「中身が分からない」COBOL資産をどうする? AIで設計書を生成する新手法を発表
設計書が不足し、仕様を把握できる技術者も限られる。レガシーシステムの保守や知識継承が課題となるなか、COBOL PARKはAIでCOBOL資産を解析し、基本設計書・詳細設計書を生成するツールを開発した。
長年にわたって企業の基幹業務を支えてきたCOBOLシステム。だが、設計書が不足していたり、現行プログラムの処理内容がドキュメントに反映されていなかったりすると、改修のたびにソースコードを調査して仕様を把握する必要がある。さらに、システムを熟知した技術者の世代交代が進めば、業務知識や保守ノウハウの継承も困難になる。
こうした課題に対し、COBOL PARKは、COBOLのソースコードやジョブ制御言語(JCL)などを解析し、基本設計書・詳細設計書を生成する「ドキュメントリバースソリューション」を開発したと発表した。AIを利用して既存のCOBOL資産を可視化し、設計情報の整備や最新化、保守開発の高度化、技術者間の知識継承を支援する。
設計書がない、仕様が分からない……COBOL保守を難しくする「情報不足」
メインフレームは現在も多くの企業の基幹業務を支える重要なシステム基盤だ。一方、長年にわたって改修を重ねてきたシステムでは、設計書が十分に整備されていなかったり、実際のプログラムとドキュメントの内容が一致していなかったりすることがある。
こうした環境では、既存プログラムを改修する際に担当者がソースコードを読み解き、処理の流れや他システムとの連携、データの入出力などを調べなければならない。変更によってどの機能に影響が及ぶのかを判断するにも、現行仕様の把握に時間がかかる。
加えて、COBOLをはじめとするメインフレーム技術に精通した技術者の世代交代も課題だ。長年の経験で培われた業務知識や設計ノウハウが特定の担当者に集中していると、その人材が異動・退職した際に、保守開発を継続するための知識を十分に引き継げない恐れがある。
こうした設計情報の不足や知識の属人化は、日々の保守改修だけでなく、既存システムの構造を把握して進める必要があるモダナイゼーションの障壁にもなり得る。
COBOLのソースコードから基本設計書・詳細設計書を生成
COBOL PARKが開発したドキュメントリバースソリューションは、現行のCOBOLソースコードやJCLなどをAIで解析して設計情報をドキュメントとして整理する仕組みだ。
プログラム構造や処理内容、ジョブ構成、入出力情報などを解析して基本設計書や詳細設計書を生成する。ソースコードだけでは把握しにくい処理の流れを設計情報として可視化することで、既存ドキュメントの補完や最新化を支援する。
生成対象は、システム概要やシステム間インタフェース仕様、機能仕様、画面仕様、帳票仕様、データ仕様、ジョブ仕様、ファイル仕様、コード管理などだ。COBOL PARKがメインフレーム開発で培ってきた設計標準や業務知見を生かし、同社の標準に準拠した形式で成果物を生成する。
生成した設計書は、保守改修時の設計変更やレビューに利用できるほか、業務知識や設計ノウハウを共有するための資料としても利用できるという。
同社は、複数のAIソリューションを組み合わせることで、生成内容の整合性や推論精度の向上にも取り組んだ。AI活用で課題となるハルシネーション(事実と異なる情報の生成)や、解析過程での推論停止、情報の欠落を可能な限り抑制するとしている。また、設計情報の図表化や、メインフレーム固有の用語を含む日本語の設計書生成にも対応する。
AIが設計書を作れば、属人化は解消するのか
設計書を生成できれば、ソースコードの調査結果をドキュメントとして整理し、関係者間で共有しやすくなる。これまで特定の技術者が時間をかけて把握していた処理内容を可視化できれば、保守改修時の調査負担を軽減し、知識継承を進めるための土台にもなる。
ただし、AIによる設計書生成だけで、既存システムの保守に関する課題が全て解消されるわけではない。生成された設計情報が実際の業務仕様をどこまで正確に表現できているかを確認し、業務上の意図や例外処理など、ソースコードの解析だけでは判断しにくい情報を補う必要もある。
特に、長年にわたって運用されてきた基幹システムでは、プログラムの処理内容を把握することと、その処理が業務上どのような意味を持つかを理解することは同じではない。設計書の生成を、業務知識の整理や技術者間のレビューと組み合わせて活用することが重要になる。
COBOL PARKは、メインフレーム領域で培った業務・技術知見や標準ドキュメント資産を活用し、実務で利用できる設計書の生成を目指す。なお、今回のソリューションで対応するのは基本設計書・詳細設計書の生成であり、影響分析や実装、テストなどの支援機能は今後順次開発する予定だ。
設計書の生成から、保守開発全体のAI支援へ
COBOL PARKは今後、今回生成した設計情報を基に、影響分析支援、実装・改修支援、テスト支援、知識継承支援を行うAIエージェントの開発を進める方針だ。
次のステップとして、まずは有識者が担っている資産分析や調査作業の支援に取り組み、保守開発業務全体の高度化を目指す。
既存のCOBOL資産を解析して設計情報を整備することは、現行システムの理解を深めるだけでなく、将来的な改修やモダナイゼーションを検討するための基盤にもなる。設計書が不足しているシステムでは、刷新の是非を判断する前に、まず現状の構造や処理内容を把握する必要があるためだ。
AIによる設計書生成がこうした調査作業をどこまで効率化できるかは、今後の活用における重要なポイントとなる。生成物の精度やレビューにかかる工数、実際の保守改修での利用実績などが明らかになれば、レガシーシステムを抱える企業にとっても導入効果を判断する材料となりそうだ。
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