プロセスマイニングで決済業務を改善した中小SIerが「ツール導入後」に困ったこと
SIerのSTSは、自社でのプロセスマイニング導入時に発生した「思わぬハプニング」をどう乗り越えたのか。
独立系ベンダーのシステムサポート(以下、STS)がCelonisのプロセスマイニングソリューションを導入した。Celonisが2024年3月26日に発表した。
導入時の「思わぬハプニング」 SIerはどう乗り越えた?
石川県金沢市に本社を置くSTSは、顧客企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援事業などを展開している。
業務プロセス改善を目的に、STSは、2023年1月にCelonisを導入した。自社で導入することで技術力を向上させて、2022年3月から展開しているCelonis導入支援ビジネスの成長につなげる狙いもあった。
STSは自社でスクラッチ開発した受発注および原価管理システム「武(たける)受発注システム」をCelonisを適用する業務プロセスとして選んだ。Celonis導入サービスを提供する事業部門のエンジニアで編成された導入チームが中心となり、武受発注システムのデータをCelonisで可視化するプロトタイプを作成した。
その結果から改善機会を特定した後は、Celonisのオーナー組織となる管理本部に対するCelonisのスキルトランスファーを予定していたが、ここで予想外の事態が発生した。
Celonis運用を担当する部門横断組織としてCoE(Center of Excellence)を立ち上げたが、Celonisが可視化した業務データは、CoEメンバーが通常業務で利用しているシステムのものではなかったため、業務やデータに対するメンバーの理解が追い付かないことが分かった。
この課題を解決するため、STSは導入後の第2ステップとして「CelonisでモニタリングすべきKPI」を定義した。導入チームの支援を受けながらダッシュボードのコンセプトを設計し、「どのKPIをどういった観点で分析するためのダッシュボードなのか」を明確にした。
なお、分析する際は次の2つを価値検証のルールとして設定することで、分析にかかる時間が短縮され、有用な改善機会の発見につながったという。
- 経験則に捉われることなく、Celonisで可視化されたデータを読み解くこと
- 改善施策の効果試算は具体的に数値化する
STSが最初に見直した業務プロセスは、部門長による承認、決裁だった。従来は案件規模の大小にかかわらず、部門長が承認、決裁しており、その数は年間3000件以上に及ぶ。約半分を占める100万円未満の決裁を部門長配下に権限移譲することによって、部門長は事業計画や戦略立案に時間を割けるようになった。
Celonisの導入によって、CoEが主体となって社内業務改善を実行するという意識が芽生え、Celonisで可視化された業務領域外でも業務改善の動きが生まれたという。また、Celonis導入支援ビジネスを展開する事業部門は、同社自らが導入を経験したことで、顧客により良いサービスを展開できるようになったと評価している。
STSはCelonisの適用範囲を拡大する方針だ。2024年3月から利用を開始した新しい経費精算システムはカットオーバーと同時にCelonisによるモニタリングを始めている。2024年4月に運用を開始する新しい契約業務システムにもCelonisの適用を前提とした検証を進めている。
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