GMO、生成AIの「答えるだけ問題」を解消へ 社内ナレッジを業務フローにつなぐ
生成AIに社内規定やマニュアルを参照させても、その後の申請やデータ登録は人手に頼る場合がある。GMOプライム・ストラテジーとGMO AIコネクトは、RAGと業務自動化基盤を連携し、社内ルールに沿った判断から業務処理までの自動化を目指す。
社内規定やマニュアルを生成AIに読み込ませても、回答を受け取った後の申請やデータ登録、関係者への通知などは、人が手作業で進めなければならない。生成AIを業務に導入しても、回答を得ることと実際の業務を完了させることの間には、依然として隔たりがある。
社内規定や業務マニュアルが改定された際に、業務自動化の仕組みに設定した判断基準まで更新する必要があれば、運用負荷も増える。社内ナレッジの活用と業務の自動化を、どう一体化するかが課題となっている。
こうした課題に対し、GMOプライム・ストラテジーとGMO AIコネクトは2026年10月19日、企業向けRAG(検索拡張生成)ソフトウェア「GMO AI RAG」と、iPaaS/AIエージェント基盤「JOINT AI Flow byGMO」の連携を開始した。社内文書を参照して回答するだけでなく、その内容を業務フローの判断や処理につなげられるようにする。RAG基盤を個別開発することなく、社内ルールに沿った業務自動化を目指す。
社内規定をAIに読ませても、最後は人が作業する
企業では、就業規則や業務マニュアル、申請手続きのガイドラインなど、さまざまな社内文書が日々の業務の判断基準となっている。生成AIを活用すれば、こうした文書を検索して必要な情報を回答させることができる。
その仕組みの一つが、RAGだ。社内文書などから関連情報を検索して、その内容を基に生成AIが回答することで、企業固有の情報を業務に生かせる。
ただし、社内ルールに基づいた回答を得られても、それだけで業務が完了するわけではない。稟議(りんぎ)や申請に関する問い合わせにAIが回答できても、申請情報の登録や関係者への通知、後続システムへのデータ入力などは、別途対応が必要になる場合がある。
一方、複数の業務システムやクラウドサービスを連携させて処理を自動化する仕組みもある。だが、業務フローの中で生成AIに判断させる際、社内規定やマニュアルなどの情報を参照できなければ、企業固有のルールを踏まえた処理が難しくなる。
GMOプライム・ストラテジーとGMO AIコネクトは、こうした「社内ナレッジを検索・回答する仕組み」と「業務を実行する仕組み」の分断に着目した。
RAGと業務自動化を接続、社内ルールに沿った処理を目指す
今回連携するのは、GMOプライム・ストラテジーの「GMO AI RAG」と、GMO AIコネクトの「JOINT AI Flow byGMO」だ。
GMO AI RAGは、社内文書を検索して、その内容を基にAIが回答するための基盤だ。「Microsoft SharePoint」「Google Drive」「Windows」共有フォルダーなどに保管されたファイルをAIが参照し、企業固有のナレッジを基に回答できるようにする。
JOINT AI Flow byGMOは、業務システムやクラウドサービスをつなぎ、ワークフローやAIエージェントを活用した業務自動化を支援する基盤だ。
今回の連携で、JOINT AI Flow byGMOで構築した業務ワークフローからGMO AI RAGのナレッジが参照可能になる。RAGが判断の根拠となる社内情報を提供し、ワークフロー側でその情報を使った判断や処理をする構成だ。
これにより、社内規定に基づく判断を伴う稟議や申請などについても、社内ナレッジの参照から後続の処理まで一つの流れに組み込めるようになる。
また、両サービスを連携させるためにRAG基盤を個別に開発する必要はなく、ノーコードで業務ワークフローを構築できる。情報システム部門にとっては、ナレッジ検索基盤の構築やシステム間の連携開発にかかる負担を抑えられる点が特徴だ。
なお、連携サービスを利用するには、GMO AI RAGとJOINT AI Flow byGMOのそれぞれの契約が必要だ。
規程の改定にともなう設定変更を軽減する
今回の連携で想定される活用例の一つが、稟議や申請に関するワークフローだ。
従来、業務フローの中に判断基準となる社内規定を個別に設定していた場合、規定が改定されるたびに、ワークフロー側の設定も見直す必要があった。規定を管理する業務部門と、システムを管理する情報システム部門の双方に、更新作業の負担が生じる可能性がある。
今回の連携では、判断基準となる規定をGMO AI RAGの参照先として管理する。担当者が普段利用しているストレージ上の規定ファイルを更新すれば、次回の取り込み以降、AIワークフローが参照する内容にも更新が反映される仕組みだ。
これにより、規定そのものの管理と、業務を自動化するワークフローの管理を切り離して運用できる。規定の改定に合わせてワークフローごとの判断基準を個別に修正する負担を減らせるとしている。
ただし、実際にどのタイミングで更新内容が反映されるかは、ファイルの取り込みや同期の運用に依存する。規定の改定が即時に全ての処理へ反映されるという意味ではなく、更新後の情報が適切に取り込まれる運用設計も重要になる。
製造現場では、マニュアルと生産実績を照合して原因究明を支援
連携の活用例としては、製造現場で生産ラインに異常が発生した場合も想定している。
担当者が生成AIに質問すると、GMO AI RAGを通じて対処マニュアルや過去のトラブル事例を参照するとともに、JOINT AI Flow byGMOを通じて基幹システムの生産実績データを取得する。これらの情報を照合することで、異常の原因を絞り込む作業を支援する。
この例では、社内文書の検索だけでなく、業務システムに蓄積されたデータも組み合わせる点がポイントだ。マニュアルに記載された一般的な対処方法と、実際の生産状況を照らし合わせることで、担当者が原因を調べる際に必要な情報をまとめて確認できるようにする。
もっとも、AIが提示する原因や対処方法をそのまま採用できるかどうかは、参照データの品質や業務上のリスクによって異なる。製造設備の操作など、安全性に関わる判断では、人による確認や承認を組み込むことも重要となる。
社内ナレッジを「検索する」段階から「業務で使う」段階へ
生成AIの企業利用では、社内文書を検索して回答する仕組みを整備するだけでなく、その情報を実際の業務にどう結び付けるかが課題となる。
RAGによって社内情報を参照できるようにしても、後続の業務処理が別のシステムや手作業に分かれていれば、自動化できる範囲には限界がある。一方、業務フローを自動化しても、社内規定や最新の業務ルールを適切に参照できなければ、意図しない処理につながる可能性がある。
今回の連携は、社内ナレッジを扱う基盤と、業務システムを連携させる基盤を接続することで、この分断を解消しようとするものだ。両社は今後、対応するユースケースを拡充するとともに、導入企業の課題に応じた提案活動を共同で進める方針としている。
企業にとっては、生成AIが回答を生成できるかどうかだけでなく、その回答をどの業務で利用し、どこまで自動実行させるかが重要になる。社内ナレッジの更新管理、AIの判断の検証、処理の承認フローなども含めて設計することが、生成AIを実際の業務改善につなげる上でのポイントとなりそうだ。
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