年末調整の電子化は進んでいる? システム導入のネックが明らかに
年末調整業務は人事部門にとって毎年発生する負荷の高い業務だ。さくら情報システムが実施した、「年末調整の電子化とシステム導入に関する実態調査」から、その実態を読み解く。
さくら情報システムは、上場および非上場企業の人事責任者や担当者を対象に「年末調整の電子化とシステム導入に関する実態調査」を実施した。本調査から、年末調整に関するITシステムの導入状況が見えてきた。
約半数の企業が導入 求められる役割が明らかに
人事責任者や担当者に、「年末調整に関するITシステム導入実態」について尋ねた項目では、半数以上の54%の企業が「年末調整に関するITシステム(クラウドサービス、ソフトウェア、もしくはそれ以外)を既に導入している」と回答した。
「年末調整に関するITシステムの導入に期待することは何か」(複数選択あり)という調査項目への回答は、回答率の高い順に「申告書等の配布・回収の工数削減」(63%)、「人事担当者のチェックや集計、入力作業の削減」(59%)、「従業員への確認・訂正の工数削減」(46%)となった。
年末調整業務の中でも「実作業の負荷の高さ」「作業工数の多さ」が、人事責任者や担当者に重くのしかかることが分かる。これらを解決、解消するための手段として、年末調整に関するITシステムが導入されると考えられる。
導入済み企業の回答から分かる、得られる効果
「導入したことで実際に効果を実感できているもの」(複数選択あり)は、回答の多い順に「申告書等の配布・回収の工数削減」(56%)、「人事担当者のチェックや集計、入力作業の削減」(49%)、「申告書等の保管スペース削減」(36%)、「従業員への確認・訂正の工数削減」(34%)となった。
前述した、「年末調整に関するITシステムの導入に期待することは何か」という調査項目で選択率が高かった内容について、導入後に効果を実感できていると考えられる。
「導入検討から発注を決めるまでに大変だったことは何か」(複数選択あり)の調査項目では、「ITシステムやソフトウェアに関する情報収集」(37%)、「どのシステムやソフトウェアが自社に合うかの選定作業」(30%)、「導入効果を社内で理解してもらうこと(現場レベル)」(27%)が、「導入効果を社内で理解してもらうこと(経営層)」(17%)や「発注の社内承認」(8%)を上回った。
経営層から導入効果の理解を得て発注が承認されるより、情報収集や選定作業の労力のほうが大きいという状況が考えられる。
「導入後の年末調整業務を行った中で大変だったことは何か」(複数選択あり)の調査項目では、「社内マニュアルの作成」(31%)、「従業員への周知・理解促進(バックオフィス側)」(30%)、「従業員への周知(申請者側)」(30%)となり、導入後にスムーズな運用をすることが課題となるのが分かる。導入前から運用体制を考慮することが全体的な工数削減を左右すると言えるだろう。
未導入企業の回答から分かる、導入の障壁
「今後、年末調整に関するシステムを導入する必要がある、もしくは導入したいと考えているか」という調査項目では、未導入企業の70%が「導入を検討中」もしくは「導入の必要性を感じているが検討していない」と回答した。「導入しない」と回答したのは30%だった。
現在未導入の企業でも、「導入の必要性、有用性」を感じていることが分かった。ただし、「導入の必要性を感じているが検討していない」「導入しない」を選択した理由を見てみると、1位が「予算がとれない」が42%で、予算面が導入における一番のネックになっていると考えられる。
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