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ここで差がつく業務自動化 RPA実態調査で分かった「生成AI」の効果業務自動化に関するアンケート調査 2024

業務自動化にはさまざまな効果がある。企業は何を求めて自動化ツールを導入し、実際にはどの程度の効果を感じているのか。読者調査を基に評価方法や成否を左右する要素を考える。

» 2024年09月24日 13時30分 公開
[谷井将人キーマンズネット]

 業務自動化には、時間削減はもちろんさまざまな効果がある。では、実際にはどの程度の回答者が成果を出せているのか。キーマンズネットが実施した調査「業務自動化に関するアンケート調査 2024」(期間:2024年8月6〜30日、有効回答数:359件)では約72.9%が目標以上の効果を得られたと答えた。

 では残りの「目標を下回った」人々は何が違ったのか。本記事では業務自動化ツールを導入した企業がどのような製品を採用し、いかに評価しているのかを見ることで、成否を分ける要素について考察していく。

6人に1人は導入効果を「評価していない」

 本調査における「業務自動化ツール」とは、作業を代替させるツールのことだ。代表的なものは定型作業を自動で実行するRPA(Robotic Process Automation)だが、OpenAIの「ChatGPT」登場以降は、生成AIを活用した非定型業務の自動化も注目されている。

 では、業務自動化ツールの導入率はどの程度か。以下で見ていく。

 既に導入している回答者は50.4%だった。導入を検討中の回答者は12.5%、取り組んでいないが「重要事項だと認識している」のが17.3%、「検討する予定もない」としたのが14.2%だった。検討や利用を中止した回答者も3.3%ほど存在する。「個人や部署単位で活用している」という個別回答もあった。

 導入済み回答者において「目標を大きく上回った」のが3.9%、「目標を上回った」のが13.3%、「目標通りだった」のが55.8%だった。ここまでが成功といえる。逆に「目標を下回った」のが18.8%、「目標を大きく下回った」のが1.7%となった。

 業務自動化ツールの評価方法については当然だが「削減できた時間」が最多で49.7%に上った。次が「人件費の増減」で11.0%となった。その次が「現場担当者の感覚値」(6.1%)で、「売上高の増減 利益率の増減」の5.5%をわずかに上回った。

photo 「お勤め先では、業務自動化ツールの導入による効果をどの軸で評価されていますか」

 逆に割合が低かったのは「経営層の感覚値」「経営陣による定性評価」の合計3.3%だ。定量評価である削減時間が評価軸としては大きいが、現場の業務効率を上げるツールであるためか、経営層と現場では現場の方が定性評価の参考量が大きいようだ。

 面白いのは「指標を設定しておらず、評価していない」回答者が16.6%あることだ。これはおよそ6人に1人の割合だ。回答数が少なくなってしまうがクロス集計してみると「評価していない」回答者(30人)の評価は、目標通り以上が53.3%ほどと評価軸のある回答者よりは低く、「その他」とした人の割合が大きかった。

使っているツールは?

 では、業務自動化にはどんなツールが使われているのか。最多だったのはRPAで、62.5%が採用していることが分かった。その次が「Microsoft Excel」をはじめとするスプレッドシートツールのマクロ機能で39.9%だった。

 RPAの中ではMicrosoftの「Power Automate Desktop」(24.1%)、NTTデータの「WinActor」が19.0%、UiPath社の「UiPath」(13.2%)などが人気だ。

 RPAという言葉は数年前に比べてあまり聞かなくなったが、これは技術が下火になったのではなく、2010年代後半の急激な導入期を過ぎて4〜5割の回答者が導入しているという状況が安定的に続いているようだ。

 その他、大きな勢力として生成AIがある。「生成AI(チャットbot以外)」は27.4%、「生成AIを利用したチャットbot」が19.8%、「生成AI以外のAI/機械学習」が14.6%だった。

 これに含まれるAIツールというのはChatGPT(58.8%)や「Microsoft Copilot」(35.1%)、「Office 365」に付属する「Copilot for Microsoft」などだ。Googleの「Gemini」利用者も11.5%存在している。目標以上の成果を出したケースと下回ったケースで比較しても、前者の方がAIツールの導入率は高い傾向にあった。

 AIツールを巡っては導入検討中、もしくは利用中が58.5%と過半数になり、満足度も52.0%となっている。一方、ここでも「何となく導入したので、期待値が定まっておらず評価できない」とする回答が21.4%存在する。

自動化の効果を左右するのは何か

 「自動化ツール利用に当たって、その効果を左右する要因は何だと思われますか」という質問に対し、最も関与度が高いものとして挙げられたのが「対象業務選定の的確さ」(25.4%)だ。どの業務を自動化するべきかを適切に選定できるかどうかを重視している人が比較的多い傾向にあった。これを実施するには、いわゆる「業務の棚卸し」が必要になる。

photo 「お勤め先での自動化ツール利用に当たって、その効果を左右する要因は何だと思われますか」

 次に多かったのが「ツールを使いこなすスキルを持った人材」で18.2%だ。人材確保については、既にスキルを持った人材を募集する方法と、既存の人材にスキルを身に付けさせる方法が存在する。業務自動化ツールに限らず、ベンダー側も導入時の講習会実施やユーザーサポートを強みとして押し出している場合もある。

 その次が「ツールの使い勝手」(14.9%)や「ツール選定の的確さ」(12.7%)などツールそのものに関することだった。

 これは裏返せば現状の課題ともとれる。「業務自動化の効果をさらに高めるために必要な施策は何だと思われますか」という質問においても「自動化すべき業務の見直し」が最多の54.1%で、「部署横断、全社単位での取り組みに拡大する」(35.4%)、「業務自動化プロジェクトを推進する人材育成、人材の獲得」(32.6%)などが続いた。

photo 業務自動化の効果をさらに高めるために必要な施策は何だと思われますか(複数回答可)

 「客観的なデータに基づいた自動化対象の選定」も22.1%存在する。これを実施するには適切な効果測定が必要になる。冒頭で見た通り、現状で評価軸として使われている定量的な数値としては「削減できた時間」が多数派で、他に売上高や利益率、人件費などを見ている企業もあるようだ。

 一方でRPAをはじめとする業務自動化ツールの効果としては他にも、コア業務に集中できることや残業が減ることなどによる従業員の満足度向上のような定性評価で測れるものもある。経営層やツール選定に関わる人々は、そういった従業員の主観的な声も、集計することで客観的なデータとして活用することで、働き方改革に繋げられるかもしれない。

 現状では約6分の1がそもそも評価をしていないという状況だが、ツールは導入して終わりではないことを意識して、効果測定と改善策の実施を続けてほしい。

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