手作業PCキッティングはもう古い? 大企業と中堅・中小企業の格差が判明【読者調査】:PCとキッティングに関するアンケート(2024年)/後編
前編は、企業におけるPCの利用実態を紹介した。後編の本稿は、企業におけるPCキッティングの実態を紹介する。大企業と中堅・中小企業の“キッティング格差”が明らかになる。
2025年10月に迫る「Windows 10」サポート終了を契機にPC市場は買い替え需要が見込まれる。一方、付随して発生するPCキッティングやOSアップグレードへの対応は見逃せないテーマとなっており、各社効率的な対応を模索しているだろう。
そこでキーマンズネットでは「PCとキッティングに関するアンケート(2024年)」を実施した(実施期間:2024年7月17〜28日、回答件数:295件)。前編は、業務で利用されているPCの種類やスペックを中心に、企業におけるPCの利用実態を紹介した。
後編の本稿は、企業におけるPCキッティングの具体的な手法や作業工数などを実態を紹介する。大企業と中堅・中小企業の“キッティング格差”が明らかになった。
PCキッティングに年間5000時間……大企業はどう対応する?
キッティングは、IT機器を業務環境に合わせてセットアップし、従業員がすぐに使える状態に準備しておくことで効率性を高めるものだ。実施状況を調査したところ「全て自社でキッティングしている」(59.3%)が最多で、「自社とアウトソースの両方でキッティングしている」(18.0%)、「全てのキッティングをアウトソーシングしている」(16.6%)と続いた(図1)。
企業規模別では、501人以上の中堅企業、大企業帯では2〜3割が「全てのキッティングをアウトソーシングしている」と回答し、従業員数の多さと比例して作業負担がかさむキッティング業務のアウトソース化も進んでいるようだ。
実際、PC1台当たりにかかるキッティング時間は「30〜60分」(25.0%)や「120分以上」(23.2%)との回答が多く、平均すると1人当たり1〜2時間はかかると推察される(図2)。
加えて年間でキッティングするPCの台数は、全体では「〜50台」(53.5%)が過半数だが、5001人以上の大企業帯では「5000台以上」(32.7%)、1001人〜5000人の中堅企業、大企業帯では「100〜500台」(42.3%)がボリュームゾーンとなり、単純計算でも大企業では「年間5000時間以上」をPCキッティングに費やしていることになる(図3)。費用対効果を鑑みてもアウトソース化を検討する企業が一定存在するのも分かる。
「手作業」過半数も大企業でWindows Autopilotが普及
キッティング手法として主流となっているのは「1台ずつ手作業でクリーンインストール」(53.9%)で、特に500人以下の中堅・中小企業の7〜8割が手作業で実施している(図4)。
一方で、501人〜5000人までの中堅企業、大企業帯でクリーンインストールが半減する代わりに「クローニングツールの利用」が最多となり、5001人を超える大企業においては「自動でセットアップ(Windows Autopilotなど)」が挙がるなど、キッティング対象となるPC台数によって採用手法も異なる。
特にWindows 10以降のOSを採用し、PCの数が多い企業は、「Microsoft Entra ID」(旧Azure Active Directory)にインターネット経由で参加することでWindows PCの初期設定を自動展開する「Windows Autopilot」の活用が効果的だ。
実際、2022年5月に実施した同調査と比較すると、Windows Autopilotによるキッティングが全体では2.8%から9.6%、5001人以上の大企業に限定すると6.8%から26.5%と大幅に増加しており、大企業を中心に主流となってきた。
企業が自社に合ったキッティング手法を選定する際のポイントは「作業コストが低い」(27.5%)、「金額コストが低い」(25.8%)、「特殊なソフトウェアや環境が必要ではない」(25.8%)が全体の8割を占める(図5)。
前回調査は2022年5月と2回目の「まん延防止等重点措置」が明けたばかりということもあってか、在宅勤務やテレワークを念頭に「出社の必要がない」にも票が集まったが、オフィス回帰も進み始めた今回はほぼ半減した。そのため、現在キッティング手法を選定する際の決め手は前述の3つとなっているといえる。
実際、フリーコメントでキッティングにおける課題を聞いたところ「台数が多く、一台一台、全てデータ移行があるので時間がかかる」や「手作業な上に使用者本人の生体認証設定等も必要で、非常に煩わしく非効率的」「とにかく量が多く時間がとられる」といった声が多く、いかにキッティングにかかるコストを軽減して完遂できるかが求められている。
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