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Googleマーケティングプラットフォームとは? 無料で始めるデジタルマーケティングの基礎

無料で使えるGoogleのデジタルマーケティング支援ツールの種類や使い方、類似製品にはどんなものがある? デジタルマーケティングは限られたプロだけのものではなく、今日急に自社製品のデジタルマーケティング担当になった人のために基礎情報を整理します。

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 大手中堅といった企業規模を問わず、今や事業を推進する上でオンラインの商材訴求は必須といえます。とはいえWeb制作会社ではありませんし、オンラインマーケティング施策を事業に結び付けるミッションを抱える人は、1企業のなかにそう多くはないのではないでしょうか。

 筆者自身も、広告主として日々自社のWeb広告をチェックする立場にあります。しかし、元々Webマーケティングのプロではなく、いくつかの業務と並行して自社の商材をPRする施策を任される立場にありました。それでも広告主ですからさまざまな広告代理店とのやり取りや判断を任されます。そこで、自分自身がWebマーケティングについて「分かっていない」ことが多すぎて対等なお話ができていないと感じることが多かったのです。この状況を打破したのが、Webに特化したマーケティングプラットフォームです。

 本稿では特に筆者が利用するGoogle マーケティングプラットフォームの全容を紹介していきます。Webマーケティング施策のプロと関わる皆さんが、少しでも楽しく仕事に向き合えることを願っています。

統合マーケティングツールの今

 本稿ではここまでGoogleマーケティングプラットフォームを見ていきますが、まずはGoogle以外の統合マーケティングツールも知っておきましょう。ほんの数年前まで、マーケティング活動の一部を支援ツールが多数存在する状況が続いており、利用者側がデジタルマーケティングの知識を生かして各種ツールを組み合わせて利用するケースがほとんどでした。ところが、この数年でIIツールベンダーの大手企業が自社でマーケティングプラットフォームを提供するために、買収や製品開発を強化しつつある状況が目立ちます。例えば下記の企業はその代表例でしょう。

  • Salesforce「Marketing Cloud」
  • Oracle「Oracle Marketing Cloud」
  • SAP「SAP Marketing Cloud」
  • IBM「IBM Watson Campaign Automation」
  • Adobe「Adobe Experience Cloud」
  • Google「Google Marketing Platform」

 SalesforceのMarketing Cloudは、そもそもCRMの会社というだけあって、リードナーチャリング関連が得意分野です。ExactTargetを買収し、MAツールのPardotを手に入れています。OracleのMarketing Cloudは大企業向けのデータベースに強みをもったOracleのCRM製品を使う顧客基盤に対し、広告配信までを事業領域に加えてきました。オーディエンスのセグメンテーションを強化するために、世界最大規模のサードパーティーデータを抱えるBlueKAIの買収や、ソーシャルボタンを一括で設置できるAddThisを買収したりしているようにも見えます。

 SAPのMarketing Cloudは基幹システムを中心とした会社のプロダクトなこともあり、B2Bのマーケティングに強みを持っています。最近ではアンケート分析のユニコーン企業Qualiticsを買収し、ユーザー像を把握するところにも力を入れ始めていると考えらえれます。IBMのWatson Campaign Automationは、マーケティングプラットフォーム単体で勝負をするというよりは、Digital Strategyのコンサルティングの1つの武器として機能させようとしている可能性もあります。

 AdobeのExperience Cloudは、Adobeがそもそも画像や動画の編集ツールの会社であり、クリエイティブに強みを持っていましたが、2009年にWeb解析サービスSiteCatalystを持つOmnitureを買収したことにより、Webデザインの設計から効果分析、分析結果をデザインへ反映することができるようになりました。その後着々とマーケティング活動を包括的に扱えるようにプロダクトを拡充させ、最近ではMAツールのmarketoを買収したり、ECプラットフォームであるmagentoを買収することで、より幅広くユーザーエクスペリエンスを向上させ、より企業としてユーザーとサステイナブルな関係性でいれるような方向性を目指していると考えられます。

