CertiniaのAI機能がアナリストから高評価なワケ
Certiniaは、PSAサービスにAI機能を追加した。複数のアナリストやコンサルタントが同社の新機能を評価している。
人材や知的財産を管理し、生産性と顧客満足度を向上させるためのシステム「プロフェッショナルサービスオートメーション」(PSA)のベンダーであるCertiniaは、同社のPSAにAIを導入した。
複数のアナリストやコンサルタントが同社の新機能を評価している。他のPSAベンダーのサービスとは何が異なるのだろうか。
Certiniaの新しいAI機能
Certinia(旧社名、FinancialForce)は、「Salesforce」のアーキテクチャに構築され、企業が顧客や人材、リソース、プロジェクトを管理できるクラウドアプリケーションを提供している。アプリケーションには「Professional Services Cloud」(以下、PS Cloud)、「ERP Cloud」「Customer Success Cloud」(以下、CS Cloud)が含まれる。
Certiniaの2024年春のリリースによると、サービス業において正確な予測を実現し、より多くの情報に基づいた意思決定をし、生産性の向上を目的とした幾つかのAI機能が含まれていた。
アナリストによると、2024年4月17日(現地時間)に発表された新しいAI機能は、「PSAのソフトウェア市場におけるCertiniaの立場を有利にする」という。
新機能を紹介する一般公開前のメディアおよびアナリスト向け説明会で、CertiniaのD.J.パオニ氏(CEO)は「当社はサービスアプリケーションにAIを統合するために『現実的なアプローチ』を取っている」と語った。
パニオ氏によると、新しいAI機能はサービスマージンや効率性の向上、リソース配分、キャッシュフロー予測などの目標に対して具体的な顧客価値を提供することに重点を置いているという。組織はプロジェクトの範囲をより正確に把握し、見積もりをより迅速に分析することができ、契約を締結してプロジェクトを開始するまでの時間を短縮できる。
AIを早期に導入した企業は利益を期待している
ロンドンに本社を置くグローバルデジタルマーケティング・サービスエージェンシーのJellyfishは、PS Cloudを4年間利用しており、このアプリケーションにおけるAI機能の初期の導入社だ。同社のアダム・ヘイ氏(シニアオペレーションディレクター)は、説明会で「プロジェクトの範囲設定やビジネスの獲得、サービスプロジェクトの管理において、AIがより迅速かつ優れた意思決定をする可能性を見いだしている」と述べた。
ヘイ氏によると、JellyfishはCertiniaの導入チームと連携してモデルを理解し、既に保有データを活用している。同社はプロジェクトのマージンを予測し、プロジェクトのスケジューリングリスクを理解して先手を打ち、リソースがプロジェクトにどのような影響を与えるかを理解しようとしている。
「それは角を曲がった先の出来事を事前に確認することを意味する」(ヘイ氏)
一方で、ヘイ氏は「AIの導入には課題がある」と述べ、特にユーザーの教育や採用が重要だと指摘した。Jellyfishは、AIがユーザーの生産性向上にどのように役立つかを示す努力をしている。
「ビジネスに関わる全員がAIの仕組みを理解しているわけではないため、ユーザーになる人々だけでなく、ビジネスのリーダーも一緒に学んでいく必要がある」(ヘイ氏)
従業員はAIが自分たちの仕事を奪うのではないかと懸念しているかもしれないが、ヘイ氏によると、そうではない。
「実際には逆のことが起こると考えている。AIが従業員やビジネスインテリジェンス(BI)の潜在能力を引き出し、そこから得られる洞察に焦点が当たることを望んでいる」(ヘイ氏)
Jellyfishが本番環境でさまざまな機能を稼働させると、迅速な意思決定の支援につながり、利益が得られる可能性がある。
「私たちは変化のペースが非常に速い業界に所属している。仮に、効果的かつ効率的に業務の範囲を設定できず、設定した範囲から学びを得なければ、ビジネスを失うことになるだろう。正しい方法に到達することが重要だ。迅速に対応し、組織の収益を向上させたいと考えている」(ヘイ氏)
Salesforce Einsteinの接続が役立つ
業界分析事業を営むDiginomicaのジョン・リード氏(共同設立者)によると、他のソフトウェアベンダーの大半もCertiniaの「実用的なAIアプローチ」を採用している。Certiniaには幾つかの利点があるという。
「Certiniaには差別化できる分野がある。AIの面では、SalesforceのEinstein AIプラットフォームとアナリティクスへの投資の活用は、同市場の他のベンダーにはできないことだ」(リード氏)
リード氏によると、組織はPS Cloudに追加されたAI機能を求めている。特に、プロジェクトのリスクを迅速に評価し、対策を講じられる機能が求められている。
「これらの機能は、顧客の課題を適切に把握し、それを改善し、より自動化されたアプローチを取り入れる方法を示す。組織が単にAIに関する取り組みを推進しているわけではない点が気に入っている。サービス業界の顧客はあらゆる技術を使用して業務を改善したいと考えている」
コンサルティング企業であるTechnology Evaluation Centersのプレドラグ・ヤコブレビッチ氏(アナリスト)は「プロジェクトのライフサイクル全体をカバーするAI機能は印象的だ」と述べた。
また、ヤコブレビッチ氏は「CS Cloudのように、プロジェクトの成功やアカウントの健全性などを測定できるものはほとんど存在しない。更新すべきかどうか、いつ更新すべきか、顧客離れを防ぐためには何をすべきかなどを測定できるものはないのだ」とも述べている。
「『Deltek』や『Kantata』『Oracle NetSuite OpenAir』のようなPSA市場の競合他社と競争する際、ライフサイクル全体をカバーするAI機能はCertiniaに有利な要素となるだろう。確かに、他の企業は独自のAIを開発するだろうが、CS機能を有する企業が他にあるかどうかはまだ分からない」(ヤコブレビッチ氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ERPベンダー8社比較 各製品の対象と得意業種を理解しよう
ERPにはベンダーや製品ごとに得意とする業種や企業規模がある。本記事ではERP分野をリードする8社の強みと市場での位置付けなどを紹介する。 - Epicorが「Epicor Grow portfolio」を発表 ERPの何がどう変わる
Epicorはユーザーカンファレンス「Epicor Insights 2024」で、AIとビジネスインテリジェンス(BI)の新機能を加えた「Epicor Grow portfolio」を発表した。 - 生成AI戦国時代、Googleの切り札はOpenAIに勝てるのか?
GoogleからもAIモデル「Gemini」に関する発表があった。同社は生成AIで競合他社とどのように戦うのか。GeminiがOpen AIよりも先んじて実現したこととは。