どうするEDIの刷新問題 調査に見るレガシー機器、システムの今後:レガシー情報機器の利用状況(2023年)/後編
代替製品へのリプレースや使い分けが進み、利用頻度の減少が予想されるレガシー情報機器。前編に引き続き「ビデオ会議システム」「タイムカード」「EDI」の利用動向を紹介する。
代替製品へのリプレースや使い分けが進み、利用頻度の減少が予想されるレガシー情報機器。利用に際してどのような課題があり、どのような機器への代替が進むのだろうか。
本稿は前編に引き続き「レガシー情報機器の利用状況」(実施期間:2023年5月5〜19日、回答件数:229件)の調査結果を基に、「ビデオ会議システム」「タイムカード」「EDI」の利用動向を紹介する。
「ビデオ会議」vs.「Web会議」の行く末
前編の調査結果を振り返ると「今後も利用を継続する」に半数以上の回答が集まったレガシー機器は3つあり、その一つがビデオ会議システムだ。全体の71.7%が利用しており65.6%が利用継続とした一方で、廃止予定も6.6%と「固定電話」に次いで高い割合を示した。
利用者にビデオ会議システムの課題を聞いたところ「機材が高価」(31.1%)、「他のWeb会議システムとの接続性が悪い」(31.1%)、「設定が煩雑」(21.7%)が上位に挙がり、その他の意見は「大会議室でのスピーカーフォンの利用がしにくい」「会議室の確保がしづらい」があった(図1)。
本設問の会議システムは、Web会議ではなく会議室にハードウェアを備え付ける会議システムを指す。映像や音声品質など質の高い会議を実施できるが、その分導入コストや運用が課題に挙がりやすい。
またビデオ会議システムの利用企業では、「Zoom Meeting」や「Microsoft Teams」といった別のWeb会議システムを利用している割合が高い傾向にあった(図2)。
高い音声品質が問われる重要な会議と品質にそこまでこだわらないライトな会議で利用サービスの使い分けが行われているのだろう。遠隔の会議頻度とコスト、使い勝手を理由に、クラウド型を中心としたWeb会議システムへの移行が進む可能性がある。
進む「タイムカード」離れ 2年半で9.2ポイント減少
「タイムカード」もテレワークの普及により利用機会が減少した。利用率は16.6%にとどまり、2020年10月に実施した前々回調査では25.8%が利用していたため、2年半で9.2ポイント減と、減少幅だけを見ると「固定電話」に次いで高い結果となった。主な理由として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより出社機会が減少したことが挙げられる。
また、タイムカード利用企業の約4割が「タイムカード機器を電子化したい(データで管理できるようにしたい)」としており、勤怠時間の集計や申請、承認の効率化の観点でも改善ニーズは高そうだ(図3)。
加えて2019年施行の「働き方改革関連法」への対応をみても、企業による正確かつ効率的な勤怠管理の体制構築は必須で、今後タイムカード運用の見直しに着手する企業も少なくないだろう。
迫る「EDI 2024問題」対応期限
次に利用割合が46.3%と半数で利用されている「EDI」を取り上げる。企業間取引の電子化により、紙書類でかかっていた印刷や発送コストの削減をできるが、直近では「EDIの2024年問題」が注目を集めている。
2024年1月のISDN(総合デジタル通信網)デジタル通信モード終了に伴い、IP網に完全移行となることで、ISDN網を使う従来のEDIが使用できなくなる。そのためJCA手順は「流通BMS」や「Web EDI」への移行が必要となり早急な対応が求められる。
その移行状況だが「移行済み」(31.1%)と「移行を実施中」(10.4%)を合わせると、41.5%が対応に着手していることが分かる。「移行を検討中」(12.8%)を加えると約6割で移行に対応する可能性がある(図4)。
移行が思うように進んでいない理由として、NTT東日本・NTT西日本がメタル回線(IP電話上でのデータ通信)の代替として公表した「補完策」の存在が挙げられる。この補完策は従来のINS電話回線をそのままに通話やデータ通信を継続できる仕組みで、NTT東日本・NTT西日本は2027年頃をめどに提供を続けるとしている、
しかし、補完策の回線品質は従来と異なり、通信遅延が生じる可能性がある。2017年にインターネットEDI普及推進協議会(JiEDIA。当時はJISA EDIタスクフォース)が実施した検証では、従来と比べて1.1〜4倍の遅延が認められた。
読者が想起するレガシー情報機器は
最後に、本調査で挙げたもの以外で、勤務先で利用しているレガシー機器はあるかと尋ねたところ、最も多かったのが「ドットインパクトプリンタ」だった。
「ドットプリンタカーボン紙伝票(宅配業者の伝票など)のIT化システムとして未だ稼働中」や「給与明細の電子化が運用上困難なため、ドットインパクトプリンタが給与明細印刷のために必要」といった意見が寄せられた。伝票処理業務に適したドットインパクトプリンタは、一部をEDIで代用でき、利用機会は減少傾向にあるため、確かにレガシー情報機器に該当しそうだ。
他には「FAX送信用ソフトウェア」や「印刷機能付きホワイトボード」「プロジェクタ」などが挙げられた。さらに、「文書を紙ベースで保存しており、ペーパーレス化への移行が課題となっている」といった紙書類をベースとした運用を挙げる声も多かった。
中には「最終退官者が記載するノート(最終退官者帳)があるが、よく記載漏れがあって誰が戸締まりしたか不明になっている」など、紙運用だからこそ引き起こされてしまった失敗例も寄せられた。思いのほか各所でレガシー情報機器が残っている様子が見て取れた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 実は残る固定電話とFAX、その理由は? レガシー情報機器の実態調査
キーマンズネットは従来型のIT機器を“レガシー情報機器”と呼称し、企業における利用状況やニーズの移り変わりを経年で追ってきた。前編となる本稿では「固定電話」「FAX」「アナログディスク」の利用動向を紹介する。 - レガシー情報機器の利用状況(2022年)/前編
固定電話やFAXなど、オフィスでの利用を想定した情報機器はコロナ禍でどのように利用状況が変化しているのか。テレワークシフトなど労働環境の変化を機に、これらを廃止したいと考える企業がある一方で、さまざまな理由から廃止はしないとする企業もあるようだ。 - レガシー情報機器の利用状況(2020年)/前編
テレワークの普及によって電話やFAXといった「オフィスに出勤することを前提とした情報機器」の利用状況が変化している。これらを廃止したいと考える企業が一定割合ある一方で、根強く「廃止できない」と考える企業も目立つ。