「サーバ」シェア(2020年)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や2019年の特需の反動で、全体的に下振れした国内サーバ市場だが、唯一、3桁のプラス成長を遂げた分野があった。
IDC Japanが発表した「2020年通年の国内サーバ市場動向」によれば、2020年の国内サーバ市場全体の売上額は4943億円で、前年から4.1%減少した。出荷台数は44万6000台で、前年から13.5%減少となった。売上額がマイナス成長となったのは、2016年以来の4年ぶりだ。
マイナス成長の崖っぷちサーバ市場で成長した分野は?
国内サーバ市場における2020年のカンパニー別シェア(売上額ベース)は、1位のベンダーが引き続き首位を維持する結果となった。
次に、「x86サーバ」と「メインフレーム」「その他のサーバ」について、それぞれの分野別成長率を見ていく。
注:「その他のサーバ」とは、「ARMサーバ」「RISCサーバ」「IA64サーバ」「ビジネスサーバ」の総称を指す。
まずx86サーバは、売上額が前年比11.4%減の3712億円で、4年ぶりのマイナス成長となった。出荷台数は前年比15.4%減の43万3300台で、同じく2年連続のマイナス成長であった。x86サーバのうち、「Standard Server」(ベンダーが公開するカタログに掲載された標準的なマザーボードや筐体をベースとしたサーバ)は、売上額が前年比13.3%減の3119億円で、出荷台数は同19.0%減の35万2800台だった。マザーボードや筐体が特定の顧客や用途向けに設計された「Custom Server」は、売上額が前年比0.1%減の593億円で、出荷台数は同4.9%増の8万500台だった。
Standard Serverは、ITサービスや文教、ヘルスケア、官公庁、流通業界などで大口案件があったが、「Microsoft Windows Server 2008」のサポート終了に伴うサーバ更新需要や、店舗用途などの大口案件の反動で、売上額と出荷台数ともに2桁のマイナス成長となった。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によるネガティブな影響もマイナス成長の一因であった。ITバイヤーによっては、COVID-19の感染防止のために在宅勤務へシフトしたことで社内稟議(りんぎ)が滞り、契約締結が遅延したり、サーバ納品検収体制が整わず、サーバ搬入日を延期したりするケースなどが見られた。また、先行き不透明な経済環境から、サーバ投資を保留したり、断念したりするケースなどもあった。
Custom Serverは、クラウドサービスベンダー向けの出荷が堅調で、売上額はほぼ横ばい、出荷台数はプラス成長となった。Custom Serverにおいては、COVID-19の流行によるネガティブな影響は特に見られなかった。
メインフレームの売上額は、前年比30.4%減の487億円だった。金融や官公庁、公益、運輸業などで基幹系システム更新などの大型案件があったが、前年の2桁プラス成長を補うほどの大型案件はなく、2020年は2桁のマイナス成長となった。
その他のサーバは、前年比180.5%増の745億円となった。前年は2桁のマイナス成長だったが、2020年は、ARMサーバで、理化学研究所計算科学研究センター向けの「富岳」や、富岳のアーキテクチャを採用したスーパーコンピュータの官公庁、文教向け大型案件があり、これによってその他のサーバは前年比3桁増という成長を見せた。
また、ビジネスサーバやRISCサーバは、金融や官公庁、製造、ITサービス向けミッションクリティカルサーバの更新案件などがあり、その他のサーバのプラス成長に貢献した。メインフレームやその他のサーバでは、COVID-19の流行によるネガティブな影響は特に見られなかった。メインフレームやその他のサーバは、業務ニーズの観点から、基幹系やミッションクリティカル用途として、導入計画通りに納品される必要があったためだととIDCはみている。
IDC Japanの下河邊 雅行氏(エンタープライズインフラストラクチャ リサーチマネージャー)は、「2020年の国内サーバ市場は、x86サーバとメインフレームが2桁のマイナス成長となったものの、その他のサーバが3桁の大幅なプラス成長となり、サーバ市場全体のマイナス成長を下支えした。富岳などのスーパーコンピュータの大型案件が、その他のサーバの成長をけん引した」とコメントする。
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