「忙しすぎ情シス」をさらに追い込む? RPAプロジェクトを進める情シスの悲鳴
RPAの導入など業務自動化への取り組みが進む中、情報システム部門への負荷は高まり続けている。業務自動化における情報システム部門の困りごとや理想と現実のギャップ、負荷軽減のヒントを届ける。
RPAの導入など業務自動化への取り組みが進む中、情報システム部門への負荷は高まり続けている。キーマンズネットが実施した調査「業務自動化に関するアンケート調査 2024」(期間:2024年8月6〜30日、有効回答数:359件)によると、約8割の情報システム部門が「業務自動化に関する業務の負担が重い」と回答している。
情報システム部門にとって、業務自動化のどのような取り組みが負担となっているのか。業務自動化における困りごとや理想と現実のギャップ、負荷軽減のヒントを届ける。
業務自動化が業務を圧迫する本末転倒のワケ
まず、業務自動化の推進役を担っている部門を聞いたところ、「情報システム部門」が最多(33.0%)となった(図1)。特に100〜5000人以下の企業では約4割と高い比率を占めた。また、5000人以上の企業はDX推進部門を設ける割合が平均より20ポイント以上高い(41.6%)。
次に、情報システム部門に業務自動化に関する業務の負担の重さを聞いたところ、「かなり重い」(9.0%)、「重い」(18.0%)、「どちらかと言うと重い」(52.4%)と、約8割が業務自動化に関する業務を「重たい」と答えた(図2)。すでにさまざまな業務を抱えている情報システム部門にとって、業務自動化に関する業務が負担になっているのは想像に難しくない。
そこで、業務自動化における情報システム部門の困りごとをフリーコメントで聞いた。情報システム部門からは「どの業務を自動化するといいのか、判断できない」といった業務理解の乏しさから生じる苦労や、「社内にRPAに関する情報、知識が不足している」「扱える人材が少ない、コストが高い」など人手や知識の不足に関するコメントが寄せられた。従来の情報システム部門にとって自動化関連の業務は主流ではなかったため、スキルの習得にも工数がかかるのだろう。
また、情報システム部門以外の人からは、「人手が足りない」「ロボットを作成するタイプのRPAだと、現場担当者の負担が大きく対応できない」など負荷増大に関する声が寄せられた。自動化関連の業務が、現場部門の負荷を高めるという本末転倒の結果になっていないかどうかは要確認だ。
他にも「以前、VBAマクロで比較的大規模な自動化プログラムを一人で作成したが、特に昇給などの評価はなく、逆に作成者として管理責任を負わされることになり、それ以来やる気がなくなった」など、業務自動化への取り組みが評価制度に反映されていないことへの不満も見てとれる。
<情報システム部門が推進役を担っている企業からのコメント>
- どの業務を自動化するといいのか、判断できない
- 社内にRPAに関する情報、知識が不足している
- 負担が大きい、安定運用までの負担が大きい
- 扱える人材が少ない、コストが高い
- エラー対応がブラックボックス化して大変
- RPAを動かしているサーバが、ログインされていない状態ではシナリオが途中でエラーで落ちるが、ログインされていなくても動いてほしい
<情報システム部門以外からのコメント>
- 人手が足りない
- ロボットを作成するタイプのRPAだと、組織上現場担当者の負担が大きく現場で対応できない
- システム部門も人が足りず、結局現場で対応できないため依頼がくることが見えている
- システム部門に管理させずに、導入した部署で管理してほしい
- 現場や上層部の理解を得るのが大変
- 以前、VBAマクロで比較的大規模な自動化プログラムを一人で作成したが、特に昇給などの評価はなく、逆に作成者として管理責任を負わされることになり、それ以来やる気がなくなった
- ツールの選定コストが重い
- 業務効率改善に向けて導入しようとするシステムによって、さらに業務効率が落ちている
業務自動化における理想と現実のギャップ
情報システム部門にとって業務自動化の負荷が大きく、さまざまな課題を抱えていることが分かった。そこで最後に「業務自動化に関わる際の、情報システム部門のあるべき姿」を聞いた。
まず、現時点で情報システム部門が業務自動化にどのように関わっているかを聞いたところ、上位から「業務自動化ツールの選定」(48.9%)、「業務自動化を推進するための計画立案」(38.8%)、「ツールの利用方法に関する問い合わせ対応」(30.9)、「業務自動化を支援するベンダーやパートナー企業への窓口対応」(30.2%)が続いた(図3)。
次に、業務自動化に関わる際のあるべき姿について聞いたところ、上位から「業務自動化ツールの選定」(48.2%)、「業務自動化を推進するための計画立案」(46.8%)、「業務自動化を支援するベンダーやパートナー企業への窓口対応」(39.6%)、「ツールの利用方法に関する問い合わせ対応」(35.3%)が続いた(図4)。上位4つの項目は、現時点の業務自動化に対する携わり方と同様だった。
また、「内製化推進のための勉強会の開催、社内ユーザーコミュニティーの運営」に携わっていると回答した情報システム部門は18%であったが、34.5%が「携わるのがあるべき姿」と回答し、その差は16.5ポイントにもなった。情報システム部門と現場部門のコミュニケーションに関する以下のコメントからも、コミュニケーション不全の可能性が見て取れる。
<情シスと業務部門とのコミュニケーション不全>
- 自動化する業務の洗い出しが現場の負担が大きくできていない
- 自動化対象とする業務に関して、現場部門から知識を得ることができない
- 業務での実運用は業務部門の判断になること(優先が低いことが多く実運用にいたらないことが多い)
- 業務部門におけるスキル不足、関与の低さ
- 情シスで導入すると情シス任せになって利用が広がらないので、部門で導入してもらっている。ただし、IT的なスキルが低いので、進捗(しんちょく)がいまひとつ
- ユーザー部門での開発を想定していたが、結局IT部門で開発することになってしまった
- 各部署でのロボットの開発が進まないこと、また業務自動化の分析が甘くかつ効果があまりないものを選定されるため改善効果が低い
- 非IT部門の業務改善に対する関心度の低さ
他にも、「野良ロボット・野良ワークフローなどガバナンス問題への対応」は14.4%、「自動化ツールの社内浸透のための説明会を開催」は11.5%とポイントが開いたことから、情報システム部門が介入できていない項目が分かる。業務自動化における不満を抱える企業は、上記のギャップを埋めることで業務自動化のあるべき姿に近づけるかもしれない。
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