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きっかけはRPA――旭シンクロテックの事例に見る、DX推進の秘訣

企業が成長を続けるためには社内におけるDX推進が不可欠だとの認識が広まる一方で、「何から手をつければよいか分からない」という声もある。RPAによる業務自動化からDXの流れが加速した企業を紹介する。

» 2021年04月26日 10時00分 公開
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 新型コロナウイルスの影響により、DX推進の機運が高まっている。リスクを回避しながら企業が成長を続けるためには社内におけるDX推進が不可欠だとの認識が広まる一方で、「何から手をつければよいか分からない」「必要な人財が確保できない」といった声が聞かれるのも事実だ。特に人財不足が深刻な中小企業では、その傾向が顕著だといえる。

 1946年創業、従業員数207人(2021年3月末時点)、建築設備、紙パルプ設備、環境エネルギー設備、産業設備等の各設備の設計・施工で実績のある旭シンクロテック(東京都港区)では、RPAで業務を自動化する様子を社内で披露したことにより、DX化の流れが加速したという。中小企業におけるDX推進の秘訣について、担当の山下昌宏氏(管理部 IT担当マネージャー)に話を聞いた。

DXのきっかけとしてRPAを提案し、2業務を自動化

山下昌宏氏 山下昌宏氏(旭シンクロテック 管理部 IT担当マネージャー)

――山下さんがDX推進担当になった経緯についてお聞かせください。

 私は2020年7月に入社したのですが、前職で業務改善を担当していました。新たな職場でこれまでの経験を生かしたいと考えていたところ、旭シンクロテックがDX推進担当を探していることを知ったのです。現在は管理部に所属し、DXを推進するプロジェクトマネージャーとして、同じチームのRPA開発リーダーたちと協力しながら業務効率化を進めています。

 当社の業務は紙を扱うものが非常に多く、従業員もITに関する知識を少しずつ身につけていっている状態です。このような状況の中でいかにしてDXを推進するかを考えた時に、前職の経験からRPAのデモロボットを作って実際に動いている様子を見てもらうことを思いつきました。「DX化を進めていきましょう」と言ってもピンとこない人が多いでしょうが、普段自分が行っている業務が自動化される様子を見れば、多くの人が協力してくれるのではないかと考えたのです。

――どのようなデモロボットだったのですか。また、社内の反応はいかがでしたか。

 当社では図面上のデータで配管施工業務の進捗管理をしているのですが、同じデータを現場の担当者が進捗表にも別で入力しており、この作業を自動化できないだろうかと考えました。そこで図面から進捗管理に関するデータを取り出してCSV化し、データをコード変換して進捗表に読み込むテストロボットを1週間ほどで作成しました。

 デモロボットは役員をはじめ、全国に7カ所ある各営業所のマネージャーに見てもらいました。ロボットというと工場で作業するようなロボットを想起しがちですが、稼働している様子を見せることで、RPAのロボットについて視覚的に理解してもらうことができたと思います。

 また、デモロボットで自動化した作業は担当者にとって負担が大きいものだったため、高い効果が見込めることがすぐに伝わり、その後もRPAによる業務自動化を後押ししてもらえるようになりました。この時点で役員に「RPAによる業務の自動化にはコストをかける価値がある」と認識してもらえたことは、その後の取り組みをスムーズに進める上で非常に重要だったと思います。

――実際に自動化している様子を見せることで理解が得られたのですね。その後の成果について教えてください。

 現在は、請求書データを会計システムに登録する業務と勤怠処理の業務を、AI insideのAI-OCR「DX Suite」と、ユーザックシステムの「Autoジョブ名人」「Autoメール名人」「TranSpeed」などのソリューションを使って自動化しています。

 請求書は1カ月におよそ600枚、多いときで1000枚を処理しなくてはなりません。紙かPDFで送られてくる請求書の内容をチェックして会計システムに登録する作業に、これまでは請求書1枚当たり10分程度の時間がかかっていました。

 現在は請求書をDX Suiteでデータ化し、そのデータをAutoジョブ名人で会計システムに自動で登録しており、トラブルなどが起こった場合にはAutoメール名人経由で管理者にメールが届くようにしています。こちらのロボットは、今後時期を見て全国の営業所に展開させることで、1カ月におよそ100時間程度の効果を創出できる見込みです。

請求書関連業務を効率化 DX SuiteとAutoジョブ名人、Autoメール名人を組み合わせることにより、請求書関連業務を効率化

 もう1つの勤怠処理の業務というのは、新たなシステムに置き換えるまでの仮措置として作成したロボットで、残業が多い社員の上長に対して36協定関連の書類を添付送信する処理です。

 2020年12月までは、人事総務グループが毎日約1時間かけて手作業で残業時間の集計を行っていました。現在は一連の流れを全て自動化し、Autoジョブ名人で残業時間を集計してTranSpeedでデータの変換を行い、Autoメール名人でメールを送付することで月約30時間の効果を創出しています。人事総務グループの担当者からは「ミスがなくなった」「当業務で固定された時間が解放されたことで、業務の幅を広げられるようになった」と好評です。

勤怠処理業務の自動化 煩雑な勤怠処理の業務をAutoジョブ名人、Autoメール名人、TranSpeedにより自動化

トライアル期間の長さや保守サービスが決め手となり、「Autoジョブ名人」を採用

山下昌宏氏 トライアル期間の長さと保守サービスが「Autoジョブ名人」採用の決め手になったと振り返る山下氏

――最初に社内で披露したデモロボットは「Autoジョブ名人」で作られたのですか。

 はい、そうです。以前の職場では違うRPAツールを使っていたのですが、情報システム部門が利用するには難易度が低いものの、一般ユーザー部門が開発、管理するには難易度が高く、内製化を目指すのは難しい印象がありました。そこで社内で複数のRPAツールを比較検討した結果、使いやすさに加えてトライアル期間の長さが決め手となり、Autoジョブ名人の採用を決めたのです。

