「弊社のPCスペック低すぎ……?」 1番人気のPCメーカーとスペックを大調査:PCとキッティングに関するアンケート(2024年)/前編
前編となる本稿では、業務で利用されているPCの種類やスペックを中心に、企業におけるPCの利用実態を紹介する。1番人気のPCメーカーとスペックはいったい何だろうか。
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が2024年2月に発行した「AV&IT 機器世界需要動向 〜2028年までの世界需要展望〜」によると、2023年のPCの世界需要は前年比90.6%の2億3700万台で、2020〜2021年にかけて生じたテレワーク需要による前倒しの反動によって減少に転じたという。しかし、2024年以降は需要の反動減が収束に向かい、加えて2025年に控える「Windows 10」サポート終了に伴う買い替え喚起から回復に転じると見込まれている。
そこでキーマンズネットは「PCとキッティングに関するアンケート(2024年)」を実施した(実施期間:2024年7月17〜28日、回答件数:295件)。前編の本稿は、業務で利用されているPCの種類やスペックを中心に、企業におけるPCの利用実態を紹介する。1番人気のPCメーカーとスペックはいったい何だろうか。
中小企業と大企業、利用PCや管理状況に大きな違い
はじめに、業務で主に利用しているPCを聞いたところ「職場で支給されているノートPC」(85.8%)が最も多く、次いで「職場で支給されているデスクトップPC」(35.9%)、「職場で支給されているタブレットPC」(10.5%)と続いた(図1)。
従業員規模別では、1001人を超える大企業帯で9割超がノートPCを利用している。一方、100人以下の中小企業のノートPC利用率は7割にとどまり、規模が小さくなるに従ってデスクトップPCの利用率が高くなる傾向が見られた。また業種別では、教育や医療、公共機関においてデスクトップPCの利用率が高く、取り扱う情報の機密性もあってからかノートPCよりもデスクトップPCが選ばれている可能性がある。
次にPCのライセンスやソフトウェアの資産管理状況を調査したところ「情報システム部門が一括管理している」(74.6%)や「総務部門が一括管理している」(15.3%)など、約9割が特定の部門による一括管理であった(図2)。
こちらも、100人以下の中小企業帯は「個人の管理に任されている」(21.1%)が他企業帯の4〜5倍と高く、中小企業と大企業のPC形態や管理状況には大きく違いがあることが分かった。
企業で利用のPCメーカー、3位「Dell」、2位「HP」、1位は…?
次に業務で利用しているPCのスペックを見ていこう。まずPCメーカーは、NEC、富士通/FCCLを含む「Lenovo」(45.1%)が最多で、次点で「HP」(44.4%)、「Dell」(42.0%)が猛追する(図3)。「パナソニック」(20.7%)や「Dynabook」(16.6%)など国産メーカーも4位、5位と続き、健闘している状況だ。
また、参考までにフリーコメント(自由回答)で利用しているPCの機種名を聞いたところ、「Latitude」シリーズが25回答、「ProBoo」シリーズが24回答、「LIFEBOOK」シリーズが22回答、「EliteBook」シリーズが11回答、「OptiPlex」シリーズが10回答だった。
PCのメモリ容量は、どの企業規模帯でも「8GB」(43.1%)や「16GB」(40.0%)が中心で、若干ではあるが、5001人以上の大企業帯で「32GB以上」が選択された。
ストレージ容量は「252GB」(45.8%)、「512GB」(31.9%)が全規模帯においてボリュームゾーンとなっており、大多数の企業がメモリは8〜16GB、ストレージは252GBまたは512GBのPCを導入している。
規模別で比較した際、1TB以上の大容量PCの利用率が19.7%と最も高かったのは100人以下の中小企業であった。これには前述のデスクトップPCの利用率の高さが影響していると考えられる。
傾向はPCのディスプレイサイズにも表れている。全体では「13〜14インチ」(55.0%)が過半数を占める中で、「15インチ以上」の比較的大画面のディスプレイは中堅・中小企業帯に多く、反対に「12インチ以下」のコンパクトなディスプレイは5001人以上の大企業帯で利用される傾向が見られた。
このことからも、中小企業帯は持ち歩きを前提としないデスクトップPCの利用率が高く、大企業帯は可搬性を重視したノートPC利用が高い傾向にあることが見てとれる。
「SSD容量」「バッテリー不足」「モバイル用途で1kg越え」 利用PCの不満
最後に、現在業務で利用しているPCについての不満をフリーコメントで聞いたので紹介しする。
まず最も多かったのは「SSD容量が足りない。処理速度が遅い」や「ディスク容量不足」に見られるスペックへの不満だ。特に「大量データを扱う場合にRAMが少ない」や「業務上、グラフィックを使うことがあるがIntelのグラフィックではパワー不足」「開発作業で64GBぐらいはほしい。8コアで(事務処理用と用途/対象者を分けてほしい)」など、業務内容によってはスペック不足が非効率となっている実態があり、「配布PCのスペックが固定されており、選択の余地が無い」と嘆く人が少なくなかった。
他にも「ノートが標準PCになっているが、画面が小さいので外付けディスプレイを別途購入している」や「キーボードタッチが柔いので、外付けキーボードを利用している」「電源ポート端子が少ない」「カメラがない」「eSIM付きでモバイル用途も考慮されている割には重い(約1.4kg)」「バッテリー稼働時間が短い」など、ハード面についての不満や要望も多かった。こうした不満は、従業員の業務内容や働き方に適したPCが配布されていないことに対する問題提起ともいえる。
同様に、PCに適用されている「セキュリティ施策」や「OS運用」についても声が挙がり、ユーザーの生産性と対応コストのバランスはどの企業でも課題となっている様子だ。
具体的には、セキュリティについては「シンクライアントなので、機能が制限されて使いづらい」や「NASや外付けHDD、記憶メディアへのデータ保存、電子メール添付がポリシーで規制されていてセキュリティとしては良いが使い勝手は大変悪い」など。
OSについては「全部を『Windows 11』に移行したいが、まだ『Windows 10』が残っている」や「古いOSでないと動作しないアプリが残っている」「『macOS』を使いたいが対象ではない」があった。
以上、前編では企業で利用されているPCの現状を紹介した。後編では、PCのリプレースやキッティングなどの運用実態について見ていく。
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