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5G時代の先を開拓する無線技術「OAM-MIMO多重伝送」って何?(5/5 ページ)

既に5Gの5倍、LTEやWi-Fiの約100倍にあたる100Gbpsの無線伝送に成功した「OAM−MIMO多重伝送」技術。一体どんなものなのか?

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「OAM−MIMO多重伝送」技術の応用と今後

 では、この高速な無線通信技術はどのように応用できるのだろうか。有力なのはスモールセル運用での基地局と、マクロセル基地局との間の通信だろうと想像できる。端末と基地局間通信トラフィックが増加すると、基地局間ネットワークの負荷は当然高まる。ARやVR、高精細映像の伝送などの大容量データはさらに負荷増大を招くだろう。

 IoT機器の広範な広がりや、コネクテッドカーの普及など、今後予想される通信環境変化には高速、大容量のネットワークが必要なのは明らかだ。光ファイバーが敷設できる場合はよいが、地域や用途によっては無線でなければならないケースもあると予想される。またコンサートやイベント会場からの高精細映像伝送などの通信環境確保には、臨時の通信環境としても高速、大容量の無線ネットワークは好適だ。いずれは従来の数倍から、やがて百倍以上の無線通信の速度向上が求められるだろう。

 NTTでは、「OAM−MIMO多重伝送」技術を5Gの次世代を実現するものと考えており、今後は同技術を実験室内ではなくフィールド環境で、さらに実用的な距離まで伝送距離を延ばすことに挑戦していくという。

 将来的には、無線でのテラビット級通信が目標とされている。「今後はさらに高い周波数帯への挑戦も行い、テラビット級無線通信時代を開けていきたい」と李氏は言う。準ミリ波以上の高周波数帯の活用技術は今後もさまざまなものが登場するだろう。今回の実験成果が、無線を活用した新サービス開発につながることを期待したい。

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MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)技術

 複数のアンテナを利用して伝送速度を向上させる技術。5G仕様の特長の1つであるMassive MIMOでは、数十から数百のアンテナ利用が考えられている。ビームフォーミング技術を組み合わせると特定の方向への電波強度を強めることができるため、基地局間通信にも有効とされている。

「OAM−MIMO多重伝送」との関連は?

 一般的にMIMO技術は反射によるマルチパスなどの伝搬経路の違いを利用した空間多重技術であり、空間的な電波の位相回転を利用した空間多重技術であるOAM多重とは独立に利用できる。つまりMIMO技術とOAM多重技術を組み合わせることで、高周波数帯でのさらなる高速化が実現できる可能性がある。

QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直角位相振幅変調)

 LTEでも使われている多値化技術で、1つの送信情報単位(シンボル)に複数の情報(ビット)を載せる手法のこと。どれだけのビットを載せられるかで16QAM(LTEで採用、一度に4ビットを送受信)、64QAM(今回の実験で採用、一度に6ビットを送受信)のように、数字で多重化の度合いが表される。ゆくゆくは1024QAM(一度に10ビットを送受信)までの拡大が見込まれている。

「OAM−MIMO多重伝送」との関連は?

 OAM−MIMO多重伝送技術を利用して、多値化された情報を多重化して送受信することができる。多重化数と多値化のかけ算で伝送速度が上がることになる。

円形アレイアンテナ

 1つのモジュールに複数のアンテナ素子を円形に配置したもの。それぞれのアンテナ素子を適切に制御することで電波ビームの指向性の最適化などのような伝搬特性の調整を行うことができる。

「OAM−MIMO多重伝送」との関連は?

 今回の実験では送受信装置に1つの中心のアンテナと、その周りを同心円上に囲む4重の円形アレーアンテナが使われた。それぞれの円形アレーアンテナは5モードのOAM波を生成または受信するために使われている。

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