東京農業大学が「消されないNAS」を導入 研究データを守る新たな対策
研究データを守るには、利用者への教育だけでは限界がある。学生が毎年入れ替わる東京農業大学の研究室では、誤操作やランサムウェアによるデータ消失に備え、60日間データを変更・削除できないNASをバックアップ先として導入した。
研究室では、学生や教員が日々大量のデータを扱う。一方で、年度が変われば利用する学生も入れ替わる。どれだけセキュリティ教育を徹底しても、誤操作やマルウェア感染、ランサムウェアによるデータ消失のリスクを完全になくすのは難しい。
特に、長期間の研究で蓄積した生データや分析データが重要な意味を持つ分野では、一度失ったデータを取り戻すことは容易ではない。そこで重要になるのが、データを「保存する」だけでなく、不正な変更や削除からバックアップそのものを守る仕組みだ。
こうした課題に対し、東京農業大学厚木キャンパス農学部生物資源開発学科の遺伝情報利用研究室は、バッファローの4ドライブNAS「TS5420RN0404」を採用した。
バッファローは2026年9月24日、同研究室の導入事例を公開した。研究室では、ゲノム解析の生データや論文作成用の分析データなど、研究上重要な一部データのバックアップ先として同NASを利用している。
課題は、ゲノム解析で扱う「膨大なデータ」をどう守るか
同研究室では、キャベツや白菜などアブラナ科植物を中心に、世界各地から集めた素材植物を使って品種改良に関する研究を進めている。ゲノム解析によって遺伝子情報を調べるため、日々扱うデータ量も大きい。
既存のファイルサーバに加え、66TBのクラウドも利用していて、研究データを複数の環境に保存していた。だが、データを複数箇所に保存するだけでは、誤操作やランサムウェアなどによるデータの変更・削除を防げない。
研究室のファイルサーバには約60人の学生と教員が個人PCからアクセスするほか、USBメモリも利用する。しかも、学生は年度ごとに入れ替わる。利用者一人一人にセキュリティ教育をするだけではなく、万が一操作を誤ったり、マルウェアやランサムウェアに感染したりしても、重要な研究データを復旧できる環境を用意する必要があった。
「バックアップを消されない」仕組みを採用
そこで研究室が採用したのが、ハードウェアとソフトウェアの両方を国内メーカーが提供する「TS5420RN0404」だ。重要な一部の研究データを同NASへバックアップし、複数のNASやクラウドへのバックアップと組み合わせて多重化した。
また、研究室ではスナップショットを頻繁に取得し、保護期間を上限の60日に設定している。保護期間中は管理者権限でも対象データを変更できないため、誤操作だけでなく、不正な変更や削除、電子的な破壊に対する備えになる。
万が一データが書き換えられた場合でも、過去のデータ履歴を参照できるため、復旧につなげられる。「バックアップを取っているから安心」ではなく、バックアップ先まで攻撃や操作ミスから守るという考え方だ。
「人を教育する」だけではなく、仕組みでリスクを抑える
同研究室では、大学としてセキュリティやデータの取り扱いに関する教育にも取り組んでいる。だが、年度ごとにサーバ利用者が変わる以上、人的な注意だけでリスクをなくすことには限界がある。
同研究室の小松憲治准教授は、NASには常にリスクがあることを前提として、多重バックアップや保護策を採る考えを示している。
今回の導入では、研究データの一部を国産・国内管理のNASにも保存する体制を整えた。従来利用していたファイルサーバやクラウドは外国製品だったため、バックアップ先を分散すると同時に、国内メーカー製品を加えることでデータ保護の選択肢を広げた形だ。
選定に当たっては、不変スナップショットの長い保護期間に加え、国内メーカー製品であることも採用理由になったという。
ランサムウェアだけでなく「災害」も想定
導入後は、研究データを国産NASへ二重保存できることによる安心感が高まったほか、誤操作への備えや、マルウェア・ランサムウェア感染時のネットワーク分離、データ復旧にもつなげやすくなった。
小松准教授は、シンプルさと安定性を重視した設計で、ファイルサーバとして扱いやすい点を生かして運用しているという。
今後は、別キャンパスなどに物理的なオフサイトバックアップを設けることも候補としており、火災や地震などによるデータ喪失リスクの分散も視野に入れている。
研究データを守るうえで重要なのは、単に容量の大きなストレージを用意することではない。利用者の入れ替わりや操作ミス、サイバー攻撃、さらには災害まで想定し、「データを失うことを前提に、どう復旧できる状態をつくるか」が問われる。
今回の東京農業大学の事例は、研究室という比較的利用者が入れ替わりやすい環境で、人的対策だけに頼らず、バックアップと不変スナップショットを組み合わせて研究データを守る取り組みだ。
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