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Excelの10万行データを3分でAIに処理させる、M365 Copilotの使い方

上司から突然「このデータを見ておいて」と任され、Excelを前に手が止まった経験がある人も多いはずだ。大量データの集計は負担が大きく、分析業務は特定の担当者に偏ってしまう。Copilotのチャットや関数機能は、その前提を変えつつある。

» 2026年06月23日 07時00分 公開
[平 行男キーマンズネット]

 中小企業向けにAI研修やAI導入支援を手掛けるカンマンの田中健介氏は、「Microsoft Excel」で「Microsoft 365 Copilot」を活用するデモを通じて、大量のデータやアンケートで得たユーザーの声を、業務で活用できる情報へ変換するプロセスを紹介した。まず、ExcelデータをCopilotで分析する方法について、主に3つのアプローチに整理した。

1.大量データを丸ごと読み込ませる「Copilot Chat分析」

2.Excelで対話しながら深掘りする「Copilot分析」

3.セル単位の処理を自動化する「Copilot関数活用」

 3つの手法はそれぞれ得意な処理が異なり、データの性質に応じて選ぶことが前提だと説明した。実演では、ある架空の家電量販店を題材に、売り上げ明細と営業日報、顧客の各アンケートという3種類のデータを順に扱い、手法の違いを示した。

10万行の売り上げデータから「売れた理由」を3分で読み解く

 最初の実演では、家電量販店の法人営業部を想定したダミーデータを用いた。商品カテゴリーや販売チャネル、数量、売り上げ金額などの項目を含む10万件の売り上げ明細のExcelファイルを、「Microsoft 365 Copilot Chat」に添付して分析させる。

 田中氏が強調したのは、最初から的確な指示文(プロンプト)を入力する必要はないという点だ。

まずは「このデータには何が入っていて、どんな分析ができるか」をAIに尋ねる。するとAIは、基本情報や販売条件、数値といった項目を整理したうえで、「何が、なぜ売れたのか」「誰が、どこで、いつ売れたのか」といった分析の切り口を提案してくる。

 その提案を踏まえ、今度は「営業会議で説明するためのレポートを作るにはどう指示すればいいか。そのまま使えるプロンプトを書いて」とCopilotに依頼する。返ってきたプロンプトをコピー&ペーストし、そのまま実行させるという二段構えだ。「どういうプロンプトを与えればAIが良い回答を返してくれるのかを、AI自身に考えてもらっています」と田中氏は説明する。

 10万件の処理には2〜3分を要する。出力されたレポートは、冒頭に要点をまとめたエグゼクティブサマリーが表示され、「売り上げの柱がPC本体で全体の約6割を占める」「売り上げを支えているのが【大企業・官公庁】と【自社直販・自社EC】」などを示していた。続けて、データ件数や総売り上げなどの全体集計、商品別の売れ筋ランキングの他、顧客区分や販売チャネル、地域、担当者別の売り上げ比率、キャンペーンや値引きの影響、売れた要因の仮説まで、詳細な分析結果を示した。

 さらに、次に取るべき施策の候補も提示された。「PC本体の上位5商品を重点商材として再定義する」「大企業案件の値引き管理を強化する」「PC本体にディスプレイや周辺機器をセットで提案する」といった内容で、会議でそのまま使える締めのコメントまで添えられていた。田中氏は、レポートで示された各種数値について、念のためExcelの関数で1円単位まで検算したところ、金額は全て一致したと述べた。

 ただし同氏は、「AIが出す数値は100%保証されているわけではありません。最後は人間がファクトチェックをしてから、資料やお客さまへの提案に使うことを意識してください」と注意を促した。

Copilot Chatに出力されたレポート(出典:セミナー時の実演画面)

営業日報と自由記述から改善のヒントを得る

 2つ目の実演は、同じ企業の営業担当が記した日報の分析だ。取引先の企業や官公庁を訪問して回る担当者が、日付や訪問先、販売した商品、短い活動内容や所感を書き込んだもので、全員分の約100件を1つのExcelにまとめたダミーデータが用意された。

 ここでは分析の入り口を変え、Excelの画面右下に表示されるCopilotのアイコンをクリックし、表示されるチャット欄に指示を出す方法を使った。田中氏が入力したのは、次のようなプロンプトだ。

次の営業日報の「所感」列を分析し、現場で繰り返し起きている課題を影響度の高い順に3つ挙げてください。各課題に、(1)代表的な記述の引用、(2)言及件数、(3)放置した場合のリスク、(4)明日から試せる対策、をセットで示してください。最後に、マネジャーが最初に手をつけるべき1つを理由つきで提案してください。

