中小企業のリモートワークはどう実現? Salesforceの支援プログラムの中身
感染症拡大による働き方の変化は、今後の企業活動を効率化するきっかけになるかもしれない。費用負担などのリスク少なくSaaSを使ったテレワーク体制を試せる環境がそろいつつある。顧客管理や営業支援ツールで知られるセールスフォース・ドットコムの場合はどうだろうか。
世界的な感染症拡大を受け、テレワークを実施する企業を支援する特別プログラムを提供するITベンダーが増えている。セールスフォース・ドットコムもその1社だ。同社は現在「Salesforce Care」というプログラムを通じてテレワークによるビジネス継続を支援する各種ツール類を提供している。平時よりもSaaS導入のコスト負担がかからないケースもあるため、今後の事業継続計画の検証にも活用できる。
中小企業向けに、CRMやBIツールを無償で提供
まず、中小企業向けのCRM(顧客関係管理)である「Salesforce Essentials」について、最大10ユーザーまでのアカウントを90日間無償で提供する。
さらにデータ分析向けのBIツール「Tableau Desktop」やデータ成形ツール「Tableau Prep Builder」を10アカウントを90日間無償で提供する。今までCRMや分析ツールを使ったことがない企業も想定しており、ビデオチュートリアルを含むオンラインのトレーニングプログラム「Trailhead」で学習も支援する。また、既に何らかの顧客情報データを持つ場合もSalesforce Essitialsにデータを取り込んで利用できる。これらのツールは全てSaaSのため、PCだけでなくスマートフォンからも操作可能なので、PC環境の用意がない従業員でも利用できる。
Tableau Desktop、Tableau Prep Builderは、複数のExcelなどで作成した営業データや販売データなどを突き合わせて分析する場合のように、複数のデータソースを掛け合わせて分析する際に役立つ。
コラボレーション支援ツール「Quip」も無償提供
セールスフォース・ドットコムというとCRMツールなどのイメージが強いが、2016年のQuip買収以来、コラボレーションツールにも注力している。もう一つのテレワーク支援施策は、この「Quip」の提供だ。
Quipは、文書ツールやスプレッドシートツール、チャット機能を含むソフトウェアスイートだ。Quipを使うことで、テレワーク中でも資料のレビューや共同編集などをオフィスでの会議のように実施できる。このプログラムで提供するのはQuipの各種プランのうち、小規模組織向けの「Starter」プランだ。9月30日まで無償で提供する。
Quipは、例えば何らかの提案書文書を作成する際、複数の部門の合意や判断が必要な場合も同一の資料に複数の関係者ががアクセスして編集できる。ToDo管理機能もあるため、案件ごとのタスクも一目で確認できる。チャット機能も盛り込まれており、テレワークで遠隔地にいてもコミュニケーションがとれるようになっている。
この他、サードパーティーが提供するアプリも「AppExcange」の「AppExcange COVID-19リソースセンター」で、期間限定で無償で提供する。
提供アプリには、例えばケイズコーポレーションの「Shared Tree」(シェアードツリー)などがある。Shared Treeは社内に点在するFAQや情報、資料をSalesforceで一元管理するアプリだ(2020年12月31日まで無償提供の予定)。この他、電子署名システムの「DocuSign」(ドキュサイン)とSalesforceを連携させる「DocuSign for Salesforece」も優待価格で提供する。
AppExcange COVID-19リソースセンターに掲載されるアプリは、期間を限定して無償提供するものや優待価格で提供するものもある。利用に際してはアプリごとにAppExcange COVID-19リソースセンターで条件を確認してほしい。
なおセールスフォース・ドットコムでは、これ以外にも千葉県船橋市と開発した保健所業務支援クラウドパッケージも開発している。
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