会議の記録を残さない人が50.2% AI議事録が便利でも企業に浸透しない理由
会議の内容を記録していない人は50.2%に上る一方、議事録作成ツールの利用者では73.2%が負担軽減を実感している。なぜツールの活用は進まないのか。調査結果から、議事録作成の実態とAI活用の可能性、導入に向けた課題を探る。
会議の内容を後から確認したいのに、決定事項や担当者が分からない。議事録を作成する必要性は感じていても、記録や整理に手間がかかり、十分に対応できていない。会議で何が決まり、誰が次のアクションを実行するのか。議事録の記録と共有が、見えにくい負担になっている。
法人向けSaaS比較サイト「アスピック」を運営する一般社団法人日本クラウド産業協会が、全国の会社員と経営者、役員241人を対象に実施した「議事録作成に関するアンケート調査」によると、普段の社内会議や打ち合わせで「特に何もしていない」と回答した人は42.7%に上った。また、会議内容を「特に記録していない」人も50.2%と半数を占めた。
Web会議ツールの文字起こし・要約機能や専用の議事録作成ツールの利用率は17.0%にとどまる一方、利用者の73.2%は議事録作成の負担が軽減したと回答した。ツールの活用はまだ限定的だが、利用者の多くはその効果を実感している。
会議の半数で記録なし、議事録を毎回作る人はわずか16%
調査では、普段の社内会議や打ち合わせで議事録を作成しているかを尋ねたところ、「毎回、議事録を作成している」は16.2%、「必要な会議だけ、議事録を作成している」は17.8%だった。
一方、「簡単なメモだけ残している」は23.2%、「特に何もしていない」は42.7%となった。正式な議事録を毎回作成する人は2割に満たず、会議の記録方法は職場や会議によって差があることが分かる。
会議内容の記録方法についても、「特に記録していない」が50.2%で最多となった。「PCや手書きなどで、人力で記録している」は32.4%で、何らかの形で記録を残す場合も、人手に頼っているケースが目立つ。
会議の記録が残っていなければ、後から決定事項や議論の経緯を確認する際に、参加者の記憶や個別のメモに頼らざるを得ない。担当者間で認識のずれが生じたり、会議後に内容を確認するためのやりとりが発生したりする可能性もある。
議事録の作成は、会議の内容を保存するだけの作業ではない。決定事項を共有し、次のアクションにつなげるための業務でもある。作成の負担が大きいことが記録を残すハードルになっているなら、記録や整理の一部をツールで補うことも選択肢となる。
議事録ツール利用者の73.2%が負担軽減を実感
では、議事録作成ツールを利用すると、実際に負担は軽くなるのか。
会議内容の記録方法として、Web会議ツールの文字起こし・要約機能、または専用の議事録・文字起こしツールを利用していると回答した41人に尋ねた設問では、「大幅に減った」が31.7%、「ある程度減った」が41.5%だった。両者を合わせると73.2%に達した。
作成された議事録や文字起こしの実用性についても、「ほぼそのまま利用できる」が9.8%、「少し修正すれば利用できる」が78.0%となった。合計87.8%が、ほぼそのまま使えるか、少し手を加えれば利用できると評価している。
この結果からは、議事録作成ツールが、全ての作業を自動化するものでなくても、記録や文章整理の手間を減らすために活用できることが分かる。
例えば、会議中は議論や意思決定に集中し、会議後にAIが生成した文字起こしや要約を確認する。必要に応じて内容を修正し、決定事項や担当者、期限などを整理して共有する。こうした運用であれば、議事録を一から書き起こす作業を減らしながら、記録の精度を人の目で確認できる。
ただし、今回の調査で負担軽減や実用性を評価したのは、ツールを利用している41人だ。回答者全体の利用率は17.0%にとどまっており、こうした効果が企業全体に広く浸透しているとまでは言えない。
AIの要約は便利でも、正確さへの不安は残る
議事録作成ツールを使えば、全ての問題が解決するわけではない。利用者が不満や不安に感じていることとして、最も多かったのは「要約内容の正確さ」で48.8%だった。
次いで、「文字起こしの精度」と「専門用語や固有名詞を正しく認識できない」がいずれも39.0%、「発言者を正しく判別できない」が22.0%、「情報漏えい・セキュリティ」が22.0%となった。
会議では、専門用語や社内独自の略称が使われることも多い。発言の一部が正しく認識されなかったり、要約によって発言の意図や前提が抜け落ちたりすれば、議事録をそのまま業務に利用するのは難しい。
特に、経営判断や顧客との商談、人事、契約などに関する会議では、誤った記録や意図しない情報共有が業務上のリスクにつながる可能性がある。効率化を優先するあまり、生成された文章を確認せずに共有する運用は避けたい。
導入時には、単に文字起こしの精度や要約の機能を比較するだけでなく、社内の専門用語への対応、発言者の識別、アクセス権限の管理、データの取り扱いなども確認しておく必要がある。
人力で記録する人の6割がAI機能に関心
今後、有料でも利用したい機能として最も多かったのは「AIによる要約」で21.6%。次いで「高精度な文字起こし」が18.7%、「話者の自動識別」が11.2%、「過去の議事録・会議内容の検索」が10.8%、「決定事項・ToDoの自動抽出」が9.1%だった。
一方、「特にない」は58.9%と過半数を占めている。AI機能に対する関心が一様に高いわけではなく、費用をかけてまで導入する必要性を感じていない人も多いようだ。
注目したいのは、現在、人力で会議内容を記録している人の回答だ。この層では、AIによる要約や高精度な文字起こしなど、何らかの有料機能を選んだ人が60.3%に上った。「特にない」は39.7%だった。
この結果から、現在の記録方法に人手をかけている層の中にも、AIによる効率化への関心があることが分かる。ただし、有料機能への関心が、そのまま導入意向や実際の購入につながるとは限らない点には注意が必要だ。
企業が導入を検討する際には、まず議事録作成にどの程度の時間がかかっているのか、記録漏れや共有の遅れがどのくらい発生しているのかを把握したい。その上で、要約、文字起こし、ToDo抽出などの機能のうち、自社の課題を解決できるものから試す方法が考えられる。
「完全自動化」より、確認・修正を前提とした運用から
今回の調査では、会議内容を記録していない人が半数を占める一方、議事録作成ツールの利用者では7割超が負担軽減を実感し、約9割が生成された記録を実用的と評価した。
もちろん、調査対象者は241人であり、回答結果だけで企業全体の実態を断定することはできない。また、ツールの利用率が低い理由や、導入を妨げている要因そのものを直接明らかにした調査でもない。それでも、会議の記録を残す負担を軽減し、後から確認できる情報を増やすことは、企業の業務改善を考える上で検討する価値がある。
最初から議事録作成の完全自動化を目指すのではなく、AIによる文字起こしや要約を下書きとして利用し、人が内容を確認・修正した上で共有する。決定事項やToDoの抽出、過去の議事録の検索なども、必要に応じて段階的に取り入れていく。
議事録作成ツールの導入を、単なる文書作成の効率化で終わらせないためには、記録を残すこと自体を目的にするのではなく、会議で決まったことを確実に共有し、次の行動につなげる仕組みまで考えることが重要になりそうだ。
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