OSへの移行を見合わせる企業も一部あった。その結果、特にXPのEOS時は、駆け込み需要でPCが一時的に品薄になるといった混乱も起きた。修正アップデートが実施されなくなった旧OSの脆弱(ぜいじゃく)性を狙う攻撃も枚挙にいとまがない。

 Window 11への移行を見合わせている企業はこれらを踏まえて計画を見直す必要があるだろう。

AI PCを利用している企業が挙げるメリットは?

 AIやML(機械学習)のタスクを効率的に実行するために設計されたPCである「AI PC」が次々に発売されている。

 生成AIをはじめとするAIの業務での活用が本格化する中、AI PCの導入状況や今後の導入意向、また実際に利用している企業が実感しているメリットは何か。

 まず、AI PCの認知度はどうだろうか。「名称、性能ともに知っている」は24.6%にとどまり、「名称は知っているが、性能は知らない」(43.6%)が最多、「名称は知らないが、存在は知っている」が11.7%を占めた。

図2 AI PCの認知度
図2 AI PCの認知度

 AI PCに関する認知が部分的なものにとどまっている層が現時点では大部分であることが判明した。

 導入済みの企業も2.1%にとどまっている。利用状況と今後の導入意向を尋ねた設問に対して最も多くの票が集まったのは「今は利用しておらず、導入する予定もない」(24.1%)という回答だった。

 では、AI PCが導入に至らない理由は何か。

 AI PCを利用するメリットを尋ねた設問に対し、「分からない」(36.8%)という回答が2番目に票を集めた。AI PC利用のメリットが認知されていない」ことも要因にあるようだ。

 「分からない」を選んだ回答者のうち、「今は利用しておらず、導入する予定もない」回答者は31.2%、「社内での認知度が低く、まだ検討していない」回答者は20.4%だった。

 「今は利用しておらず、導入する予定もない」を選択した回答者に絞ると、AI PCを利用するメリットが「分からない」という回答を選んだ割合は47.6%に上った。一方、「社内での認知度が低く、まだ検討していない」を選んだ回答者が同じ項目を選んだ割合は36.0%だった。「今は利用していないが、興味がある」を選んだ回答者のうち利用のメリットについて「分からない」を選んだのは12.8%にとどまる。AI PCに関する情報を得ることで、導入意向が高まる可能性がありそうだ。

AI PCユーザーが実感しているメリット

 AI PCを利用している回答者が実感しているメリットとは何か。AI PCを既に利用している回答者の数が少ないので参考程度だが、「処理速度向上による、AIを利用する業務の効率化、時間短縮」が最も多く、「AIの学習による、システムのパフォーマンス最適化」が続いた。

 ちなみに「処理速度向上による、AIを利用する業務の効率化、時間短縮」という回答は、「導入を検討中」「興味がある」といったAI PC導入に前向きな層にも6割前後選ばれている。他の選択肢に10ポイント以上の差を付けて選ばれていることから、AI PC導入に前向きな層は、AI PCに業務効率化や時間短縮を強く求めていることが分かる。

「高価過ぎる」のが最大のハードル

 逆にAI PCに関するデメリットとして最も多く上がったのが「従来型のPCに比べて高価」(51.5%)という項目だった。この項目を選んだ回答者の割合は、「分からない」という回答を除外すると2番目に多く選ばれた「使いこなすための専門知識を持つ人材が少ない、あるいはいない」(26.5%)という項目よりも20ポイント以上高かった。導入意向や従業員規模にかかわらず全ての層で最も多くの票を集めたことから、現時点での最大のネックといえるだろう。

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