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ワークフローのモバイル利用、使い勝手の真相は?IT導入完全ガイド(3/3 ページ)

» 2014年05月12日 10時00分 公開
[西山 毅レッドオウル]
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スマートフォン専用の画面が提供されているか

 特にスマートフォンで承認作業を行いたいと考えている企業にとって、非常に重要となるチェックポイントだ。前段でも述べた通り、スマートデバイス対応をうたっている製品でも、よくよく調べてみるとマルチブラウザ対応を実現しているという意味で、スマートフォン専用のユーザー画面が提供されているわけではない場合がある。

 画面の大きいタブレット端末なら、PC画面のイメージのままでも操作にストレスは感じないかもしれないが、スマートフォンの場合には、画面を拡大しながらの操作が必要となり、承認者にとっては大きなストレスとなる。結果、せっかくのスマートフォン対応機能も利用されなくなるといったことにもなり兼ねない。基本的なことだが、何よりもまずベンダーに確認することが肝要だ。

自社が利用しているモバイルOSに対応しているか

 現実的には、iOSに対応しているか、もしくはAndroidに対応しているかということだが、現状で専用画面が提供されているのはやはりiOSが前提となるようだ。Android対応といっている製品でもマルチブラウザ対応というだけで、専用画面が提供されているわけではない場合が多い。

 Androidには数多くのバージョンが存在するので、ベンダー側も個別対応はするものの、正式な製品として全てのAndroidのバージョンに専用画面を提供するという対応は、現実的には難しいようだ。

ユーザー企業側での柔軟な改修が可能か

 ここからはワークフロー製品の全般的な選定ポイントとなるが、ワークフローでは運用が進むうちに、申請書類にこういう項目を追加したいとか、こんな人にも回したいといったニーズが出てくるようになる。

 その際に構造が複雑な製品の場合、仮にイニシャルコストが安かったとしても、毎回改修をベンダーに依頼しなければならず、その都度、コストがかかることになる。さらに作り込み過ぎると、その後の保守も大変だ。こうした状況が、現行製品のリプレースを検討するユーザー企業の大きな動機の1つになっている。

 そこで運用フェーズを考えたときのチェックポイントとして挙げられるのが、カスタマイズの自由度だ。つまり、ユーザー企業側で必要に応じた改修ができるかどうかで、現在では管理画面の設計や承認ルートの制御、項目数の追加などをWeb画面から行うことができる製品も提供されている。

他システムと柔軟な連携ができるか

 ワークフローツールを連携させる場面が一番多いのは、やはり基幹システムだ。中でも経費精算や旅費精算に関わる会計システムとのつながりが一番大きいだろう。また現場のさらなる業務効率アップを考えた場合には、グループウェアや文書管理システムもニーズの高い連携先だ。

 今回の取材で聞いた話では、ユーザー企業から要望ベースで挙がってきている案件として、新規取引先の申請をワークフローで回す際、外部の与信管理サービスの情報を取り込み、参考資料として使いたいというものがあるという。製品選定時には、業務部門のニーズに合致した連携を確保できるかも、十分に見極める必要がある。

エンドユーザーの使い勝手はいいか

 機能比較表では漏れがちで、しかも後から意外に響いてくるのが、画面遷移の数だ。言い換えれば、「承認処理のためのクリック数」だ。

 よくあるのが、まずワークフローツールのトップ画面を開き、次に承認一覧を開き、そして個別の申請画面を開いて確認は終わったが、次の人にフローを回そうとすると、さらに別の画面に飛ばされて、そこで次の人を選択したり、添付ファイルの有無やメールも一緒に送信するかを聞かれたりといった処理が必要となるケースだ。

 しかし、申請内容を確認する同じ画面内で、次の人の選択などまでできれば、次の1画面は必要ない。細かい点だが、ユーザーの使い勝手を考えれば、極力少ない手数でワークフローを回せるかどうかも、チェックしておきたいポイントだ。

ライセンス体系が自社の利用形態に即したものになっているか

 一般的なライセンス体系としては大きく3つで、ユーザー1人当たりへの課金、サーバ1台当たりへの課金、そして同時接続ユーザー数への課金だ。

 ユーザー企業にとって現実的なのは、やはり同時接続ユーザー数でのカウントだが、ユーザーライセンスの場合、特に1万人、2万人といった従業員数を抱える大企業では、その分のライセンスを登録しておかなければならず、またユーザー数が増えれば追加でライセンスを購入する必要もある。

 実際に今、ユーザーライセンスの製品を使っているが費用的に合わず、リプレースを検討する企業は多いという。ただしこれはあくまでユーザー規模の問題で、小規模企業ならユーザー課金のクラウドサービスを利用することで、自社でIT資産を保有することなく、ワークフローの機能を利用することができる。

上司不在で手間激増、初期設定ミスに潜むワークフローの落とし穴

 ワークフローツールでは決裁者が不在のとき、代理の人の承認を可能にする代理承認機能を提供している製品がある。しかし、現実の場面では、せっかくの代理承認がうまく機能していないケースが多々あるようだ。

 それというのも、代理承認を行うためには、決裁を行う役職者自身が「自分の代理を誰にするのか」をシステムに登録する必要があるが、多くの場合、これが行われていない。IT部門がそこまでチェックすることは難しく、結果、出張中の上司にワークフローが回り、そこで申請が止まってしまったため、現場からIT部門に、その上司を飛ばしてフローを回す依頼が入り、IT部門が手動で次の人に回すということを行っているという。

 ツール本来の機能を有効活用してもらうためにも、現場での運用体制にはよくよく注意を促しておいたほうがいいだろう。

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