Epicorが「Epicor Grow portfolio」を発表 ERPの何がどう変わる
Epicorはユーザーカンファレンス「Epicor Insights 2024」で、AIとビジネスインテリジェンス(BI)の新機能を加えた「Epicor Grow portfolio」を発表した。
Epicorは製造業や流通業の企業を中心にERPを提供している。同社は、AIを活用した製品に業界別の新機能を追加し、現場の従業員の生産性向上を目指している。
2024年5月21日(現地時間)に開催された「Epicor Insights 2024」のユーザーカンファレンスで、AIとビジネスインテリジェンス(BI)の新機能を加えた「Epicor Grow portfolio」(以下、Epicor Grow)を発表した。
Epicor Growで「Epicor ERP」の何がどう変わるのだろうか。
Epicor Grow portfolioの全体像
Epicorによると、新機能は生成AI、機械学習などのAIによって、製造業や物流業、小売業など200以上の業界を対象とするものだという。
Epicorのヴァイバヴ・ヴォーラ氏(最高技術責任者)は「Epicor Growの中核となるコンポーネントは『Epicor Prism』(以下、Prism)だ。これは、顧客やパートナーがEpicorのデータモデルを使用して、特定の要件に対応するAI機能の構築や拡張、展開をできるよう支援する生成AIサービスだ」と述べた(注1)。
ヴォーラ氏によると、ユーザーがEpicor ERPのアプリケーションを介してPrismにアクセスすると、タスクに特化したエージェントネットワークがバックグラウンドで稼働し、要求に応じて洞察を提供したりアクションを実行したりする。
Visa Cash App RB Formula One Teamの現場で働く人々は、「Prismを使用することで、より多くの情報に基づいたサプライチェーンに関する意思決定をできている」とのことだ。Prismによって何千ものサプライヤーに情報を要求し、価格やパフォーマンス、納期などの基準に沿った分析できる。
「全ての情報を確認してサプライヤーと連携することで、数週間かかる作業を10分に短縮できる。より良いサプライチェーンの意思決定ができるようになる」(ヴォーラ氏)
ERPは、取引中心のシステムから、洞察と行動を提供するシステムへと移行しつつある。Epicorのリサ・ポープ氏(社長)は、「Epicorの顧客の多くは、ここ数年でクラウドに移行しており(注2)、新たな機能を活用できる」と述べた。
また、ポープ氏は「製造業や物流業、小売業を営む多くの企業は、サプライチェーンにおける課題の増大に直面し(注3)、従業員の雇用と定着に関する問題に頭を悩ませている」とも述べている。
ポープ氏は、AIは雇用を脅かす技術ではなく従業員を支援する技術とし、「このプラットフォームは、従業員の生産性を向上させ、そのギャップを緩和するものであり、従業員を脅かすものではない」と語った。
ポープ氏によると、Epicor Growのプラットフォームは、Epicor ERPのクラウド版にバンドルされ(注4)、顧客に追加費用は発生しない。一部のAI機能を活用するためにはプラットフォームの料金を支払う可能性はあるが、これらはまだ決定されていない。
Epicor GrowのAI機能は現在、一部の顧客で利用されている。それらの顧客は使用方法に関するフィードバックを提供するために協力しており、一般的な利用は2024年の後半になる予定だ。
Epicor Growのその他のコンポーネントには以下がある。
- Epicor Grow Inventory Forecasting: Epicorが2024年5月初めに買収したSmart Softwareに基づく予測分析およびモデリングアプリケーション。在庫管理や在庫予測で仮のシナリオを活用する際に役立つ
- Epicor Grow Financial Planning and Analysis: 財務報告アプリケーション
- Epicor Grow BI: ノーコードアプリケーション。BIデータを可視化し、指標をダッシュボードに表示する
- Epicor Grow Data Platform: ノーコードデータプラットフォーム。ユーザーがエンタープライズデータを一元管理し、EpicorのAIまたはBIアプリケーションに供給できるようにする
生成AIと従業員の生産性
米国ミシガン州グランドラピッズのHVACのディストリビューターであるWilliams Distributingは、Epicorと共にEpicorのERP「Prophet 21」における業界固有のAI機能に磨きをかけた(注5)。
Williams Distributingのジェフ・フラー氏(情報技術を担当するバイスプレジデント)は、「ある機能は、追加注文時に発生するカスタマーサービスと営業担当者の作業の自動化に役立っている」と述べた。
「以前は付属品を追加したい場合、各アイテムをシステムに手動でロードする必要があった。例えば、暖房を販売する際に、PVCパイプや排水管などの付属品を追加したい場合、それら全てをバックグラウンドで手作業で追加する必要があった。今は、他の人が注文しているものに基づいて提案してくれる。これは大きな進歩だ」(フラー氏)
フラー氏は「Prismの結果が信頼できるのは、訓練されたアルゴリズムがWilliams Distributingのデータにしかアクセスできないため」としている。
「注文された3つの商品を他の販売業者と比較することはない。私たちのデータベース内の顧客とだけ比較している」(フラー氏)
フラー氏によると、Epicorの新しいAI機能は倉庫テクノロジーの進化の一つとして従業員を支援し、ユーザーの労働条件を向上させるという。
「従業員が本当に集中すべき作業に取り組み、時間を無駄にしないことを目指している。より良いカスタマーサービスが提供され、従業員は自らをより価値のある存在と感じることができる」(フラー氏)
ERPのユーザーは生成AIを求めている
調査企業IDCのミッキー・ノース・リザ氏(エンタープライズソフトウェア担当 グループバイスプレジデント)は「EpicorはAIとデータ管理の研究開発に力を入れており、これは前向きな動きだ」と語る。
リザ氏は「AIの活用によって企業はビジネスプロセスを最適化し、洞察を得るまでのステップと時間を短縮できる」と述べた。
リッツァ氏は、「生成AIをアプリケーションに組み込むことで、Epicorは顧客を維持するのに役立つ」とも述べている。実際、ERPを含むSaaSに関する調査「IDC SaaSPath 2024」の最新データによると、次のリリースに生成AIが含まれていない場合、組織の25%が「現在のアプリケーションプロバイダーの置き換えを計画している」と回答したという。さらに、21%は「次のリリースに生成AIが含まれているため、現在のプロバイダーとの更新を計画している」とした。
「AIを採用しているベンダーは、セキュリティや信頼性、責任あるAIを維持する限り、当面は存続すると私たちは考えている」とリザ氏は語った。
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