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SAP、クラウドERPへの移行支援で専任アシスタントの提供を約束 どう実現する?

SAPのクリスチャン・クライン氏(CEO)は「採用活動は本格化している」と述べた。同社は、RISE with SAPの顧客に専任の技術移行アシスタントを提供すると約束した。

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CIO Dive

 SAPは2024年7月22日(現地時間)、2024年第2四半期の決算説明会を開催し(注1)、「RISE with SAP」の一環としてERPの移行支援を強化すると約束した。

 同社のクリスチャン・クライン氏(CEO《最高経営責任者》)は「RISE with SAPの進化の一環として、各顧客に専任のエンタープライズアーキテクトを1人提供する」と述べた。具体的にどのような取り組みが始まるのだろうか。

クラウド型ERPへの移行を強化する取り組み

 SAPは、2024年1月に発表した大規模なリストラの一環として(注2)、社内のエンタープライズアーキテクチャに関するスキルを強化している。クライン氏は「採用活動は本格化している。2024年8月には、RISE with SAPの顧客基盤のカバー範囲がさらに拡大できる見通しだ」と述べた。

 SAPは従来予想されていた8000人に加えて、1000〜2000人の雇用が影響を受けると見込んでいる。同社のドミニク・アサム氏(最高財務責任者)によると、2024年は約30億ユーロ(32億5000万ドル)を再編に費やし、予想費用に8億ユーロ(8億6700万ドル)を上乗せするという。

 SAPは、オンプレミスシステムのサポート期限の終了が迫る中、顧客を最新のERPスイートに移行させるべく、時間との戦いに挑んでいる。また同社は、移行のボトルネックを解消するために技術専門家の体制を強化している(注3)。

 クライン氏は、この戦略が顧客への働きかけや社内プロセスにどのような影響を与えているかを強調した。

 「SAPはトランスフォーメーションに深く関与している。私たちは傍観するだけでなく、積極的に支援しているのだ」(クライン氏)

 スキルへのアクセスと製品の変革は、再編の中心的な課題だ。クライン氏によると、SAPは外部採用を補完するために大規模な再スキルアップに取り組んでおり、全体としては安定した状態が続くと予想しているとのことだ。

 クライン氏は「スキルが不要になった職場では、より高い離職率が見られる」と述べた。また、同氏は「熟練したエンタープライズアーキテクトはRISE with SAPプログラムに移行している」と付け加えた。

 SAPはクラウド導入を推進するため、RISE with SAPとGROW with SAPにおける移行インセンティブを強化し、ERPスイートにモジュール型の拡張機能を追加し、「SAP Business Technology Platform」(以下、BTP)のアナリティクスハブ全体にAI機能を組み込んでいる。

 「BTPにおける生成AIハブは活発に稼働している。現在、90以上のパートナーと共創を進めており、その中には大手システムインテグレーターとのユースケースも含まれている」(クライン氏)

 この取り組みは業績にも反映された。

 SAPのクラウド型ERPスイートの売上は33%増加し、クラウド領域における売上が前年比で25%増加した(注4)。変革プランと歩調を合わせるように、顧客がSaaSにシフトしたため、ソフトウェアライセンス収入は前年同期比で27%減少した。

 クライン氏は「私たちは顧客に対して、SAPを使ってセマンティックレイヤーを構築する方法、ビジネスプロセスのつながりを整理する方法、ワークフローの自動化を取り入れる方法を指導している」と述べた。また同氏は、追加の技術的なガイダンスが、顧客の移行を促進する助けになっていると付け加えた。

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