【事例】定例会の見直し方 ベックマン・コールターの加藤さんはどうやって会議を変えて会社を変えるか:消えた「資料作成で休日出勤」、見えてきた「ビジネスの課題」(1/3 ページ)
マネジメント業務の多くの時間を定例会議の準備に割かざるを得なかった組織を変えたのは何か。業界再編を機に経営手法を刷新した医療機器の専門企業が、現場を変えるために取り組んだのは、会議の改革だ。経営手法の変革と会議の関係は?
ほとんどの企業が業務効率向上を目的に多様なITツールを導入する。例えば営業部門なら営業支援ツール(SFA)、マーケティング部門ならマーケティングオートメーション(MA)ツールといった具合だ。それらは確かに便利ではあるが、一方でデータが部門ごとにバラバラに管理されてしまうという問題がある。一定のデジタル化を実現した企業に待ち受けるのは、部門の業務効率向上を目指したがゆえの情報の分断という厄介な問題だ。
事業を拡大したい、よりよい経営判断をしたいと考えた場合、この問題はいっそう大きな障害となる。成長途上の企業にとっては、全てを統合する大掛かりな投資は困難であるため、現場マネジャーを含む役職者らがExcelなどを使って手作業で集計するケースがほとんどだろう。理化学分析機器や医療機器などの製造および販売を手掛けるベックマン・コールターも、同様だった。
ベックマン・コールターの本社は米国にあり、世界130カ国以上で1万人以上の従業員が勤務。日本国内にも約600人の従業員を抱える他、静岡県にある製造工場「ベックマン・コールター・三島」では約300人が働く。
米国本社式の経営手法を導入
同社は2011年、米国に拠点を置く企業ダナハーに買収された。ダナハーはライフサイエンス、医療機器、デンタル機器、環境事業という4領域で企業を買収し、「ダナハー・ビジネス・システム(DBS)」と呼ばれる経営手法を導入して買収先の収益改善を目指す。
その経営理念には「KAIZEN IS OUR WAY OF LIFE(カイゼンは私たちの生き方そのもの)」という言葉が掲げられる。製造はもちろんマーケティングや営業、人事などの部門でも効率的な企業運営を進める。
ダナハーに買収されてからは、ベックマン・コールターにもDBSの導入が進められた。「その際にKPIを重視する取り組みが定着した」と、DBSによるカイゼン活動を各事業会社や拠点で推進する「DBSリーダー」としても活動する加藤 亮氏(ダイアグノスティックス 経営企画部部長)は語る。
「KPIを必要な頻度でモニタリングしていち早く問題点を見つけて解決する。それを地道に繰り返すことがパフォーマンスを高め、最終的に収益の改善につながるというDBSの考え方が企業風土に根付きました。部門のリーダーには会議などの場でKPIがどのような状況かを、データを基に分かりやすくまとめる作業が必須となりました」(加藤氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 【BI導入事例】2倍の受注に「2倍働く」以外の答えを作る――名古屋のものづくり企業が選んだ方法を取材した
製造工程が「ぶっ通しで20時間」もかかるエンジンを取り扱う三菱重工航空エンジン。受注が増える中でサプライヤー管理や品質管理、需要管理の工程を効率化した。IoTなどの未来志向の技術を、現場の効率化に還元する。何にどう効果があったのか。 - ガートナー調査:BI導入企業の割合と普及率の隔たりに見る、日本企業の現実
「世の中ではBIが普及しているようだが、私たちはさほど使っていない」。肌感覚で分かっていたことが調査でも明らかに。セルフサービス化して従業員皆でBIを使う、という世界はまだ遠いようだ。 - BIツールの導入状況(2019年)/前編
様々な経営指標を一意に可視化できるBIツール。定例の業務進捗報告などの無駄を解消するツールとして注目を集めたこともあるが、普及の状況はどうなっているだろう。調査ではいっこうに業務が楽にならない現場リーダーの苦悩が垣間見られる状況が明らかになった。