検索
特集

低品質データ、レガシーシステム……製造業のAI導入が失敗する5つの理由

製造業におけるAI導入は、既存の製造プロセスを改善する可能性があるが、潜在的な問題を引き起こす可能性もある。導入前にこれらの難題を解決するための戦略を学ぼう。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 製造業におけるAI導入は、既存の製造プロセスを改善する可能性があるが、さまざまな問題を引き起こす可能性もある(注1)。例えば、製造現場でレガシーシステムを運用している企業は、レガシーシステムとAIシステムのデータ連携に課題を抱えるだろう。

 AIの導入を予定している製造業者は予防策を講じるため、これらの問題を認識しておく必要がある。本稿では、製造業におけるAIのユースケースと、導入に当たって解決しておくべき課題を5つ解説する。

製造業がAIを導入すべき理由と5つの課題

 アルゴリズムや自動化、機械学習(ML)は、組織が運用コストを削減し、業務効率を高め、製品の品質を向上させるのに役立つ可能性があり、以下を実現できる(注2)。

  • さまざまなユースケースをモデル化してテストし、製造の改善につなげる
  • 生産性を低下させている要因を特定し、改善すべき領域を見つける
  • 自動化によって製造スピードと品質を向上させる

 しかし、AIを他のシステムと統合したり、必要なAIの専門知識を持つ従業員を見つけたりするのは難しい。製造業におけるAI活用の課題を確認しよう。

1.データの質の低さ

 AI、MLの品質は大量の高品質なデータに依存する。そのため、企業のデータに低品質な情報が含まれているとアウトプットは信頼できないものとなる。

 データ品質の問題を回避するには以下のアプローチを検討しよう。

  • アルゴリズムがどのようなデータを必要とし、どのようにデータを処理しているかを理解する
  • 必要な情報を収集して照合し、整理(注3)する
  • インプットとアウトプットを定期的に監査する

2.従業員の雇用保障への懸念

 多くの人々が自分たちの生活にAIがどのような影響を及ぼすかを懸念している。調査企業であるGartnerの2023年の調査によると、「AIに仕事を奪われる」と考えている従業員は、企業にとどまる意欲が27%低かった。

 企業のリーダーは、AIに仕事を奪われるという従業員の懸念を理解することが重要だ。従業員は企業でAIに関わりたくないと考える可能性があり、それが発展の遅れにつながる可能性もある。サプライチェーンのリーダーは、AIが組織に及ぼす潜在的な影響について率直かつ誠実に説明し、影響を受ける従業員に再教育やトレーニングの機会を提供するため、社内のリーダーたちと協力すべきだ。

3.人材不足

 AI、MLを導入するには特定の知識が必要であり、製造業を営む企業はデータサイエンティスト(注4)やアナリスト、その他のアルゴリズムや自動化の専門家に投資する必要がある。しかし、業界全体でAIが急速に成長しているため、こうした役割を担う適切な専門知識を持つ人材を見つけるのは難しい。

 同様の問題は組織の既存の製造力にも影響を与える可能性がある。従業員が適切な知識とスキルを持っていないためだ。リーダーは、以下の方法でこれらの問題を解決できる。

  • 人事部門や人事の専門家、ベンダーと協力し、AIの導入と運用に必要な人材ニーズについて学ぶことで、採用ニーズを把握する
  • 最も優秀なAIの専門家を惹き付けるため、競争力のある報酬と待遇に投資する
  • 新しいAI機能を使用する際、従業員が継続的なサポートを受けられるようにする

4.システム統合の欠如

 AIを活用した製造システムは、製造プロセスを改善するために他の技術と統合する必要がある。アップグレードのROI(費用対効果)が不明確なことや、新しい技術を導入するためのオーバーヘッドなど、多くの理由によって製造業ではレガシーシステムが活用されているが(注5)、AIは古いシステムと統合できない可能性がある。

 AIを組織の現在の技術に統合する製造業者は、以下の行動を取るべきである。

  • AIを活用した製造システムを統合する必要がある領域を検討する
  • AIベンダーに、AIシステムの統合能力について相談する
  • AIを利用するために、既存の製造システムに必要なアップグレードについて学ぶ

5.導入を過度に急ぐ

 多くの製造業者は、潜在的なメリットを活用し(注6)、組織の競争優位性を向上させるために、AIの迅速な導入を切望している。しかし残念なことに、急ぎ過ぎると理想的な結果が得られず、不十分な導入になりかねない。

 企業のリーダーは、AIの導入に段階的なアプローチを採用し(注7)、以下を実施することでこのような事態を回避できる。

  • 改善すべき製造工程を特定の一つに絞る
  • そのプロセスを最適化し、後で能力を向上させることができるAIソフトウェアを研究する
  • 限定的にAIツールを導入し、導入がどの程度機能しているかを追跡する
  • AIプロセスを最適化して得られた教訓を記録する
  • 同様のアプローチで、AIが変化をもたらす可能性のある社内の全分野に、徐々にAIを導入する

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る