 出力結果では、「在庫切れや納期の問題」「競合や価格競争」「見積・発注書の事務負担」といった課題がその割合とともに示された。そして、最優先すべき課題として、在庫・納期への対応が挙げられ、週次の在庫チェックや会議の代替リストの作成、在庫管理部門との連携といった、翌日から着手できる施策まで提案された。田中氏は「1件ずつ目視で集計するとかなり時間がかかりますが、Copilotを使えば大幅に時間短縮できます」と述べた。

Excelに組み込まれたCopilotに表示された分析結果(出典:セミナー時の実演画面)

アンケート自由記述100件を、自動でカテゴリー分類

 3つ目の実演は、同じ企業が取引先に実施した顧客満足度アンケートの分析だ。回答日や顧客区分、5段階の満足度、自由記述のコメントを1つのExcelにまとめた100件分が題材で、ここでは「Microsoft 365 Copilot Business」など有償の追加ライセンスが必要なCopilot関数を使う。

 アンケート結果からどのような声が多いのかを把握したいとき、コメントを1件ずつ読んで仕分けるのは手間がかかる。そこでセルに、コメントを「価格」「納期・在庫」「品質」「サポート」「品ぞろえ」「システムや発注のしやすさ」「クレーム」の7つのいずれかに分類し、分類名だけを返すよう指示するCopilot関数(下記)を入力する。

=COPILOT("次の顧客コメントを、価格/納期・在庫/品質/サポート/品ぞろえ/システム・発注のしやすさ/クレームのいずれか1つに分類して。分類名だけ返して",E2)

 関数を入れると、Copilotが隣のセルのコメントを読み取り、該当するカテゴリーを書き込んでくれた。例えば、「まとめ買いの時に値引きがあると助かります」というコメントは「価格」に分類された。この関数を、ほかのExcel関数と同じ要領で下の行まで100件分コピーすると、数秒で全ての分類が終わった。

「コメント(E)」列の内容をCopilotが読み込み、「カテゴリー(F)」列に分類結果を入力した(出典:セミナー時の実演画面)

得意と不得意を見極める、Copilotの「使い分け」

 3つの実演に共通するのは、CopilotとExcelの機能を役割で使い分けるという考え方だ。田中氏は、Copilotが得意なのは「言葉にする」「分類する」「要約する」処理だと整理する。例として、大量データからの要点抽出、自由記述のカテゴリー分け、起きていることの言語化、似た意見の集約などがこれにあたる。今回の3実演でいえば、売り上げ分析が“何が起きたか”の言語化に、日報分析が似た課題の集約に、アンケート分析が自由記述の分類に、それぞれ対応する。

 反対に、「厳密な集計や計算」「事実の正確性」「最新情報の扱い」は苦手だという。田中氏は、AIが事実と異なる内容を生成するハルシネーションのリスクを挙げ、「厳密な計算はSUMやIFを使う方が確実です。最後は必ず人間が確認してください」と注意を促した。料金プランのような最新情報をそのまま信用しない姿勢も必要だとした。

 活用にあたっては契約プランの違いも押さえておきたい。今回の実演で使ったCopilot関数や、「Teams」連携、「SharePoint」の本格的な利用には、有料アドオンの契約が必要になる。一方、すでにExcelや「Microsoft Word」を使っている環境でも、利用回数などに一部制限はあるものの、Copilot Chatでの分析やExcel内のCopilotは試せる。田中氏は、まず試す段階であれば現在のプランでも十分だとした。

 最後に田中氏は、社内で取り組む際の手順を示した。まず、契約しているライセンスでCopilotが使えるかを確認する。次に、全社へ一気に広げるのではなく、1つの業務で小さく試す。プランによっては使えない機能もあるため、この最初の確認が出発点になる。そのうえで、効果のあった指示文を社内で共有していくという流れである。

 「いきなり自動化するのではなく、まず1つの業務を小さく試して効果を実感してください。うまくいったら、活用方法を社内で共有し、会社全体にAIを浸透させていくことが大事だと考えます」(田中氏)

法人でCopilotを活用する場合のプラン(出典:セミナー時の投影資料)

本稿は、2026年6月16日に開催されたオンラインセミナー「データ分析を任されたあなたが、10万行の売上データから『売れた理由』を3分で作れる」における田中健介氏(AI事業部 生成AIコンサルタント)の解説内容を基に、編集部で再構成した。

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