DX人材、1人当たりの育成コストの平均額は? DX推進企業への実態調査
DXの対応が迫られる中で、表裏一体で考えるべきがDX、デジタル人材の育成だ。経済産業省も人材不足を懸念するが、DXに取り組む企業は人材育成にどのように取り組み、かかるコストはどれほどか。
人材サービスを提供するパーソルグループのパーソルプロセス&テクノロジーは、DX(デジタルトランスフォーメーション)人材の育成に関与もしくは関与を検討する企業の経営者および会社員1000人を対象に「DX・デジタル人材育成トレンド調査」実施期間:2022年9月27〜29日)を実施した。DX戦略の目的や育成における課題、教育方法など、DXおよびデジタル人材育成に関する傾向を明らかにしたものだ。その調査結果を抜粋して紹介する。
育成の課題は初期段階に集中、育成コストの平均額は?
経済産業省はDXを支える人材不足を課題の一つと捉え、リスキリングや人材育成の必要性を訴える。これを受けて、企業は人材育成にどのように取り組んでいるのだろうか。
DXの人材育成に対する取り組み状況を尋ねた項目では「取り組んでいるがDXにつながらない」が最も高く28.2%。次いで、「推進できる人がいない」(27.4%)、「ニーズに合った育成サービスがない」(25.3%)と続いた。この結果を業種別で見ると、建設業では「予算が取れない」、運輸業、郵便業では「対象者が決められない」の割合が高く、DXおよびデジタル人材育成の初期段階に課題が集中していることが分かる。
次に人材の「教育方法」についてだ。経営層と管理職層、一般社員層の3つに分けて人材教育の手段について尋ねた項目では、全ての層で「自社のe-ラーニング」が最も高く、中でも経営層では59.3%と他の層と比較して高い数値を示した。上位3項目は「自社のe-ラーニング」「自社内製の研修」「社外の専門家による研修」だった。管理職層では「社外の専門家による研修」が「自社内製の研修」を上回り、2番目に高い割合を示した。
DX推進の目的を達成するために必要な人材レイヤーについては、「(レイヤー2)現場でDXを企画・推進するデジタル変革人材」が最も高く65.6%。次いで「(レイヤー3)現場でデジタルを活用できるデジタル活用人材」(46.2%)、「(レイヤー1)高度なDXスキルを有するデジタルコア人材」(42.5%)と続いた。
DX戦略を目的別でみると、「新しいビジネスの開発」「新しい販路の確立」「マーケティングのデジタル化」は「(レイヤー1)デジタルコア人材」で高く、「データの利活用」「働き方改革」は「(レイヤー3)デジタル活用人材」で高い傾向がみられた。
最後に、1人当たりの教育コストについてだ。DX人材の教育予算について尋ねた項目では、1人当たりの予算は「10万円以上〜50万円未満」が22.8%。ボリュームゾーンは「50万円以上〜100万円未満」(16.9%)だ。業種別でみると、運輸業と郵便業、医療・福祉では「100万円以上」が10%を超えて他業種と比べて高い割合にあった。また医療・福祉では「50万円以上〜100万円未満」が他業種と比べて高く、1人当たりの教育予算は高い傾向にあった。
DXおよびデジタル推進部門が中心となってデジタル人材の育成を担い、e-ラーニングによってDXの基本や、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、RPA(Robotic Process Automation)などの先端テクノロジーに関する知識のインプットに取り組むケースが増えている。しかし、デジタル人材の育成課題として最も多く寄せられる声が「取り組んでいるがDXにつながらない」だ。DX推進につながるデジタル人材育成を本格化させるためには、階層別に担うべき役割と養うべきスキルや能力を設定し、幅広い対象者にインプットするだけでなくアウトプット(身の回りの業務を見て学びながら改善を進めること)も含めた「実践的な学び」の機会を増やし、育成方法を見直しながら抜本的に手法を変えていくことが求められる。
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