月間375時間を削減した人材コンサル企業の「泥臭いRPA導入」:イベントレポートアーカイブ(2/2 ページ)
企業の人材採用を支援するある人材コンサル企業は、採用事業のバックオフィス業務を効率化するためにRPAの導入を決意した。だが、現場からの要望はとてもRPAだけで解決できるものではない。これをどう乗り切ったか?
RPA導入は現場メンバーが主導
RPAの導入は現場のスタッフで編成したRPA推進チームが主導した。インフラ構築や開発サポート、障害対応など一部の作業についてはグループ会社であるレジェンダ・テクノロジーが担当したが、スケジュール策定や要件定義、開発など導入におけるほとんどの作業は、推進チームが主導した。
この点について「RPAの導入はHRテックの一部だが、カッコいいHRテックではなく現場主体の泥臭いHRテックを目指した」と林氏は話す。
まず、8月と10〜11月で2回に分けて現場へヒアリングし、現場の実態と要望を把握することから始めた。1回目のヒアリングでは、負荷が高い業務を現場へ聞き、RPA化する業務を絞り込み、2回目で対象業務の問題点を洗い出す。このヒアリング結果により、業務負荷が高いのは新卒採用支援業務の応募者管理であることが分かった。
現在の応募者管理のフローは、掲載する求人媒体から応募者データをダウンロードし、顧客企業別に採用管理システムへ取り込む作業が必要であった。応募者データの取り込みだけでも20?40ステップに分かれており、かつ正確なオペレーションが求められていた。さらに、応募者の二重登録を防ぐために重複チェックや応募者を分類するフラグ立てといった作業があり、現在はこれら全てを手作業で行っている。ピーク時の3月前後は業務量が急増するため、現場から強い改善要望があったという。ヒアリングによって、これらの業務を合理化する必要があると判断し、RPA化の要件となった。
RPAツールだけでは解決できない……これをどう解決した?
次に、ツールの選定フェーズに入った。ヒアリングを始める前の5月からRPAツールを試用し、ある程度作業時間を短縮できることは検証できていたが、ヒアリングからくみ取った複雑な要件をRPAだけで対応するのは限界があった。また、将来的には複数の採用案件を自動化し、バッチ処理も可能にしたいという考えもあったため、これらをRPAだけで実現するのは難しいと判断した。
そこで、数社のベンダーにRPAとデータ連携ツール組み合わせたソリューションの提案を求めたところ、安定性が高く、イレギュラー業務を含め広範な業務に対応できる汎用性があると評価されたのが、アシストが提供する「AEDAN自動化パック」であった。
AEDAN自動化パックは、RPA「ROBOWARE」に加えデータ連携ツール「DataSpider Servista」と業務判断を自動化するAIツール「Progress Corticon」を組み合わせた業務プロセスの自動化ソリューションである(図2)。
これにより、ROBOWAREが求人媒体からダウンロードした応募者データをDataSpiderが姓と名を結合、全角や半角を統一するなど応募者データを判断しやすいように加工する。そのデータをProgress Corticonが受け取り、複数の求人媒体からエントリーした同一人物かどうか、フラグが必要な応募者かどうかを判断する(図3)。そして、その判断結果をROBOWAREが受け取り、採用管理システムに登録する、といった一連の流れを全て自動化した。
RPAの導入により、このような複雑な処理を人の手を介すことなく全て自動化できる。さらに、夜間バッチを実行することで、スタッフが出勤時にはすでに重複チェック後の応募者データがすぐに利用できる状態になり、その後の作業もスムーズに取り掛かれる。
このようにRPAとデータ連携ソリューションを組み合わせることにより、通常1時間かかっていた作業を7〜8分にまで短縮できた。新卒採用支援業務全体で考えると、月間482時間かかっていた作業のうち約375時間を削減できたという。
レジェンダ・コーポレーションはこの成功を機に、今後さらにRPAの適用範囲を広げる考えだ。また、このノウハウを多くの企業での人事業務でも役立てると考え、今後、RPA導入サービスを新事業として展開する意向だ。
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