インダストリークラウドとは? 汎用クラウドサービスとの違いや導入メリットを解説
業種に特化して展開されるクラウドサービス。汎用クラウドの活用が難しかった業界にも対応し、コストメリットも期待されるとして市場の成長が見込まれる。
- インダストリークラウドとは?注目の背景
- インダストリークラウド導入のメリット
- インダストリークラウドのサービス例
- 関連用語
インダストリークラウドとは、特定の業種や業界に合わせたサービスを提供するクラウドソリューションで、業種別クラウド、業界クラウドとも呼ぶ。これまで特有の事情から汎用パブリッククラウドサービスの利用が難しかった業界をターゲットとした市場の急成長が見込まれ、大手ベンダーを中心にさまざまなサービスが展開され始めている。
インダストリークラウドとは? 注目の背景や導入メリット
クラウドは可用性の確保や障害対応、セキュリティ対策、ハードウェアの調達といった保守運用に関する工数を劇的に減らせるサービスとして企業に広く普及した。しかし、医療や金融、文教、公共団体など、業界特有の規制や事情から一般的なデータウェアハウスの利用が難しかったり、データを利活用する場所にインターネット接続への制約があったりするため導入が難しい業界はクラウド化から取り残されている。
こうした背景から、2019年頃よりMicrosoftやGoogle、SAP、Oracle、セールスフォースといった大手ベンダーが顧客獲得のため業種別展開を活発化させている。
インダストリークラウドは従来のクラウドサービスをベースに業界特有の事情に対応させたもので、特定の業界において重要性が高い機能を中心にサービスを構成し、法的な制約や業界内の規定を満たした上で不要な機能はそぎ落としたものを提供する。
ユーザーは業界に合わせた作りこみをする必要がなく、不要なサービスは契約せずに済む。そのため、汎用クラウドサービスよりも安価に利用できるケースがある。
インダストリークラウドのサービス例
MicrosoftはIaaSベースのクラウドサービスを業種別に展開する。ヘルスケア向けの「Microsoft Cloud for Healthcare」や小売り向けの「Microsoft Cloud for Retail」、金融向けの「Microsoft Cloud for Financial Services」、製造業向けの「Microsoft Cloud for Manufacturing」、非営利団体向けの「Microsoft Cloud for Nonprofit」を提供している。共通データモデルやクラウド間コネクターなどを共通して提供する他、金融向けサービスではリモートでの融資業務に対応する「Loan Manager」機能などを提供して業務のモダナイズを支援する。
セールスフォース・ドットコムは顧客関係管理基盤SaaS「Salesforce Customer 360」をベースとした業種別クラウド「Industry 360」を提供する。対象業界は金融や製造、教育、メディア、医療など12製品にわたる(2022年2月現在)。小売りや消費財、旅行業界向けに提供される「Salesforce Loyalty Management」もその一部で、顧客と適切なコミュニケーションをとりつつ適切に割引などをオファーするロイヤリティープログラムの設計を支援する。
関連用語
インダストリークラウドと汎用クラウドの違いに関連する用語には以下のようなものがある。
パブリッククラウド/プライベートクラウド
パブリッククラウドとはクラウド環境をユーザーが共有利用するもので、汎用的なサービスの利用コストを下げられるメリットがある。プライベートクラウドはユーザーのために独立した環境を構築するものでカスタマイズ性が高く、よりセキュアな環境を得られるといったメリットがある。
水平分業型/垂直統合型
水平分業型は単一システムをさまざまな業種に適用するサービス形態で、汎用サービスに適する。垂直統合型は業種や業界に必要な機能をワンストップで提供するサービス形態で、システムの導入や習熟、連携の手間を解消する。
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