 このように最近ではITツールベンダー各社が、さまざまな分野に軸足を置きつつも徐々にデータドリブンなマーケティングを一社単独で展開できるように製品群を拡充していることが見て取れます。群雄割拠の情勢と言えるでしょう。

 この中でもGoogleのマーケティングプラットフォームは無料で始められるため、やや顧客層に違いがあるかもしれません。予算の心配をせずに小さく始めたいプロジェクトやWebマーケティングの「さわり」を理解する上で無料でトライできるGoogleは使い勝手の良いツールと言えるでしょう。次項からはGoogleマーケティングプラットフォームの全体像をみていきます。

Googleマーケティングプラットフォームとは

 Googleマーケティングプラットフォームは次の7つのプロダクトで構成されています。ここからはそれぞれの概要を確認し、それぞれがオンラインマーケティングのパフォーマンス最大化を目指すPDCAサイクルの中でどんな役割を担うのかを理解していきましょう。

「Tag Manager 360」

 「Tag Manager 360」はWebサイトのコード変更をすることなく、広告のトラッキングや、ユーザーの行動分析のためのコードなどを簡単に一元管理することができます。

「Surveys 360」

 「サーベイ/360」は読んで字のごとく、AndroidユーザーやGoogle アンケートモニターに対してアンケートをすることができます。プロモーションの事前調査や、ブランドリフト調査をすることができます。

「Display & Video 360」

 「Display & Video 360」は、広告配信のプラットフォームです。アナリティクスと連携することで、クリックして訪問した効果だけでなく、インプレッションのコンバージョン貢献度も可視化でき、正しい予算配分や評価で、ディスプレイ広告のROIを向上させます。

「Search Ads 360」

 「Search Ads 360」はディスプレイ&ビデオ360の検索連動版です。検索広告360は大規模な検索広告を出稿している企業が、キャンペーンを効率的に管理するためのプラットフォームです。高度な自動入札やレポーティングにより、検索広告のROIを向上させます。

「Optimize 360」

 「Optimize 360」はWebサイトをよりよいものにするためにA/Bテストや多変量テスト(MVT)など、最適なUXを探るための方法を提供しています。オプティマイズもアナリティクス同様に無償版と有償版があり、有償版では最大36個の多変量テストができるようになります。

「Analytics 360」

 「Analytics 360」はユーザー像を詳しく分析するために、ユーザーデータをいろいろな角度から見るツールです。無償のものは「Analytics」、有償版は「Analytics 360」と呼ばれます。有償版はユーザーセッション数が50万件を超えてもデータをサンプリングしたりせず、全量で分析できます。同一ツール上だけでなく「Big Query」というGoogleの別サービスにデータをエクスポートできるので、ビッグクエリーを使ってさらに深く掘り下げたユーザーの分析も可能です。

「データポータル」

 「データポータル」は散在するデータを統合し、可視化することで、意思決定を迅速するためのBIツールです。BIツールというとアカウントを持つユーザーのみが利用、閲覧できるイメージがありますが、データポータルで作成されたレポートは社内外の別なく簡単に共有できます。この機能は、例えば「広告主と広告代理店」や「キャンペーン運営委託先と担当者」の間で同じ指標を同時に確認する場合などで効率よく情報を共有する目的で疲れます。なおこの機能は海外で「DataStudio」と呼ばれていますが、日本では商標の都合によりデータポータルと呼ぶことになっているようです。

 このようにGoogleマーケティングプラットフォームは、データを集めて分析し、広告配信を最適化したり、サイト改善をしたりと、これさえあれば基本的なマーケティング活動を実行することができるプロダクトがそろっています。

PDCAサイクルにマッピングして理解するGoogleマーケティングプラットフォーム

 ここまでで見てきた7つのプロダクトを、マーケティング活動を行う企業側の視点で考えてみましょう。7つのプロダクトをデジタルマーケティングのPDCAサイクルに沿って分類してみます。

フェーズ0:TagManagerの設置

 まずはTag Manager 360を使ってみましょう。Tag Managerによる計測は、Webサイトのコードを変更する必要がない点が大きなメリットです。Webサイトのマーケティング担当者がエンジニアを頼らずとも、ユーザーの行動、広告の成果、購買の情報などを計測できるようになります。