 RPAツールのトライアル期間はほとんどが2週間から1カ月程度ですが、Autoジョブ名人の場合は2カ月でした。2カ月というのは、自分たちのやりたいことがAutoジョブ名人で実現可能かを検証するのに十分な期間でしたね。最初の1週間でデモロボットを作成しただけでなく、先ほどお話しした勤怠処理の業務を自動化するロボットも、下地を完成させるところまでこぎ着けることができました。トライアル期間中に、実務に適用できるロボットが作れるのは非常に大きいと思います。

 また、保守サービスがしっかりしていることも、採用に至った理由の一つです。トライアル期間中に分からないところが出てくると、その都度担当者にメールで質問して解決していたのですが、RPAの開発やサポート経験が豊富なエンジニアが対応してくれるため、心強かったですね。

 ツールの採用を決めて製品版を使うようになってからも、同じ担当者にサポートいただいています。メールや電話、リモートといったさまざまな方法で、以前の質問内容を踏まえた上で回答していただけるため、これまでの経緯を逐一説明する必要がありませんし、原則的に翌日までに回答していただけるので、開発が止まってしまうこともありません。

 こういったサービスが利用できるのであれば、内製化も視野に入れられるのではないかと思いました。また、保守料金が製品版のパッケージ料金に含まれていることも大きなポイントです。相談する時間が増えると料金が加算されるといったことがありませんので、安心して利用できます。

――トライアル期間に納得がいくまで試せることは大きいですね。経験豊富なサポーターが現場に伴走してくれることも、内製化実現のためには重要です。内製化に向けて、ほかに工夫されたことがあれば教えてください。

 本社の各部署にDX推進リーダーを設けたことです。内製化を成功させるためには、できるだけ多くの人に当事者意識を持ってもらって部署内の結束を強くする必要があり、DX推進リーダーはマネージャーなどに担当してもらうのではなく、可能な限り一般職から選出しています。リーダーとして部署を引っ張っていくことで、業務全体を把握し推進していく力を身につけ、会社全体のDX推進に貢献できる人財に成長してほしいとの考えからです。

 そのためDX推進リーダーには、さまざまな業務を私たちと一緒に行ってもらっています。例えば自動化する業務を選定する際に、各部署にお願いして全ての業務を書き出してもらったのですが、その一つ一つの業務について、私たちIT担当チームと各部署のDX推進リーダーで内容の確認を行いました。業務を一緒に見ていくことで初めて「この業務は自動化できるのではないか」「この業務はやめてもよいのではないか」といった判断ができるようになります。今後も業務棚卸は半年に一度の割合で行う予定であり、各DX推進リーダーが当事者意識を持って進めてくれることを期待しています。

DX推進に必要なのは「実績につながるものを作って見せること」と「人間関係」

山下昌宏氏 丁寧なコミュニケーションで社内を巻き込み、より良いDXに進化していきたい

――今後のDX推進計画について教えてください。

 現在考えていることは3つあります。1つ目は、AI-OCRを使って紙文書のデータを可能な限りデジタル化することです。紙文書は管理業務であれば見積書や注文書や納品書、現場であれば現場帳票など、種類は多岐にわたります。膨大な量ですので、「自動化につながるか」「自動化によってどのくらいの効果が見込めるか」を基準として優先順位をつけ、DX推進リーダーたちと協力しながらデジタル化を進めていくつもりです。

 2つ目は、その膨大な量のデジタルデータを使ってデータベースを作り、分析や解析を行うことでより弊社にとって望ましい形の業務効率化を実現することです。これはまだ構想段階ではありますが、実現できれば業務効率化の効果が飛躍的に向上すると考えています。

 3つ目は各部署にロボットを作れる人を最低2人は確保することです。最初から現在稼働している請求書データを登録するような難易度の高いロボットを作るのは難しいですが、ロボットを作成する上で割と簡単なもの、例えばデータをダウンロードする、メールを送るといったような作業を自動化することはそれほど難しくないはずです。

 そうしたちょっとした作業の自動化から始めて、少しずつレベルを上げていければと考えています。おそらく分からないことが多く出てくると思いますので、丁寧な保守サポートがいつでも受けられることは心強いですね。

デジタル化の範囲を広げる 可能な限り紙文書のデータをデジタル化し、自動化の範囲を広げる予定

――DX推進で悩んでいる企業の担当者に向けて、アドバイスをお願いします。

 DX推進の秘訣には2つあって、1つは「実績につながるものを作ってそれを見てもらう」ことです。こんなことができます、あんなことができますと言葉で言うだけではなく、「自動化できたら最高だなぁ!」と感じる業務をピックアップしてサンプルを作り、より具体的に説明して納得してもらえるような成果を出す必要があります。ですので、RPAツールのトライアル期間は長い方が良いのです。

 もう1つは「人間関係」です。丁寧なコミュニケーションで相手の意図やスキルを判断し、モチベーションをアップさせるように心がけています。こちらが一方的にやらせるのではなく、協力しながら一緒にやっていきましょうと働きかけることで、相手の反応は変わってきます。

 即効性はなく、地道な努力が必要にはなりますが、根気強く続けることで信頼を得ることができると考えています。自分の思いを適切な形で伝えながら、誠意を持って接することで、より良いDXに進化していけるのではないでしょうか。

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