(1)Plan:ユーザーのペルソナを検討

 Tag Managerの設置ができたら、まずは計画(Plan)を検討します。そのための材料はSurveys 360であぶり出します。ユーザーの行動データを理解してマーケティングプランを検討するわけです。

(2)Do:デジタル施策(広告配信など)の最適化

 次にDisplay &Video 360とSearch Ads 360、Optimize 360によってユーザーに対してデジタル広告配信やサイト改善を実施していきます。

(3)Check:分析と可視化

 それらの状況を可視化し、意思決定のための状況把握のためにAnalytics 360とデータポータル(Data Studio)が存在します。

(4)Action:仮説検証とフィードバック

 状況が把握できたら、A/Bテストや広告の配信を現在の状態で継続するのか、もしくは何かを変えるのかを判断していきます。そうしてまた今後の計画(Plan)を立てていきます。

 このようにGoogleマーケティングプラットフォームは一連のマーケティング活動の改善プロセスに沿ってプロダクトを再構成したのではないかと考えられます。加えて無料で使える点やTag Managerの存在によりツール導入のハードルが下げられているという点もGoogleらしく、多くのユーザーに利用してもらえるよう考えられていると感じます。

Googleの思惑とこれから

 他社の統合マーケティングツールはAdobeの「Sensei」やIBMの「Watson」、Salesforceの「Einstein」のように、ツールにAIを組み込む方向で製品ブランディングをしています。一方Googleの場合はそもそも自社が提供するAIサービスにブランド名を付けていないこともあり、他社に比べAIに注力していないかのように見えてしまいます。しかし、実際にはGoogleはAIが組み込まれたマーケティングツールとしてプロダクトを提供しています。ツールを利用するユーザーから見ると、そこにAIが存在することに気付きにくい見せ方になっています。

 GoogleのAIの活用の仕方はユーザーごとにAIを育てさせるというような閉鎖的なものではなく、あくまでも皆でAIを育てていこうというスタンスです。このあたりにオープンな姿勢が見られる半面、Googleのテクノロジーが外部に漏れ出さず、独自の強みとして業界をリードできる理由になっていると言えそうです。筆者は個人的にはこうしたGoogleの姿勢がユーザーの成果を高め、またユーザーを集め、AIを育てるという好循環を生み出しているのではないかと考えています。

 Googleはこのように、マーケティングプロセスを一気通貫して管理できるプラットフォームを提供することでユーザーをより効率化させ、自社のAIを育て、最終的にはWeb広告全体の収益を増やして利益を上げる仕組みをこれからも徹底的に作り上げていくことでしょう。

一貫性のある仕組み

 ここまでで、Googleマーケティングプラットフォームの全体像を知り、自分が実行したい施策の中でどのタイミングでどのプロダクトを使えばいいか良いかが分かるようになったかと思います。また他のマーケティングプロダクトの強みも理解いただけたかと思います。

 これまでのマーケティング施策はツールごとに分断して考えることが多く、利用者自身がマーケティングの知識と経験が豊富でないと扱いきれないことも少なくありませんでしたが、Googleマーケティングプラットフォームを見ると分かるように、現在は各ツールベンダーが、ワークフローを意識して製品や機能を強化している状況です。ですから1つのマーケティングプラットフォームの全体像が見えれば、何が必要で何が足りないか、が、専門家ではない方にも分かりやすい状況が生まれつつあると言えるでしょう。本稿で紹介したように「Googleの思惑」も想定できるようになれば、日々の仕事も少し違った角度から楽しめるようになるはずです。

 今後、Web広告以外のマーケティング施策を検討したり、マーケティング施策の規模が大きくなったときには、Googleマーケティングプラットフォーム以外のツールの助けが必要になるときが来るかもしれません。その際は今回紹介したよう各社プロダクトの特性を生かして選択していくと良いでしょう。

 次回は現状を把握する道具「Google Analytics」の基礎と「基礎知識でどこまでできるか」を紹介していきます。マーケティングのプロでなくても、できることの幅が大きく広がっていることをより実感いただけると思います。お楽しみに。

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